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昨年の宝塚記念と有馬記念を制したクロノジェネシス。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

クロノジェネシス vs ミシュリフ、メンバー充実で注目度ナンバーワン

今年のドバイシーマクラシックはワールドカップデーのG1レース4鞍の中で最少の10頭立てで争われるが、集ったメンバーの充実度では一番と言えるだろう。芝・ダート二刀流のミシュリフと日本の女傑クロノジェネシスの激突は最大の見もの。復活なったラヴズオンリーユー、欧州の良血馬モーグルなど、まとめて負かせるだけの能力を秘めた実績馬も控え、約2分半の濃密なレースを堪能できそうだ。

英国のブックメーカー各社の前売りでは、クロノジェネシスとミシュリフが1番人気を争い、3番手にモーグルが続く構図になっている。ミシュリフは英国調教馬の上に、現時点のレーティングも現役馬で世界最高。地元なら1番人気を確保できるものだが、そうはさせていないところにクロノジェネシスの評価の高さが表れている。

宝塚記念で見せた圧巻のパフォーマンス、有馬記念の2500mも問題なくこなした距離の融通性など、メイダン競馬場の2410mを舞台とする戦いにおいては、クロノジェネシスの実績が上回っていることは間違いない。ミシュリフには2100mまでしか経験がなく、祖父は日本でダート短距離系の種牡馬として評価を高めているマクフィ。血統的に不安を抱えているのは確かで、そこはクロノジェネシスに一歩譲らざるを得ないだろう。

また、昨秋のミシュリフは凱旋門賞参戦を検討したものの、追加登録が必要なこともあって断念した経緯がある。仏ダービーを勝つほどの馬ながら、予備登録が締め切られる春の段階で、凱旋門賞出走を想定していなかったということだ。前走でサウジCを勝った一方、ドバイWCではなく賞金が半分以下のシーマクラシックを選択したのも意外。今秋の凱旋門賞に向け、腕試しの狙いがあるとすれば隙も生じよう。


昨年の仏ダービー馬で前走のサウジCを快勝したミシュリフ。(Photo by Press Association)

3番手評価のモーグルはパリ大賞と香港ヴァーズでG1レースを2勝。パリ大賞の2着インスウープと3着ゴールドトリップは次戦の凱旋門賞で上位争いしたほか、香港ヴァーズで3馬身差2着のエグザルタントも、前年にグローリーヴェイズから3馬身3/4差(3着)だった。この比較から相当な能力を秘めていることがうかがえる。ただし、全兄のジャパンともども叩き良化型の面があり、初戦からエンジン全開と行けるかが課題だ。

ラヴズオンリーユーは6番手あたりの評価に甘んじている。しばらく勝っていなかった事実があるだけに伏兵視もやむを得ないが、オークス制覇の際にはクロノジェネシスに約2馬身半差をつけた。前走で久々の勝利を飾りムードも良く、今回はオークスと近似の左回り2410mでの対戦。全兄リアルスティールがドバイターフを勝ったメイダン競馬場には血統面の裏づけもあり、同期のライバルを食って完全復活を遂げられるか。

チャンネルメイカーはこれまでG1レース4勝。日本や欧州より一枚落ちるアメリカでの実績だが、逃げ一手の同馬にとって絶好の2番枠を引いた。昨年のBCターフでは3着に逃げ粘り、5着のモーグルには約3馬身先着している。日本の2頭とミシュリフは外枠に固まっており、有力馬が後ろでけん制し合っている間に逃げ切ってしまうこともありえる。

開催4連覇を狙うゴドルフィン勢だが、今年はいささか苦しい。前哨戦のドバイシティオブゴールドで重賞初制覇のウォルトンストリートについては、鞍上のW.ビュイック騎手が力不足を認めている。僚友のスターサファリも前走のドバイミレニアムSが重賞初制覇だったが、こちらは5歳で通算7戦しかしていない。2走前に今回と同舞台の条件戦勝ちがあり、昨年2月にはメイダン競馬場で芝2000mのトラックレコードも記録。長めの距離に大駒が多いシーザスターズ産駒で、ウォルトンストリートに先着しても不思議はない。

(渡部浩明)