プロフィール

米国の名牝といえばゼニヤッタ、レイチェルアレクサンドラが代表的だが、このソングバードも負けず劣らない。何と言っても15戦13勝・2着2回という成績の上、8勝が5馬身以上の着差だったのだから凄すぎる。その圧倒的な強さにアメリカの競馬ファンのみならず、世界の競馬ファンが魅了されたものだった。

2歳の夏にデルマー競馬場でデビュー。デビュー戦の未勝利戦を6馬身半差で快勝すると、2戦目のデルマーデビュタントSも5馬身1/4差で圧勝。3戦目のシャンデリアSも4馬身半差で勝利。4戦目となった2歳馬の大一番BCジュベナイルフィリーズをも5馬身3/4で快勝すると当然のように最優秀2歳牝馬の座に就いた。それも全てのレースが好スタートからの逃げ切りで、2番手以下には影さえ踏ませない一方的な競馬に多くのファンが度肝を抜かれたものだった。

ソングバードの強さは3歳になっても止まるところを知らず、3歳の緒戦を5馬身以上の逃げ切りで圧勝。前半戦の目標だったケンタッキーオークスこそ熱発で回避するが、9月のコティリオンSを5馬身3/4差で快勝するまで11戦全勝。2着に付けた着馬身の合計が60馬身以上というのだから、他の馬は完全なお手上げ状態。ソングバードの進撃を止めるどころか、もう誰も影さえ踏めないだろうと言われ始めた。

しかし、競馬とは走ってみないと分からないもの。圧倒的な強さを誇る彼女に、遂に土が付く日が訪れてしまう。12戦目となったBCディスタフだ。この日もロケットスタートからスピードに乗って軽快に先頭を走るソングバード。向こう正面でもいつも通りのレース運びで、この日も圧勝ムードが漂っていた。しかし、道中3番手で虎視眈々とソングバードをマークしていたビホルダーが、彼女のスパートに合わせるように自身も加速。最後の直線では通常ならば早めに後続を引き離しているはずのソングバードに馬体を併せていき、ゴール前はまさに頭の上げ下げで雌雄を決する大接戦へと縺れ込んだ。結果はビホルダーがハナ差ほど出たところでゴール。ソングバードの初の敗北にサンタアニタパーク競馬場は大きな溜息に包まれた。

連勝こそ止まったものの、4歳夏に復帰するとそこから2連勝。しかし復帰3戦目となるパーソナルエンスンSではゴール前でフォーエバーアンブライドルにクビ差ほど交わされて2度目の敗戦。このレース後に脚部不安が発生して引退することになったが、彼女が見せた数々の圧倒的な逃走劇は実に爽快で、間違いなく米国競馬の一時代を築いた名牝だったと言える。