ブリーダーズカップマイル
2021/11/7(日) 07:27発走 デルマー競馬場
SSの血を引く4頭が頂点狙う、立ち回りに活路求めたいヴァンドギャルド
日本から史上最多となる一挙7頭が参戦表明した今年のブリーダーズカップ(BC)。いずれの馬が勝っても初制覇の偉業となるが、ドバイや香港、あるいは凱旋門賞のように、日本調教馬の継続的な参戦につながっていくかは、結果もさることながら勝ち負けに通じる内容を残せるかにかかっている。このBCマイルに挑むヴァンドギャルドにも爪痕を残してもらいたい。
ヴァンドギャルドは3月のドバイターフで2着に善戦し、すでに海外遠征に実績を残している。勝ち馬のロードノースには脱帽の内容だったが、それを経て2度目の遠征なら上積みも見込めるだろう。また、今回はアメリカ特有の小回りコースを味方につけられる可能性がある。トラックを1周するレースは2歳時のホープフルSしか経験がないが、当時は直線で騎手が立ち上がるほどの不利を受けながら小差の6着と対応力を見せた。ドバイでの結果の通り、海外の一流を相手に広々としたコースでの真っ向勝負は分が悪い。枠順確定後の前売りでは最低人気だが、SS系ならではの器用さと瞬発力を生かし、実績馬たちにひと泡吹かせてほしい。
気になる相手関係だが、まずは過去10年で7勝を挙げている地元のアメリカ勢に敬意を払うべきか。前回のデルマー開催(2017年)でもアメリカのワールドアプルーヴァルが優勝している。同馬のM.キャシー調教師は2015年のテピンも含めBCマイルで2勝。今年のガットストーミーは一昨年の2着馬と実績も十分で、6歳牝馬ながら前々走にG1勝ちと健在をアピールしている。
また、アメリカの芝戦で第一人者のC.ブラウン調教師はブロウアウトとレイジングブルの2頭出し。前者はディープインパクト産駒の仏1000ギニー馬ビューティーパーラーを母に持つ5歳牝馬。前々走はガットストーミーに敗れたが、前走は逃げ切りでG1初制覇を飾った。今年は間隔を空けながら3戦と使い込まれていないうえ、全14戦で連逸は2戦しかなく、その2戦も3着と4着の堅実派。5月のマイルG2で大逃げを決めたスピードは脅威だ。一方のレイジングブルはG1レースを3勝。昨年のBCマイルでは後方のまま10着に終わっており、展開に左右される面がある。
他にも昨年のBCマイル組はアイヴァーやカサクリードが再び参戦するが、アメリカ勢で最先着していたのがアイヴァー。同じ調教師、オーナーのインラブともども日本で活躍したアグネスゴールド産駒だ。両雄は前走のG1キーンランドターフマイルで同走し、インラブが中団から鮮やかに差し切り勝ち。7月から3連勝でG1初制覇と今が旬の勢いを見せている。一方、アイヴァーは4着に敗れたものの当時は5か月ぶりの今年2戦目。すでにG1勝ちの実績もあり、大舞台に向けて変わり身は必至だろう。
広大なアメリカにあって地の利を得るならモーフォーザとなろう。2019年9月以降は9戦8勝、崩れたのはペガサスWCターフしかなく、それもほぼ2年前の話だ。この間、デルマー競馬場ではG1ハリウッドダービーをはじめ重賞3勝。4走前のデルマーマイルHはトップハンデで4馬身余りの圧勝、前々走のG2デルマーマイルSでは今回も対戦するスムーズライクストレイトやヒットザロードを肩越しの見せムチひとつで下している。前売り2番人気と現地の期待も高い。
4頭参戦する欧州勢は甲乙つけ難い。G1レース2勝のスペースブルースが前売り1番人気に推されているが、同馬は2019年5月以降に1400m以下しか走っておらず、今回は距離が課題となる。一方、同じゴドルフィン所有の3歳馬マスターオブザシーズはG1勝ちの実績こそないものの、英2000ギニーでは世代最強マイラーのポエティックフレアと短アタマ差の接戦を演じた。稍重の前走はマザーアースに後れを取ったが、2000ギニーの走破タイムは翌日に行われたマザーアースの英1000ギニー(ともに良馬場)より速い。デルマーの堅い馬場なら逆転の余地もあるか。
そのマザーアースは英1000ギニーとロートシルト賞でG1レース2勝、昨年はBC遠征も経験している。ただし、今回は5月の1000ギニーから数えて9戦目。前走は決して悪くない内容だったものの、今年初めて3着圏内に入れなかった。また、同じ3歳牝馬のパールズガロアーはメイトロンSでマザーアースに先着したが、当時のマザーアースは直線で満足に追えていない。前走のフォレ賞もスペースブルースに2馬身差の完敗だった。
(渡部浩明)