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香港2大スプリントG1制覇を狙うダノンスマッシュ。(Photo by Getty Images)

ダノンスマッシュ、香港の2大スプリントG1制覇なるか

昨年暮れの香港スプリントで父ロードカナロアに続き日本調教馬として2頭目の勝利を手にしたダノンスマッシュが、偉大な父も果たしていない香港2大スプリントG1制覇を狙う。登録のある13頭のうち、自身を含む10頭は香港スプリントと同じ顔触れ。すでに負かした相手が大半なら、快挙への期待も大きくふくらむ。

香港スプリントのダノンスマッシュは、不利な大外14番枠から終始馬群の外を回らされた末、2着のジョリーバナーに1/2馬身差をつけての勝利。3着のラタン、4着のウィッシュフルシンカーまでひと桁馬番だっただけに、着差以上の内容だったと言えるだろう。今回は13頭立てで枠順悪化の心配がなく、当時は強敵と見られていたクラシックレジェンドやホットキングプローンも不在。戦況は有利と考えられる。

ただし、相手関係に大差はなくても、ダノンスマッシュが置かれた立場は大きく変わっている。レーティング順は香港スプリントでの5番手(タイ)から今回は堂々の首位。当時は香港発売のオッズで6番人気(22倍)だったが、今回は1番人気に推される可能性が高く、厳しいマークを受けることは間違いない。

さらに厄介なのが、香港勢に核となる実力馬が不在な点だ。香港スプリントでの日本発売分では、ラタンの単勝23.9倍を除けば、5着のファットタートル(324.0倍)まで上位は単勝万馬券の超人気薄ばかり。香港発売分でもジョリーバナー(84倍)、ラタン(23倍)、ウィッシュフルシンカー(42倍)、そしてファットタートル(144倍)と低評価に変わりはなかった。どの馬にもチャンスありとなれば紛れは必至。ダノンスマッシュが巻き込まれるリスクは少なからずある。


昨年暮れの香港スプリントで2着だったジョリーバナー。(Photo by Getty Images)

香港スプリント以降に行われた1200mの重賞結果は、1月のG1センテナリースプリントCは香港スプリントの上位と下位が逆転するような結果となり、4月のG2スプリントCもセンテナリースプリントCで最下位のアメージングスターが1着と目まぐるしく順位が入れ替わっている。展開から結果まで、ふたを開けるまで分からないのが香港短距離戦線の現状だ。

こうした状況にあって、スプリントCで1番人気に推されていたのが、香港スプリントに出走していなかったウェリントン。結果はアメージングスターから2馬身1/2差の5着も、その前にはシャティン競馬場のハンデ戦(クラス1)で、今回も対戦するコンピューターパッチやセンテナリースプリントC勝ちのホットキングプローンらを退けて快勝した。当時は113ポンド(約51.5kg)の軽ハンデながら、走破タイムの1分7秒80(1200m)は名スプリンターのセイクリッドキングダムが保持するクラス1レコードに並んでいる。

追い込み決着となったスプリントC組では、先行して3着に粘り込んだビューティーアプローズもダノンスマッシュと初対戦。同じく2着のストロンガーは補欠から繰り上がり出走の香港スプリントで10着だったが、その後はスプリントCを含め重賞での2着が2回と前進している。ウェリントンとストロンガーは4歳、ビューティーアプローズは5歳と香港競馬においてはこれからの年齢。来季を展望するためにも注目しておきたい。

(渡部浩明)