支配的傾向の欧州勢に傑出馬が不在、今年は北米勢にもチャンスあり
BCフィリー&メアターフは出走希望のアリスヴェリテがプレエントリーの段階で補欠待機となり、BCディスタフに回ったため日本調教馬が不在となってしまった。近年は欧州からの遠征馬や移籍馬が支配的なレースだが、今年は小粒な印象で北米勢にも勝機がありそうな情勢だ。
主導権をにぎるのは2走前のG2カナディアンS、前走のG1E.P.テイラーSを逃げ切りで連勝し、2番枠を引いたフルカウントフェリシアとなるだろう。2走前は引きつけて終盤ペースアップのオーソドックスな内容だったが、前走は大逃げで今回も対戦するモイラらを寄せつけなかった。ただ、1200mを1分11秒81というラップで通過しながら19馬身差の大逃げになったのは、後続が消極的すぎた影響も少なからずあったはず。I.オルティスJr.騎手とのコンビでは昨年暮れの重賞初制覇時に差し切りを決めており、今回は折り合い優先で行くかもしれない。
逃げ切りを許したモイラはライバルのフェヴローバーをマークしているうちに離されてしまった格好だが、そのライバルは捕らえて2着を確保している。昨年のBCフィリー&メアターフで3着、2022年にはカナダの年度代表馬にも選ばれた格上の存在で、フルカウントフェリシアに再び楽をさせることはないだろう。
枠順抽選後に主催者が発表した想定オッズで、モイラより評価が高いのは3頭。1番人気のウォーライクゴッデスは北米芝路線で牡馬にも引けを取らない実力があり、2年前のBCターフではレベルスロマンスの3着に善戦している。この馬に2000mはやや短いため、ここ2年は2400mのターフで牡馬と戦ってきたが、今年はデルマー競馬場でラヴズオンリーユーの3着に敗れた2021年のフィリー&メアターフより相手関係も軽そう。これで引退となる可能性も報道されており、ラストチャンスをものにしたいところだ。
2番人気はゴドルフィンが所有する英国調教馬のシンデレラズドリームで、7歳のウォーライクゴッデスとは対照的な3歳の有望株。夏場にアメリカ遠征も経験済みで、G1ベルモントオークス、G3サラトガオークスを着差以上の内容で完勝と、古馬との初対戦も難なく克服しそうな魅力がある。また、同じC.アップルビー厩舎の3歳馬ビューティフルラブも侮れない。重賞勝ちは2走前のG3ジョッキークラブオークスのみだが、距離は今回と同じ2200m。大逃げを追い掛ける集団の後方から長く脚を使って突き抜けた。
A.オブライエン厩舎も2頭出しの予定だったが、イランイランが枠順抽選後に取り消してコンテントのみとなった。近年は凱旋門賞とも関連が深いヨークシャーオークス勝ちの実績に加え、現在は米西海岸を拠点とするL.デットーリ騎手を起用とあれば、シンデレラズドリームに続く3番人気も納得。ただ、10月6日のオペラ賞から中1週続きで3戦目という強行軍は気になる。大きな着順で連敗したのは道悪の影響で、良馬場を期待できる今回は変わり身の余地があるものの、主戦のR.ムーア騎手はオペラ賞ともどもイランイランを選択していた。
ディディアは昨年10着からの雪辱を期す。当時は9番枠で後方に置かれ、最終コーナーから大外を回るロスが大きかったが、最後まで伸びて5着とは2馬身もなくゴールしている。G1ホースとなって迎える今年は枠順も6番に改善し、勝ち負けに絡む可能性もあるだろう。
アニセットは英国デビューで昨年からアメリカ西海岸に移籍。2戦目から前走まで重賞を8連戦し、デルマーオークスとアメリカンオークス、ゲイムリーSでG1レース3勝、デルマー競馬場でも4戦3勝など、全て3着以内と抜群の安定感を誇る。前走のジョンCメイビーSは伸び切れずに移籍後初の連逸を喫したが、それでもディディアには先着した。
外枠の3頭は南アフリカから移籍のビーチボムにアメリカでの実績が不足しており、サンセットグローリーは明らかに格下。ソプラノは愛G1メイトロンSの3着に光るものがあるが、前走のクイーンエリザベス2世チャレンジCは2着ながら6馬身差の完敗だったうえ、当時の1800mがキャリア最長距離だった。
(渡部浩明)