英インターナショナルステークス 2025/8/20(水) 23:35発走 ヨーク競馬場

見どころPREVIEW

ドバイシーマクラシックの覇者ダノンデサイル。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

構図はダノンデサイルらの3強対決、勝者が今年の世界王者となる可能性も

3歳馬シティオブトロイが制した昨年の英インターナショナルSはIFHA(国際競馬統括機関連盟)の「世界のトップ100G1レース」で首位に輝く超ハイレベルレースとなった。最新の世界ランクで芝の現役首位タイのオンブズマン、これを前走のエクリプスSで破ったドラクロワ(4位タイ)、そして日本からダノンデサイル(7位タイ)が参戦する今年のメンバー構成は、戦前の段階で前年以上の重量級。世界一の座を懸けた戦いになる可能性が十分にある。

先週の段階では9頭が登録し、ドラクロワとオンブズマンが1番人気を争っていたが、18日の出馬登録で6頭立てに決定。英国の前売りではブックメーカーにより前後する部分こそあるものの、オンブズマン、ドラクロワ、ダノンデサイルによる3強対決の構図となっている。現地の天候も良好なようで、良馬場での真っ向勝負を期待できそうだ。

先週初めの段階では展開を読みにくい相手関係で、前売り1番人気にはドラクロワが推されていたが、オンブズマンを擁すゴドルフィン陣営が1600万円余りの追加登録料を投じてペースメーカー(バーキャッスル)を用意。戦況に変化が生じた。オンブズマンは前走のエクリプスSで勝利へあと少しという所をドラクロワに急襲されており、フランスからわざわざ先導役を呼び寄せる戦略は雪辱へ並々ならぬ意欲の表れ。当時の内容からもドラクロワの瞬発力封じが目的だろう。

一方、エクリプスSのドラクロワは直線半ばまで包まれる不利を強烈な末脚で挽回したが、レース後のR.ムーア騎手の談話では先行策がプランA。マイルでも通用するほどのスピードを感じているとのことで、鮮やかな差し切りはゲートや流れがかみ合わずに次々とプラン変更を余儀なくされた結果に過ぎない。あるいは、ドラクロワとしてもスピード勝負は歓迎かもしれず、両雄の駆け引きは見もの。あとは当時の4.5kgから3.5kg差に詰まる斤量が如何に影響するか。

前々走のプリンスオブウェールズSを圧勝したオンブズマン。(Photo by Getty Images)

ペースメーカー投入はダノンデサイルにとっても追い風となりそう。2400m級のG1勝ちはドラクロワとオンブズマンにない実績で、2000m級なら瞬発力よりも持久力勝負が得策。前走のドバイシーマクラシックでは昨年の英インターナショナルSで2着のカランダガンを完封したように、ここで勝ち負け可能な実力も証明している。ドバイから4か月半ぶりの実戦はカギだが、昨年もダービーから菊花賞への直行を選択したように、陣営は当時からレース間隔が開くことを問題にしていなかった。

ダリズとシーザファイアにはG1勝ちの実績がなく3強に劣る面は否めない。ダリズは近親に複数のG1ホースがいる良血にして無敗と底を見せていない魅力があるが、G1初挑戦で陣営もチャレンジャーの立場を強調しているように試金石。ニエル賞との二者択一から出走に踏み切っており、10月には凱旋門賞で再び日本馬と相まみえる可能性もある。

シーザファイアもダリズと同様にG1未勝利だが、2歳時を含めて2着1回、3着4回と入着歴はある。父シーザスターズ、母アラビアンクイーンとも英インターナショナルS勝ちという申し子のような血筋で、自身も5月に同舞台のG2ミドルトンフィリーズSを12馬身差で圧勝するなどコース適性は折り紙つき。ただ、前々走のプリンスオブウェールズSではオンブズマンに4馬身半差をつけられて完敗しており、コース適性を味方にどれだけ巻き返せるか。

(渡部浩明)