エクリプスステークス2020/7/5(日) 23:37発走 サンダウン競馬場
最強牝馬エネイブルに死角あり? 展開を味方につけたいディアドラ
頭数こそ例年並みに収まったエクリプスステークスだが、メンバー構成は稀に見る重量級となった。日本の競馬ファンにとっては、連覇を狙う最強牝馬エネイブルと英国滞在中のディアドラの初顔合わせが大きな楽しみの一つ。しかし、それを除いても見ごたえある一戦になることは間違いない。
今年のエクリプスSは、そのスポンサーであるブックメーカー『コーラル』の前売りで圧倒的な1番人気に推されているエネイブルと、2番人気ガイヤースの駆け引きが展開を左右することになりそうだ。
両者は昨年の凱旋門賞で対戦しているが、2着に終わって史上初の3連覇を逃したエネイブルにとって、結果的にガイヤースが大偉業への障害というべき存在となった。
当時のガイヤースはいわゆる裏街道から台頭した上がり馬。実力に一目置かれる一方で、未知の部分を残していた。重馬場で飛ばすガイヤースを気分良く逃がす訳にいかないエネイブルは、マークせざるを得ない立場だったが故にスタミナを削られ、ヴァルトガイストの強襲に屈する結果となった。
それでも、ガイヤースら先行勢が壊滅した中で小差の2着に粘ったエネイブルの底力は特筆すべきもの。その内容をもって勝負づけが済んだと考えることもできる。ただ、今回は距離が約400m短縮されることに加え、エネイブルは約9か月ぶりの実戦。今年で6歳と上がり目を望めない年齢など、他馬につけ入る隙が生じることも否定できない。
ガイヤースは今年で5歳を迎えたが、本格化したのが4歳という晩成タイプ。今が旬か、あるいは、まだ上がり目を残している。加えて、約1か月前にG1コロネーションカップを圧勝と臨戦過程は申し分ない。さらに、圧勝した2月のG3ドバイミレニアムステークス(2000m)の走りから、持ち味のスピードを生かすには今回が適距離の印象もある。エネイブルを逆転しても不思議はない。
エネイブルにとってガイヤースを前門の虎とするなら、後門の狼は前売り3番人気のジャパンだ。6月17日のG1プリンスオブウェールズステークスは4着に敗れたが、当時のジャパンは休み明けで、その結果だけで評価を下げられない。凱旋門賞ではエネイブルに先着されたが、その差は2馬身1/4と大きく負けておらず、適距離の今回で巻き返す可能性も十分にある。
4番人気タイがマジックワンドとリーガルリアリティで、ディアドラはバンコクを従えて下から2番目の6番人気だが、それは過小評価というものだろう。昨年のアイリッシュチャンピオンステークスでマジックワンドに先着されたのは事実。ただ、当時はゴール前の脚勢に歴然とした差があり、ディアドラが脚を余した格好で勝負づけは済んでいない。また、リーガルリアリティには次戦の英チャンピオンステークスで7馬身余り先着している。少なくとも両馬には全く引けを取っておらず、飛ばすガイヤースをエネイブルが早めに捕まえにいく展開になりそうな今回、末脚勝負のディアドラにも上位に迫るチャンスはあるはずだ。
(渡部浩明)