ジャックルマロワ賞

2022/8/14(日) 22:55発走 ドーヴィル競馬場

見どころPREVIEW

日本調教馬として2頭目の優勝に期待が集まるバスラットレオン。(Photo by Getty Images)

ジャックルマロワ賞に挑むバスラットレオン、相手関係は強力も欧州2戦目で前進に期待

欧州マイル路線を牛耳ってきた現役最強馬バーイードが中距離への路線転換を打ち出し、新たな王者決定への起点となるジャックルマロワ賞。前走のサセックスSではバーイードにこそ完敗だったものの、その他のG1ホースたちとは互角に戦ったバスラットレオンにもチャンスはあるはずで、1998年のタイキシャトル以来、日本調教馬として2頭目の優勝に期待が集まる。

サセックスSのバスラットレオンは4番手でのゴールだったものの、3着のアルコールフリーとはわずかに短アタマ差しかなかった。同馬は前年の優勝馬であるうえ、直前のジュライCも制すなどG1レース4勝のトップホース。さらに1馬身3/4差の2着も仏2000ギニー馬モダンゲームズだった。これらに対して当時のバスラットレオンはゴドルフィンマイルから4か月ぶりの実戦、日本ではまず経験することのない61.5kgもの斤量を背負い、不慣れな地で差のない勝負を演じたのだから上々だろう。

このジャックルマロワ賞でも59.5kgと決して軽くはない斤量を背負うが、それでも前走より2kg減は悪かろうはずがない。起伏のあるグッドウッド競馬場からほぼ平坦のドーヴィル競馬場への舞台替わり、そして矢作芳人調教師も感じているように叩き2戦目の上積みと、前走以上を期待できる材料がそろっている。あとは初の直線1マイルコースを乗りこなせるかだ。

今回はバーイードが不在だが、現地10日の1次登録を経て、現地11日にマルジュームとネイティヴトレイルが出走取消で残った9頭のうち5頭にG1勝ちがあるメンバーが揃った。

そうした中で英国ブックメーカーの見立ては、英2000ギニーとセントジェームズパレスSを制して3歳マイル王の座に就いたコロエバス、コロネーションSを圧勝した牝馬のインスパイラルという、ロイヤルアスコット開催の活躍馬が人気を集めている。

3番人気は古馬のステートオブレスト、4番人気に前走のファルマスSでインスパイラルを破ったプロスパラスヴォイッジとG1ホースたちが続く。


英2000ギニーとセントジェームズパレスSを制して3歳マイル王の座に就いたコロエバス。(Photo by Press Association)

1番人気のコロエバスは左トモの化膿でサセックスSを回避と一頓挫あったうえ、激しい気性に課題を抱える身。前走のセントジェームズパレスS(アスコット競馬場)で調教場と競馬場があるニューマーケットから初めて出たほどで、ドーバー海峡を渡る輸送が影響する可能性もある。英2000ギニーでは僚馬ネイティヴトレイルと3/4馬身差、セントジェームズパレスSは5着まで1馬身差もない大接戦と、二冠を制しているとはいえ抜けた存在ではない。

コロエバスと初対戦になるインスパイラルはコロネーションSで披露した瞬発力が強烈で、ドーヴィルの直線コースで切れ味が増す可能性も十分にある。ファルマスSではプロスパラスヴォイッジに敗れたが、J.ゴスデン調教師の見解ではいわゆる二走ボケ。歴史的に牝馬の活躍も目立っているレースだけに、次世代マイル王の座を懸けた3歳馬同士の力くらべは大きな見どころの一つだ。

ただし、いわゆる世代レベルの比較において、欧州の現3歳世代は古馬に対して今ひとつ成績が上がっていない。7月以降、3歳馬と古馬が対戦した英・愛・仏のG1(牝馬限定戦を除く)はエクリプスS、ジュライC、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、サセックスS、そしてモーリスドゲスト賞の5レースあるが、3歳馬が勝ったのはエクリプスSのヴァデニのみ。それも、仕掛け遅れの2着ミシュリフにクビ差まで迫られる辛勝だった。残りのジュライCとモーリスドゲスト賞は7着が最高、キングジョージでは2頭の3歳馬が最下位争いに沈んでいる。昨年の3歳馬(現4歳世代)は5レースのうち3勝し、ジュライCでも2着と、この時期に古馬を凌駕する勢いがあった。

こうした事実関係からも4歳のステートオブレストが侮れない。フランスを含む4か国でのG1勝ち実績は他と一線を画す。それら全てが2000m前後のレースでマイルG1の実績はないが、父スタースパングルドバナーはスプリントG1の勝ち馬という血筋。前走のプリンスオブウェールズSで日本から遠征したシャフリヤールを寄せつけずに鮮やかな逃げ切りを決めた一方、トリッキーな豪州のコックスプレートでは差し切りと自在性も機動力もあり、1マイルに対応可能な能力はありそうだ。

また、バスラットレオンがサセックスSで封じたオーダーオブオーストラリアは昨年のジャックルマロワ賞で3着。もともとつかみどころのないタイプで、実績のある舞台で変わり身があっても不思議はない。

(渡部浩明)