日本馬の歴史
皐月賞馬、道を拓くも手応えは……
2010年に日本調教馬として初めてニエル賞に参戦したのがヴィクトワールピサ。クラシックホースが斤量の有利な3歳時の凱旋門賞挑戦を見据えての出走とあり、大きな注目を集めることとなった。
ニエル賞のヴィクトワールピサは中間点を最後方で通過するも、直線を迎えると馬なりで先頭争いに加わり、あとは抜け出すばかりという形勢に持ち込む。しかし、手応えほどの反応を見せられずに突き放される一方となり、先頭から8馬身余り後れてレースを終えた。優勝したベーカバドはパリ大賞の1着馬で、アタマ差で惜敗したプラントゥールもパリ大賞と仏ダービーで2着という地元のトップホース。ヴィクトワールピサは次走の凱旋門賞で7着に終わり、再び両馬の後塵を拝す結果となった(プラントゥールは7位入線も失格。繰り上がりのヴィクトワールピサとは着順に影響を及ぼす事象なし)。
跳ね返された無欲の挑戦
翌年のナカヤマナイトは遠征前の重賞勝ち鞍がG3共同通信杯のみ。皐月賞5着、ダービー4着と世代上位クラスの能力こそ見せていたが、ヴィクトワールピサとの比較で実績不足は否めない。フランスには前年の凱旋門賞で2着に奮闘した僚馬ナカヤマフェスタの帯同馬として渡航し、凱旋門賞挑戦を目標としたものでもなかった。
この年のニエル賞は、6頭立てながら仏ダービー馬リライアブルマン、パリ大賞を制したミアンドルの両雄が顔をそろえて一騎打ちの様相。結果もリライアブルマンがミアンドルを2馬身差退けて決着した。ナカヤマナイトは道中最後方のまま見せ場を作れず、10馬身余り後れて最下位に大敗。その後は凱旋門賞ではなく前日のG2ドラール賞に回り、ここでも10着(11頭立て)と力負けの結果に終わった。
キズナが解いた方程式
2013年にはついにダービー馬のキズナがニエル賞から凱旋門賞への覇道に脚を踏み入れ、日本競馬界が勝負札を切る形になった。ニエル賞の出走10頭中には、英ダービー馬ルーラーオブザワールド、パリ大賞優勝馬フリントシャー、同3着オコヴァンゴなど、日本馬が挑んだ過去2回に優るとも劣らぬ強豪が集結。キズナは陣営曰く85%という仕上がりでゲートを出た。
後方2番手でフォルスストレートを迎えたキズナは大外から進出し、直線に入ると前方のフリントシャーに襲い掛かる。直線半ばで2番手に上がると、内から先に抜け出したオコヴァンゴをゴール前で捕らえ、ルーラーオブザワールドの猛追も短頭差抑えて1着。堂々の戦いぶりで凱旋門賞馬となる「資格」を手にした。迎えた本番では大いに見せ場を作りながら、直線半ばで力尽き4着に敗れたが、日本での実績に前哨戦での結果も伴えば、3歳馬が凱旋門賞で十分に通用することを証明した。