チェアマンズスプリントプライズ

Chairman's Sprint Prize

2019/04/28(日) 16:20発走

シャティン競馬場

  

【チェアマンズSP】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!

2019年04月24日 16:00

  • 友だち追加数

 2016年に国際G1に昇格するとともに、それまで2月だった施行時期が移動した。昨年、日本馬として初めてファインニードルが挑戦し4着。人気(6番人気)よりも上の着順ではあったが、3着馬からは3馬身1/4離されており、香港勢の厚い壁を再認識させられる結果となった。

 G1昇格後、レースは3回行われたが、優勝馬の調教国はオーストラリア、香港、香港。連対馬延べ6頭はすべてオーストラリア産馬だった。香港の馬資源はオーストラリアに頼る部分が大きいので、調教国がオーストラリアであれ香港であれ、オーストラリア生まれのスプリンターの独壇場となっている。血統的には「デインヒルとミスタープロスペクター」が相性抜群。過去3年間に連対した馬は例外なくこの2つの血を併せ持っている。

 サンタアナレーンはオーストラリアからの遠征馬で、母国ではスプリントクラシック(豪G1・芝1200m)など5つのG1を勝ったスピード馬。血統中(5代以内)にミスタープロスペクターを3本抱え、母の父ファストネットロックはデインヒルの息子。レース好走馬のパターンに当てはまる。また、父のロペデヴェガ×デインヒルは相性がいい配合で、その点も評価できる。

 ロペデヴェガは現役時代にフランスで2冠を制し、種牡馬としてもさまざまな国で一流馬を送り出し成功を収めている。その父シャマーダルはエイブルフレンド(香港マイル、チャンピオンズマイル)、パキスタンスター(クイーンエリザベス2世カップ)、ダンエクセル(チャンピオンズマイル)などの父で、香港競馬でも優れた実績を残している。豪快に伸びる末脚はシャマーダル-ロペデヴェガの系統らしさが表れており、香港向きといえる。同じくオーストラリアから遠征した馬で、16年にこのレースを制したシャトークアは、出走前の時点で豪G1を4勝していた。本馬は5勝なのでG1実績では上回っている。


 ミスタースタニングはこのレースで17、18年と2年連続2着。暮れの香港スプリント(G1・芝1200m)では2年連続で優勝している。父エクシードアンドエクセルはオーストラリアでリーディングサイアーとなり、ヨーロッパやアメリカでも大レースの勝ち馬を出している。デインヒル系ながら母方がアメリカ血統なので堅い芝にも適応している。母の父デイジュールは1990年代のヨーロッパ最強スプリンター。ミスタースタニング自身はダンジグ3×3で、スピードに特化した配合だ。デインヒルとミスタープロスペクターを併せ持ち、2年連続2着という実績どおりこのレースへの適性は高い。3度目の正直といきたいところ。

 有力各馬のなかでデインヒルとミスタープロスペクターを併せ持つ馬は以上の2頭しかいない。1月のセンテナリースプリントカップ(香G1・芝1200m)、4月のスプリントカップ(香G2・芝1200m)と2戦連続でミスタースタニングに先着しているのがビートザクロック。斤量が軽かったわけではなく、両者同斤だったので価値がある。管理するJ.サイズ調教師は昨年の当レースで上位3頭を独占した実績があり、本馬は3着だった。父ヒンチンブルックは豪リーディングサイアーとなったスニッツェル(日本でも供用される)の4分の3弟。ファストネットロックを経ているので堅い芝への適性が感じられる。母の父ライオンハンターはデインヒルの息子で、自身はデインヒル3×3。ミスタープロスペクターを持っていないが、このクラスでも問題なく走っているので減点材料にはならない。

 前走のスプリントCでビートザクロック、ミスタースタニングに先着を果たして優勝したのがラタン。ただ、2.5キロ軽い斤量を活かして勝利をもぎ取ったという印象は否めない。ニュージーランド産馬で、父サヴァビールは同国で4年連続リーディングサイアーの座にある大種牡馬。2018-19年のシーズンも首位を独走しており、5年連続は確定的。母の父ラストタイクーンはキングカメハメハの母の父でもある。本馬はデインヒルもミスタープロスペクターも持っていない。好調さを武器にどこまで通用するかといったところ。

 昨年はシルクロードステークス(G3)と高松宮記念(G1)を連勝して臨んだファインニードルが4着。わが国の最強スプリンターがなすすべなく香港馬にひねられてしまった。3着馬から3馬身半差を付けられたのだから完敗というしかない。今年挑戦するナックビーナスは高松宮記念14着。常識的には苦しいだろう。

 今年のメンバーを見渡すと、オーストラリアからの遠征馬サンタアナレーンが実績と血統面の双方で頭ひとつ抜け出ている。遠征馬なので香港上陸後の調整がうまく行っているという前提だが、何の問題もなければ芝短距離王国オーストラリアでG1を5勝した実力がモノをいうだろう。環境に戸惑って力を発揮できない場合は香港馬同士の決着となる。ミスタースタニングとビートザクロックのラインは強力だ。