見どころ
マカヒキは勝利前提、凱旋門賞へ内容も問われる一戦
エルコンドルパサーの善戦(1999年)を契機として活発化した日本調教馬の凱旋門賞挑戦だが、行く手に立ちはだかったのはいつも3歳馬。とりわけ強烈だったのが、エルコンドルパサーの眼前から初制覇の夢を強奪したモンジュー、そして、日本の至宝ディープインパクトが差し切られるという、まさかの光景を演出したレイルリンク(2006年)ではないか。モンジューは仏ダービー、レイルリンクはパリ大賞を制した地元を代表する3歳馬で、ともにニエル賞を勝って凱旋門賞に駒を進めていた。
そのニエル賞に、今年はダービー馬マカヒキが臨む。前記の両雄や2013年のキズナがそうであったように、いかに前哨戦といえども、それ相当の結果を求められるのがニエル賞というレース。今世紀の記録だけでも、ニエル賞2着ないし3着から凱旋門賞でも入着を果たしたのは2例しかなく、相手を問わず、1着を獲らないことには本番への目途も立たない。しかも今年の場合、8日に出馬登録したのは、マカヒキをはじめミッドターム、ダラバッド、ドーハドリーム、カーゾフ、セダーブルーのわずか6頭。このうちカーゾフとセダーブルーは未勝利戦にしか勝ち鞍がなく、唯一のGIホースでもあるマカヒキにとって負けられない相手関係となった。
マカヒキの相手として注目すべきはミッドタームとなろう。最強馬フランケルを輩出したジャドモントファームの所有馬で、同じくガリレオ産駒。母ミッデイもヴェルメイユ賞などGI6勝という極めつけの良血だ。2歳秋のデビュー勝ち後、6か月の休養を挟んで4月のGIIIクラシックトライアルも快勝。素質の高さをアピールすると、英ダービー前哨戦のGIIダンテSでは1番人気の支持を集めた。レース中の負傷で5着に終わり、大舞台への道を断たれてしまったものの、デビューから連勝で一度はダービーを視界に入れたように、その血筋からも能力の高さに疑いの余地はない。陣営によると凱旋門賞を見据えたものではなく、今後の進路を探る狙いがあるようだが、マカヒキとの力関係を別にしても注目しておきたい存在だ。
残るダラバッドとドーハドリームは、ともに前走で準重賞を勝っている。ダラバッドの母親は日本のジャガーメイルらを下し、デビュー5連勝で2009年の香港ヴァーズを制したダリヤカーナ。半兄には今年のガネー賞を勝ったダリヤンがいる。母子ともアガ・カーン殿下の自家生産馬で、ミッドターム同様のスケール感こそあるが、堅実な一方で未勝利戦も勝ち上がれず、前走が6戦目にして初の勝ち鞍だった。ドーハドリームは前走までの連勝を含め、準重賞で3戦連続の連対中。この連勝では3馬身半以上の着差をつけて完勝しており、目下の勢いは侮れない。