コーフィールドカップ

Caulfield Cup

2018/10/20(土) 14:40発走 ※出走日時は日本時間

コーフィールド競馬場

  

【コーフィールドC】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!

2018年10月17日 14:00

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 過去10年間の連対馬20頭の血統を眺めると、父または母の父がダンジグ系であるものが8頭、サドラーズウェルズ系であるものが8頭と、勢力が拮抗している。ただ、前者の実績がここ数年に集中しているのに対し、後者のほとんどは5年以上前で、現在の旬がダンジグ系であることが分かる。

 オーストラリアは芝短距離王国で、この路線の競走馬や血統は世界的に評価が高い。過去10年間に出現した最も優れた豪州産サラブレッドであるブラックキャビア(25戦全勝)とウィンクス(現在28連勝中)も、スピードを武器とする競走馬で、前者は1000~1200m、後者は1600~2000mがベストだった。

 ダンジグの息子デインヒルは、シャトル種牡馬として渡ったオーストラリアで計9回リーディングサイアーとなり、同国の短距離路線を牛耳る存在となった。同馬が死んですでに15年。しかし、依然としてその影響力は凄まじく、2017-18年の豪サイアーランキングは、ベスト20のうち9頭をデインヒル系が占めている(ダンジグ系というくくりでは11頭)。日本におけるサンデーサイレンス系のような存在といえるだろう。当初は短距離中心だったが、次第に長めの距離でも活躍するようになり、いまやコーフィールドCのような2400mの大レースでもダンジグ-デインヒルのラインは必須となっている。

 過去5年間にイギリスからの遠征馬が3頭連対しているのが目を惹く。そのうちダンディーノ(13年2着)とトリップトゥパリス(15年2着)の父はシャンゼリゼ(Champs Elysees)とダンシリで、この2頭は全兄弟の関係にある。特長は「堅い芝を得意としている」こと。ヨーロッパの深い芝に比べるとオーストラリアの競馬場は芝丈が短く、日本ほどではないが速い時計が出やすい。日本に近年輸入されたヨーロッパ産の種牡馬のなかで、ダンシリの息子ハービンジャーが最も成功しているのはこうした適性に負うところが大きいと思われる。

 今年の出走馬のなかで、ザクリフズオブモハーは前走までヨーロッパで走り(馬名はクリフズオブモハー)、なおかつ母の父にダンシリを持つので条件的には最も近い。本邦輸入繁殖牝馬リッスンの全姉を3代母に持つ名門牝系で、父は9年連続10回目の英・愛リーディングサイアーを確定的にしているガリレオ。サドラーズウェルズ2×4という、凱旋門賞を連覇したエネイブルを彷彿させる配合構成となっている。全体的には重厚さは否めないが、馬主のクールモアグループはダンシリの適性に賭けて送り込んだのかもしれない。ヨーロッパではトップクラスに混じると分が悪く、G1では脇役の一頭という役どころだったが、スピードの出るオーストラリアで一変する可能性を秘めている。

 ヤングスターは「ハイシャパラル×デインヒル」という組み合わせ。父はサドラーズウェルズの息子で、2010年のこのレースの勝ち馬デスカラードを出している。2代母ユーザーフレンドリーは英・愛オークス、英セントレジャーなどビッグレースを勝ちまくって全欧年度代表馬に選ばれた名牝。母の父はこのレースと相性のいいデインヒルだ。前走のターンブルS(豪G1・芝2000m)は女傑ウィンクスから1馬身差の2着。6月のクイーンズランドダービー(豪G1・芝2200m)では牡馬相手に3着だったが、前走内容から成長ぶりがうかがえる。血統的に400mの距離延長は歓迎。ここでも十分やれるだろう。

 ハイシャパラルの父系に、母の父がデインヒル系、という出走馬はヤングスターを含めて3頭いる。ナイツウォッチは「レッドウッド×エクシードアンドエクセル」という組み合わせ。父の父はハイシャパラル、母の父の父はデインヒルで、「ハイシャパラル×デインヒル」という直接の組み合わせよりもスピード方向に傾いている。前々走、芝1600mの豪G2で3着のあと、前走は芝2000mの豪G3を勝った。400mの距離延長が功を奏したが、さらに400mの距離延長はどうか。血統的には2000mぐらいがベストに思える。

 エースハイは「ハイシャパラル×リダウツチョイス」という組み合わせ。母の父の父がデインヒル。2代母の父にサンデーサイレンスを持つという血統的特長があり、母カムサンデーはデインヒル≒レディーズディライト2×2というユニークな配合構成となっている。芝2500mのヴィクトリアダービー(豪G1)を勝ち、芝2400mのオーストラリアンダービー(豪G1)で2着という成績があるように、長めの距離に実績がある。前走のヒルS(豪G2・芝2000m)は好位から力強く抜け出して快勝した。上り調子なのはいい。

 ホームズマンは「ウォーフロント×レッドランサム」という組み合わせ。前々走、トーセンバジルを破ってアンダーウッドS(豪G1・芝1800m)を勝った。アイルランドで走っていたころ、芝10ハロンのG3を勝った実績がある。とはいえ、4分の3兄にジュライC(英G1・芝6ハロン)で2着となったユーエスレンジャーがいるように、さらなる距離延長は疑問。2400mでこのメンバー相手に勝ち負けするには展開に恵まれる必要がありそうだ。

 ベストソリューションは「コディアック×キングマンボ」という組み合わせ。父コディアックはスピード型の名種牡馬インヴィンシブルスピリットの半弟で、その父はデインヒル。現役時代は英G3で2着が最高だったが、産駒成績の優秀さからここにきてグングン評価を高めている。兄と同様、産駒はスプリンターやマイラーがほとんど。しかし本馬は、母アルアンダリヤがワークフォース(本邦輸入種牡馬で凱旋門賞、英ダービーの勝ち馬)とほぼ4分の3同血というスタミナタイプで、その特長を濃厚に受け継いだのか距離が伸びてから本領を発揮し、芝12ハロンのプリンセスオブウェールズS(英G2)、芝2400mのベルリン大賞(独G1)、芝2400mのバーデン大賞(独G1)と3連勝してここに臨む。父コディアックは堅い芝でも問題ないタイプなのでオーストラリアの馬場にも対応できるだろう。

 キングズウィルドリームは「カサメント×ロドリゴデトリアーノ」という組み合わせ。父系はシャマーダル、ジャイアンツコーズウェイを経てストームキャットにさかのぼる。4代母クリスエヴァートはニューヨーク牝馬三冠馬。重賞に挑戦しはじめてから4、3、2、3着と勝ち切れていないが、5走前の準重賞モーニントンC(芝2400m)を圧勝しており、前走から400mの距離延長となる今回は条件的に大きく好転する。その前走、芝2000mのターンブルS(豪G1)は女傑ウィンクスの3着。デインヒルは持たないがその父ダンジグは持っている。2000mで高い実力を示したので、距離延長で条件が好転するとなれば勝ち負け必至だろう。

 日本馬チェスナットコートは2014年のこのレースの覇者アドマイヤラクティと同じハーツクライ産駒。アドマイヤラクティはダイヤモンドS(G3)を勝った実績があり、G2でも2着が2回あった。それに比べると、日経賞(G2)2着、天皇賞・春(G1)5着という実績のこの馬は、やや見劣りは否めない。ただ、まだ伸びしろは大きく、産駒が当レースを勝った実績があるハーツクライを父に持つだけに、争覇圏内の1頭ではあるだろう。

 同じく日本から遠征するソールインパクトは「ディープインパクト×エクスチェンジレート」という組み合わせ。アルゼンチン共和国杯(G2)2着、ダイヤモンドS(G3)3着、七夕賞(G3)3着という成績がある。これもアドマイヤラクティに比べると一枚落ちる印象だが、差はわずか。ディープインパクト産駒はオーストラリアで過去G1を3勝しており頼りになる。

【栗山求の最終見解】

 日本から遠征する2頭はいずれもチャンスがある。しかし、狙ってみたい馬はベストソリューション。このレースと相性のいいデインヒルの直系で、父はスピードタイプだが母方の血でスタミナを補っている。オーストラリア競馬は初参戦で、目標は次走のメルボルンC(豪G1・芝3200m)だけにここは目一杯の仕上げではないかもしれないが、夏以降の上昇ぶりは目覚ましく、地元に絶対的な本命馬がいない混戦模様ならおもしろい。