話題の中心はシティオブトロイも、先行激化なら日本の3頭に勝機到来
開催地のアメリカが中心なのはもちろん、それに対抗する勢力も長らくヨーロッパ勢のみだったブリーダーズカップに、今年は日本から19頭もの出走希望馬が遠征。しかも、メインレースのクラシックに挑む3頭は勝利も望める実績馬ばかりで、本丸を落とせばBC開催における第三極として存在感は確かなものになる。絶好の機会を生かし、是非とも日本馬の存在価値を示してほしい。
今年のBCクラシックは英芝戦線の王道をまい進してきたシティオブトロイが初のダート挑戦を克服し、A.オブライエン調教師に待望のタイトルをもたらすかが最大の呼び物となっている。父は米三冠馬のジャスティファイで、スピードの持続力を持ち味とするスタイルはダートに合いそうなうえ、歴代最多の英ダービー10勝を誇るオブライエン師をして最高傑作と認めるほどの能力の持ち主。結果はさておき、どのようなレースを披露してくれるのか注目を集めるのは当然だろう。
これを迎え撃つアメリカの大将格はフィアースネス。昨年はBCジュベナイルを制した2歳王者で、それを含むG1レース3勝と3歳世代をリードする存在といえる。ただ、軽快な先行力を武器とする一方、1番人気に推されたケンタッキーダービーで15着に大敗したように、早めに競られるなど他馬のプレッシャーに対して脆い面がある。一方でシティオブトロイは初ダートに向け英国のオールウェザーコースで僚馬たちと予行演習を行ってきたが、本場の砂つぶてを浴びて耐えられる保証もない。オブライエン師も先行策を明言しており、両雄が前々で運べば厳しい流れになることは必至だ。
両雄の共倒れもあり得る状況だけに、日本の3頭にも少なからずチャンスはあるはず。デルマソトガケは昨年のBCクラシックで2着(1馬身差)、フォーエバーヤングはケンタッキーダービーで3着ながら勝ち馬との着差(ハナ+ハナ)がさらに小さく、それぞれに米ダート競馬の最高峰で勝利に肉薄した実績がある。また、ウシュバテソーロは昨年のドバイWCで実際に世界を制し、昨年のBCクラシックもデルマソトガケに2馬身少々の5着。その後の3戦は全て先着と互角以上に戦っている。3頭とも2強との比較では注文がつかないタイプだけに、流れに乗れさえすれば上位争いを期待できるだろう。ただし、矢作芳人調教師が「最悪」と認めるように、最内枠のフォーエバーヤングは課題の残るゲートに失敗すると、次々と前に入られて苦しい位置に追いやられるリスクが生じた。
フィアースネス以外のアメリカ勢ももちろん強力で、日本勢との比較ではKYダービーでフォーエバーヤングと叩き合ったシエラレオーネ、サウジCとドバイWCでウシュバテソーロと互角のセニョールバスカドールが気になるところ。両馬とも春以降に勝てていないものの、追い込み脚質で展開に左右される影響が大きく酌量の余地はある。それでも、シエラレオーネはKYダービー以降の3戦とも3着以内を確保し、セニョールバスカドールもドバイからの帰国初戦(1400m)を含めデルマー競馬場でのレース経験が豊富。最強の相手関係で流れが厳しくなる今回は勝ち負けに絡んでも不思議はない。
枠順抽選後に主催者が発表した想定オッズではネクストの評価が高めだが、ダートのステイヤーというアメリカでは異色の存在。直近7連勝で2着につけた着差は合計91馬身以上とワンサイドではあるものの、相手関係が大幅に強化してペースも上がる今回は試金石だろう。
ハイランドフォールズとアーサーズライド、タピットトライス、ピレニーズは9月のジョッキークラブGCで直接対決し、2番手追走のハイランドフォールズが並ぶように先行したアーサーズライド、3番手のタピットトライスを蹴散らして4馬身差の完勝。2着のピレニーズはさらに後ろからで展開の利があった。3月のサンタアニタHではニューゲートに敗れたが、当時のハイランドフォールズは二の足がつかず最後方からのレース。これらの馬たちは7番人気以下の評価だが、ハイランドフォールズはジョッキークラブGCのように先行し、フィアースネスにプレッシャーをかけられるようなら勝機がめぐってくることも。
(渡部浩明)