日本馬挑戦の歴史
日本調教馬は外国勢として最多の4勝、エイシンプレストンは唯一の連覇
クイーンエリザベス2世カップ(QE2C)に参戦した日本調教馬は、2018年までに延べ20頭を数える。そのうち3頭で計4勝を記録しており、地元の香港調教馬を除けば頭数、勝利数とも外国勢として最高の戦績となっている。
最初の勝利は2002年のエイシンプレストンによってもたらされた。この年はアグネスデジタルとともに参戦していたが、エイシンプレストンは4か月余り前の香港マイルを圧勝、アグネスデジタルもQE2Cと同舞台の香港カップを制しており、いわば香港の中距離路線を封じた状態での再遠征。レースでも両雄が大いに存在感を発揮した。
1番人気は前年に英インターナショナルステークスとエクリプスステークスで2着があるゴドルフィンの期待馬グランデラ。エイシンプレストンは2番人気、アグネスデジタルも3番人気に甘んじる格好になったが、グランデラを前に見ながら道中を運んだ両雄は、直線を迎えるとアグネスデジタルが内へ、エイシンプレストンは遅れて外から強襲し、奇しくも挟み撃ちの形になる。エイシンプレストンが競り合う2頭をまとめて差し切ると、アグネスデジタルもグランデラを抑えて半馬身差で続き、日本調教馬として史上初の海外G1ワンツーフィニッシュを決めたのだった。
この時にねじ伏せたグランデラは次戦からシンガポール航空国際カップ、プリンスオブウェールズステークスとG1を連勝。秋には愛チャンピオンステークスも制して世界的強豪へと飛躍する。これに対してエイシンプレストンは国内で勝ちあぐねたものの、暮れの香港Cでは5着ながら再びグランデラに先着し、2003年のQE2Cにも2年連続で参戦することになった。すると今度は1番人気に応え、ここまで唯一無二のQE2C連覇を達成。
エイシンプレストンの連覇で日本調教馬の参戦に弾みがつくと思われたが、次の挑戦者が現れるのに4年を要し、2007年のアドマイヤムーンは3着。さらに5年の月日が流れた2012年になってルーラーシップが日本調教馬として3勝目を手にする。日本ではG1での惜敗が続いていたルーラーシップだが、この一戦では好位3番手を絶好の手応えで進むと、直線入口でラチ沿いに開いたスペースから一気にスパート。直線半ばで勝利を確信させる独走劇で悲願のG1初制覇を果たした。
これを契機に日本調教馬のQE2C参戦は2018年まで連続。2017年にはネオリアリズムが暮れの香港マイル9着から距離を延ばして2度目の遠征を敢行する。レースでは超スローペースの後方で苦しい形に陥るかに思われた矢先、鞍上のJ.モレイラ騎手に解き放たれて一気に先頭へ。そのまま“マジックマン”の異名を取る名手に導かれて後続を振り切り、ルーラーシップに続いてG1初制覇を飾り、日本に4勝目をもたらした。
年 | 馬名 | 性齢 | 着順 | 騎手 | 調教師 |
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2018 | アルアイン | 牡4 | 5 | C.デムーロ | 池江泰寿 |
ダンビュライト | 牡4 | 7 | T.ベリー | 音無秀孝 | |
2017 | ネオリアリズム | 牡6 | 1 | J.モレイラ | 堀宣行 |
2016 | ラブリーデイ | 牡6 | 4 | J.モレイラ | 池江泰寿 |
ヌーヴォレコルト | 牝5 | 6 | 武豊 | 斎藤誠 | |
サトノクラウン | 牡4 | 12 | Z.パートン | 堀宣行 | |
2015 | ステファノス | 牡4 | 2 | 福永祐一 | 藤原英昭 |
2014 | エピファネイア | 牡4 | 4 | 福永祐一 | 角居勝彦 |
アンコイルド | 牡5 | 10 | K.ティータン | 矢作芳人 | |
2013 | エイシンフラッシュ | 牡6 | 3 | M.デムーロ | 藤原英昭 |
2012 | ルーラーシップ | 牡5 | 1 | U.リスポリ | 角居勝彦 |
2010 | ネヴァブション | 牡7 | 4 | 後藤浩輝 | 伊藤正徳 |
2008 | マツリダゴッホ | 牡5 | 6 | 蛯名正義 | 国枝栄 |
2007 | アドマイヤムーン | 牡4 | 3 | 武豊 | 松田博資 |
2003 | エイシンプレストン | 牡6 | 1 | 福永祐一 | 北橋修二 |
2002 | エイシンプレストン | 牡5 | 1 | 福永祐一 | 北橋修二 |
アグネスデジタル | 牡5 | 2 | 四位洋文 | 白井寿昭 | |
1997 | ダンスパートナー | 牝5 | 8 | 四位洋文 | 白井寿昭 |
マイネルブリッジ | 牡5 | 9 | 坂本勝美 | 伊藤正徳 | |
1995 | フジヤマケンザン | 牡7 | 10 | 蛯名正義 | 森秀行 |