ゴールデンシックスティが4連覇へ、栄光のキャリアを偉業で締めくくれるか
約1か月後に安田記念が控えていることもあり、日本調教馬の参戦が少ない香港チャンピオンズマイルだが、今年は8年ぶり、それも一気に3頭の遠征で盛り上げにひと役買う。ただし、その前に立ちはだかるのは香港に君臨してきた史上最強のマイル王ゴールデンシックスティ。この一戦に4連覇の大偉業を懸け、引退レースとなることも既定路線となっており、勝利で花道を飾れるかが最大の焦点となる。
ゴールデンシックスティにとって気懸かりな材料があるとすれば、レース当日まで悪天候が予想される現地の空模様。通算30戦のキャリアのうち29戦は良馬場、残り1戦は稍重(Yielding)と道悪の経験がほとんどない。その稍重は2022年の香港ゴールドCで結果は勝ち馬に5馬身半差をつけられての3着というものだが、ベストより長い2000mで道中並走の勝ち馬よりロスの多い後半と敗因は明確。姿勢を崩すことなく長く脚を使えており、隙が生じるとすれば馬場状態というだけで、それも杞憂に終わらせる可能性が高いのではないか。
わずかな可能性に乗じたいのが日本の3頭。オオバンブルマイの前走は不良馬場で13着の大敗も、馬群に包まれてほとんど追えなかった面が大きい。道中の走りは至ってスムーズで、D.レーン騎手も馬場状態より進路を敗因に挙げており、19頭立てから11頭まで減る今回はリスクも軽減できる。あとは豪州からの転戦で体調を維持できているかだろう。
また、シャンパンカラーのNHKマイルCは稍重で、例年より1秒ないし2秒遅い走破タイムだった。田中剛調教師も渋った馬場向きの評価をしている。今年はダートや短距離に挑戦して大きな着順を続けているが、実績のある芝1マイルで天の恵みも受け、復活の狼煙を上げることも。一方、前走の中山記念で完敗のエルトンバローズは鞍上が稍重の馬場状態を敗因に挙げており、天気予報の通りだと苦しい戦いを免れそうにない。
打倒ゴールデンシックスティの筆頭格は香港マイルで2着に続いたヴォイッジバブル。当時はナミュール(3着)に先着しており、この馬を日本勢が負かすには、少なくともナミュールに匹敵する実力が必要ということになる。ただし、今回はドバイからの遠征帰り。調整時間が不足しているだけに、日本勢に少なからずチャンスもあるはずだ。
ビューティージョイは昨年の香港チャンピオンズマイルでゴールデンシックスティから1馬身半差の2着、同じ馬主のビューティーエターナルは1月の香港スチュワーズCでヴォイッジバブルから1馬身1/4差の2着。両馬は調教師こそ異なるものの同じレースに出走する機会が多く、着順も前後に並ぶことが多い。これらとともにオオバンブルマイはレーティング116で3位タイの評価を受けている。
香港ダービー2着から挑むギャラクシーパッチは、前々走のクイーンズシルバージュビリーCでカリフォルニアスパングルから1馬身差の2着と、古馬のG1級に目途を立てている。当時はレッドライオン(3着)、ビューティーエターナル(4着)とタイム差なし、レッドライオンは前走のチェアマンズトロフィーでビューティージョイ、ビューティーエターナルに続く3着。それぞれの関係にほとんど差はなく、1年前のハンデ戦ではレッドライオンが14ポンド(約6.35kg)をもらい、ビューティーエターナルを1馬身3/4差の2着に下した。当時の馬場状態は稍重(Yielding)で、この2頭は道悪の適性も証明済みだ。
英国のブレーヴエンペラーは今回がG1初挑戦だが、直近3走はドイツ、イタリア、そして前走のカタールで重賞3連勝中。相手関係は微妙だが、遠征経験が豊富で結果も出している点は評価に値する。イタリアとフランスでは重馬場で重賞勝ちと道悪も問題にしない。香港や日本の馬たちに道悪経験が少ないだけに、台風の目となりそうな不気味さを漂わせている。
(渡部浩明)