ブリーダーズカップマイル 2024/11/3(日) 08:45発走 デルマー競馬場

見どころPREVIEW

ヴィクトリアマイルでG1初制覇を飾ったテンハッピーローズ。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

ゴドルフィンの4連覇なるか、日本の2頭を含めライバルは多士済々

地元のアメリカ勢が牙城を築くダート戦、欧州勢が強い芝の中距離や2歳戦と明確な傾向があるブリーダーズカップ開催において、芝のマイルには地域や性別、年齢に目立った偏りが見られない。今年もいずれ劣らぬ実力馬が顔をそろえ、どの馬にもチャンスがありそうな難解な組み合わせとなった。

デルマー競馬場の芝コースは最終コーナーからゴールまで約250mしかなく、2ターンのコース1周で争われるため外枠ほど不利になる。また、スピード優先で距離適性が短めな馬でもこなせてしまう。近年のBC開催地は似たような感じだが、こうした難しい舞台で3連覇中なのがゴドルフィン。C.アップルビー調教師とW.ビュイック騎手を擁すチームは、夏場も積極的に馬を送り込むなど、米国の芝で勝つ術を心得ている。

今年のノータブルスピーチは1月のデビューから7戦ともマイル戦で、良馬場の英2000ギニーとサセックスSを強烈な瞬発力で制している。2つの黒星には発馬直後の不利で折り合いを欠いたセントジェームズパレスS、道悪のムーランドロンシャン賞と明確な敗因があり、馬群から一瞬にして抜け出す末脚の回転力からも、実力発揮は高速馬場でこそと思わせる。

強敵となりそうなのが牝馬のポータフォーチュナで、こちらは前走まで英愛の牝馬G1を3連勝中。いずれも先行策から満を持しての抜け出しと、牝馬のマイル路線では敵無しの感がある。2着に敗れた4戦前の英1000ギニーは仕掛けが早すぎた展開のアヤでしかなく、小回りコースの今回は前々で運べる脚質もアドバンテージになるだろう。

フランスのラマチュエルはポータフォーチュナに英1000ギニー(短アタマ差)、コロネーションS(2馬身1/2差)と連敗しているが、前走のフォレ賞では好位から3馬身突き抜ける圧勝でG1初制覇を飾った。通算9戦で全て3着以内の堅実性があるうえ、デルマー開催の2021年にBCマイルを勝ち、ゴドルフィン3連覇の口火を切ったスペースブルースも前走でフォレ賞勝ち。スピードを生かせる舞台で逆転しても不思議はない。
【ラマチュエルとディエゴヴェラスケスは 11月2日(土曜)出走取消】



英2000ギニーとサセックスSを制しているノータブルスピーチ。(Photo by Getty Images)

格下ながら距離短縮に活路を見出したA.オブライエン厩舎のディエゴヴェラスケスを加えた欧州勢が強力で、テンハッピーローズとジオグリフはあくまでチャレンジャー。テンハッピーローズは1400mで実績を積み重ね、ヴィクトリアマイルも人気薄での勝利だが、前出のスペースブルースはフォレ賞まで15戦連続で1400m以下に出走していた。適性自体に問題はなさそうな一方、外目の枠で乗り方が難しくなってしまっただけに、ヴィクトリアマイルのような末脚を引き出せるかがカギになる。
【ラマチュエルとディエゴヴェラスケスは 11月2日(土曜)出走取消】

また、ジオグリフは長らく白星から遠ざかっているが、今年は中山記念と札幌記念で入着。大阪杯でも2馬身圏内の5着と小回りコースで復活の兆しを見せている。直線の長い安田記念(6着)で先行策から粘ったようにマイルのスピードにも不安はなく、3番枠を利して上位争いに加わることも。ちなみに前回、2021年のデルマー開催では枠番3番までの馬が上位4頭に収まった。

地元のアメリカ勢も実力馬が顔をそろえたが、実績上位が欧州勢よりも軒並み外の枠になってしまった。最も期待できそうなのは9番枠のヨハネスで、今年は余力を感じさせる内容でG1を含む無傷の重賞4連勝と破竹の勢い。西海岸がベースで2走前にはデルマー競馬場でもG2勝ちと、地の利を含めて対抗可能な材料はある。

カールスパクラーも今季5戦4勝で重賞3連勝中と好調。BCマイルと好相性のフォースターデイヴハンデキャップ、クールモアターフマイルで直近2連勝と実績面では筆頭といえる。ただ、前走は逃げ切り、2走前も2番手からという先行脚質に大外枠は痛い。その2戦とも2着で連敗のモアザンルックスには、8番枠で逆転の目も出てきた。昨年のBCマイルでは12番枠から6着で、5着のソングライン(10番枠)とは3/4馬身差だった。

チリフラッグとカナダのウィンフォーザマネーにもG1勝ちがあるが、前者は牝馬限定戦、後者は8頭立ての6番人気と、G1未勝利のゴリアドを含めて北米勢では一枚落ちの感がある。2019年のユニはファーストレディSとBCマイルを連勝しており、同2着から臨むチリフラッグは、2番枠からの立ち回り次第でチャンスがあるかもしれない。

(渡部浩明)