ブリーダーズカップターフ

2021/11/7(日) 08:43発走 デルマー競馬場

見どころPREVIEW

BCターフ連覇を狙うタルナワ。(Photo by Press Association)

アメリカ勢をしのぐ欧州勢の質、タルナワの連覇を阻止するなら3歳馬?

ラヴズオンリーユーがフィリー&メアターフを選択したことにより、ブリーダーズカップターフは日本調教馬が不在となったが、連覇を狙うタルナワを筆頭にメンバーは充実。ここからジャパンとブルームのようにジャパンカップへの参戦や暮れの香港ヴァーズへ向かう馬がいる可能性もあり、必見の一戦であることに変わりはない。

枠順抽選後に発表された前売り人気ではタルナワが2.8倍の1番人気。地元のドメスティックスペンディングが5倍で2番人気、以下はティオーナの7倍、さらにグーフォとウォルトンストリートが各9倍で続き、5頭が10倍以下に収まっている。この中では、やはりタルナワの実績、実力がともに抜きん出ている印象だ。

タルナワは昨年のBCターフで中団の後ろから大きく外を回って1馬身突き抜ける完勝劇。欧州でG1レース7勝のマジカル(2着)を問題にしない勝ちっぷりだった。今年はG1勝ちこそないものの、アイリッシュチャンピオンSと凱旋門賞の2着で健在をアピール。夏から始動して4戦目の臨戦は昨年と同様で疲労などの心配もほぼなく、上位争いは間違いないところだろう。ただ、D.ウェルド調教師が堅くなりそうなデルマー競馬場の馬場状態を気にしているうえ、大外に近い13番枠も歓迎とは言えない。キーンランド競馬場で開催された昨年は良馬場発表だったが、前日の稍重から回復したもので、ほとんど雨を期待できない今年と状況が異なることは確かだ。

ヴェルメイユ賞でディープインパクト産駒スノーフォールを破ったティオーナ。(Photo by Scoopdyga)

そこにつけ込む先鋒がドメスティックスペンディングだったが現地4日に出走取消。3番人気のティオーナはヴェルメイユ賞でディープインパクト産駒のスノーフォールを破り、その名を日本にもとどろかせた。凱旋門賞は道悪を嫌って回避したが、今回は待望の良馬場で戦える公算が高い。折り合いが難しいタイプで外枠は課題も、ヴェルメイユ賞で見せた瞬発力は脅威。上手く流れに乗れれば再びの大物食いも。

グーフォとウォルトンストリートが4番人気を分け合っているが、どちらも実力以上に評価されている印象。グーフォは今回も対戦するジャパンをソードダンサーSで下したが、当時は直線半ばまで進路がなかったジャパンに巻き返されてクビ差の辛勝。そのジャパンは前売り21倍でしかなく、グーフォの9倍と乖離している。また、ウォルトンストリートは前走でカナディアンインターナショナルSを勝ったものの、G1と呼ぶには淋しい相手関係。ドバイシーマクラシックではクロノジェネシスやラヴズオンリーユーに離されており、世界の一線級と互角に戦うためには当時の差を埋めるだけの成長が必要だ。

ユビアーはウォルトンストリートと同じゴドルフィン所有でC.アップルビー調教師の管理馬。こちらの方が前売り人気は低いが、エースライダーのW.ビュイック騎手が選んでいる点は見逃せない。ここまでG1勝ちはないものの、前走はニューヨーク競馬協会が設けた芝三冠の最終戦で、G1並みの賞金を誇るジョッキークラブダービーに完勝している。二冠目のサラトガダービーを制したステートオブレストは次戦でコックスプレートを制しており、とりわけ今年はハイレベルな欧州の3歳勢には要注意。独ダービー馬シスファハンも後の凱旋門賞馬と接戦の戦歴があり、タルナワにとってうるさい存在になるのではないか。

アメリカ勢は、それぞれに対戦しながら勝ち負けを繰り返しているような関係で、現地の評価も軒並み控え目。7月に2200mのユナイテッドネーションズSを鮮やかに逃げ切ったトリブヴァンの先行力は魅力だが、欧州のブルームも左回りのサンクルー大賞を逃げ切った。その鞍上にはL.デットーリ騎手を配しており、易々と行かせてもらえるか──。

(渡部浩明)