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1番人気が濃厚なデアリングタクト。(Photo by Shuhei Okada)

日本勢が質・量とも圧倒、目指すは上位独占

新型コロナウイルスの感染拡大により昨年は地元勢だけで争われたクイーンエリザベス2世Cだが、今年は日本から4頭が参戦する。しかも、地元の有力馬だったフローレが回避したことによってわずか7頭立てとなり、過半数を占める日本勢が極めて有利な情勢だ。

今年のクイーンエリザベス2世Cは日本と香港の双方でデアリングタクトの1番人気が濃厚となっている。デビューから3着以下はなく、ベストと思われる2000mで三冠牝馬が中心視されるのは半ば当然。今回は初の海外遠征であることに加え、前走の金鯱賞が伏兵に逃げ切りを許す案外な内容だった点は気掛かりだが、暖かい時期を好む体質で、ひと叩きの効果も手伝って状態は上がっているという。輸送のダメージさえなければ期待は大きい。

打倒デアリングタクトに名乗りを挙げるのも日本馬の残り3頭ということになるが、いずれも海外遠征という点で一日の長がある。グローリーヴェイズはジャパンC、金鯱賞と近2走ともデアリングタクトに敗れているものの、それぞれ着差は1馬身以内で展開ひとつの関係。シャティン競馬場では香港ヴァーズ勝ちの実績があるうえ、坂のある東京や中京から得意の平坦コースに条件が変われば逆転も可能だろう。

キセキもジャパンCと金鯱賞で前記2頭と対戦しているが、ジャパンCでは暴走気味の大逃げ、金鯱賞では抑えて最後方からと両極端な競馬で後塵を拝す結果に終わった。時に大きく出遅れることもあってつかみ所がないものの、金鯱賞ではグローリーヴェイズに半馬身しか後れていない。当時は転厩初戦でもあり、変わり身の余地を十分に残している。父ルーラーシップは2012年のクイーンエリザベス2世Cの覇者で、自身も2017年の香港ヴァーズでコースを経験済みなら巻き返しも。


前走ドバイシーマクラシックで3着だったラヴズオンリーユー。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

ラヴズオンリーユーは前走のドバイシーマクラシックで勝ちに等しい3着。それから香港へ直行して初のシャティン競馬場になるため、今回は海外での転戦が課題になるものの、ドバイのパフォーマンスで遠征そのものへの対応力は証明している。香港に到着後の調教映像を見る限りは馬体に張りがあり、一段と状態を上げている印象さえ受ける。クロノジェネシスと接戦を演じられるだけの力量は、ここに入っても優勝候補とするに十分な説得力があるだろう。

地元・香港の大将格であるエグザルタントはディフェンディングチャンピオンという立場だが、日本馬が4頭もいる今年の相手関係は厳しい。暮れの香港国際競走では2400mの香港ヴァーズを選択するのが恒例のように、2000mは本質的に距離も不足している。回避したフローレとは2000mで今季2戦し、いずれも先着を許した。そのフローレも日本調教馬とは過去に3戦し、延べ7頭に1度たりとも先着したことがない。持ち前の堅実性で上位争いは必至でも、勝ち切るにはプラスアルファが欲しい。

グロリアスドラゴンは3走前のセンテナリーヴァーズ(1800m)でエグザルタントを破り重賞初制覇。当時は20ポンド(約9kg)のハンデをもらっていたが、前々走の香港ゴールドC(2000m)は同斤で1馬身後れただけと力を見せた。しぶとい差し脚を持ち味としており、いつもの相手関係から強化する今回は展開が向く可能性も。タイムワープは2017年に香港Cを逃げ切った実績があるが、最近8戦で5着が最高。すでに8歳と衰えを隠せない。

(渡部浩明)