ケンタッキーダービー 2023/5/7(日) 07:57発走 チャーチルダウンズ競馬場

見どころPREVIEW

昨年の米2歳王者フォルテ。(Photo by Getty Images)

2歳王者フォルテが実績でリード、日本の2頭にはデータを打ち破る激走に期待

これまで日本調教馬が単騎参戦だったケンタッキーダービーに、今年はデルマソトガケとマンダリンヒーローの2頭が参戦。史上初制覇への期待も例年以上に高まる。昨年は補欠枠から前日に繰り上がり出走の幸運を得たリッチストライクが、単勝81.8倍の最低人気(現地発売)を覆して波乱を呼んだが、日本の2頭にも全米を揺るがす激走で続いてほしい。

KYダービーはフロリダダービーとアーカンソーダービー、サンタアニタダービー、ブルーグラスSのG1、ルイジアナダービーとウッドメモリアルSのG2が主要前哨戦であり、その上位馬が中心の戦いとなる。昨年のリッチストライクこそ直前のG3ジェフルビーSで重賞に初挑戦し、その結果も3着という例外的な存在だったが、2着のエピセンターはルイジアナダービー(1着)、3着のゼンダンもブルーグラスS(1着)から駒を進めていた。

2歳王者のフォルテは前走でフロリダダービーを完勝。デビュー2戦目に1200mのG3サンフォードSで敗れた以外、G1レース4勝を含む重賞5勝と頭ひとつ抜けた実績を築いている。フロリダダービーは前々走のファウンテンオブユースSで一蹴した相手との再戦のような組み合わせで、結果にはさしたる価値を感じないものの、勝負所で先を越されても慌てることなく、ひと呼吸置いての仕掛けでねじ伏せた内容は多頭数のKYダービーにつながるもの。本番は外目の15番枠に決まったが、その勝率9.8%は20枠中の4位と高い。枠順確定後に発表された前売り1番人気の評価通り最右翼だろう。

前売り2番人気はフォルテと同じT.プレッチャー厩舎のタピットトライス。こちらはブルーグラスSを勝ってきた。さすがに実績では僚馬に劣るが、ブルーグラスSは昨年にG2からG1に返り咲くなど再び重要性を増しているうえ、前々走のタンパベイダービーを含む4連勝中の勢いは引けを取らない。勝率10.8%の5番枠に恵まれ、フォルテとワンツーを決める可能性も十分にありそうだ。

アーカンソーダービーを中団から豪快に制したエンジェルオブエンパイアが3番人気の支持を集めている。枠順がフォルテの隣(14番)で脚質も似ており、マークしながらレースを組み立てられそうな点は有利。ただ、前々走のリズンスターSで勝利に導いたL.サエス騎手はタピットトライスでKYダービーに臨む。サエス騎手は2019年のKYダービーで1位入線のマキシマムセキュリティ(17着へ降着)、2021年も3着のエッセンシャルクオリティを選択している。



UAEダービーを制してKYダービーに臨むデルマソトガケ。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

これに続く4番人気がサンタアニタダービーの覇者プラクティカルムーブ、そしてUAEダービーを制して挑むデルマソトガケの2頭。サンタアニタダービーは2020年に2着だったオーセンティックがKYダービーを制しているが、当時はコロナ禍の変則開催だった。それを除くと2018年のジャスティファイ(無敗の三冠馬)まで3着以内もなく、近年はやや存在感が薄れてきている。ただし、10番枠の勝率10.5%はタピットトライスの5番枠に次ぐ。

プラクティカルムーブとの比較では、サンタアニタダービーでハナ差の2着に迫った大井競馬所属のマンダリンヒーローは補欠から繰り上がってKYダービーの出走が叶い、上位人気クラスの評価も必要ということになる。

一方、すでに話題を呼んでいるように、デルマソトガケは今年で149回目を迎えるKYダービーにあって、いまだ勝ち馬を輩出していないばかりか、5着以内も2005年が最後という魔の17番枠に決まってしまった。UAEダービー経由の馬も振るっておらず、データ上は極めて不利と考えざるを得ない。とはいえ、そもそも日本調教馬がKYダービーで未勝利。初制覇のために遠征しているのだから、データに拘るのもナンセンスという話だろう。

近年、著しい活躍を見せているルイジアナダービーからはキングズバーンズ。この馬もプレッチャー師の管理馬で、無傷の3連勝と底を見せていない。ただ、不利とされる年明けデビューの経験不足が課題。6番人気タイと評価も伏兵の域を出ず、今回は試金石の側面がある。

残るウッドメモリアルS組は近年の退潮が著しく、2着のヒットショーは13番人気タイと評価が低い。枠順も1番と極端になった。

これらより前売り人気の高い馬の中では、スキナーがサンフェリペSとサンタアニタダービーでプラクティカルムーブに連敗の一方、距離延長とともに着差を詰めている。また、ヴェリファイングはブルーグラスSで2番手から粘り込み、タピットトライスとはわずかにクビ差。3着以下を5馬身余り離しており、ここで上位争いの力はある。トゥーフィルズは昨年のリッチストライクと同じジェフルビーSからの参戦だが、オールウェザーと不良馬場のダートで重賞勝ちがあり、ダート良馬場のルコントSとリズンスターSでも入着。その堅実さは混戦で強味となる。

※プラクティカルムーブは出走取消となりました。

(渡部浩明)