ユニコーンライオンに試練の大外枠、レーン騎手のマジック炸裂に期待
ユニコーンライオンが日本調教馬として史上5頭目の参戦を果たすクイーンエリザベスS。前回の2020年はダノンプレミアムが3着、その前年にはクルーガーが女傑ウィンクスの2着に善戦するなど日本勢の近況は決して悪くない。ユニコーンライオンの宝塚記念2着と重賞2勝の実績は、遠征前の比較で両馬に引けを取っておらず上位争いの期待もできる。
近年のクイーンエリザベスSは道悪での開催になることが多く、どうやら今年も良馬場を望めそうにない。ランドウィック競馬場があるシドニー地区の天気は週末こそ晴れだが、週中は雨混じりの予報が続いている。4月1日のランドウィック開催は10段階評価の2番目に悪い「Heavy9」で最終レースを終了。出馬投票が行われた4日も「Heavy9」で変わっていない。予報通りなら、レース当日に良馬場まで回復するのは難しそうだ。
ユニコーンライオンは重より悪化した芝を未経験だが、血統的には高い適性を秘めている可能性がある。ノーネイネヴァー産駒は欧州でブレークしており、ユニコーンライオンも日本の軽い芝よりむしろタフな芝に合いそう。母の父ハイシャパラルも欧州からオセアニアにシャトル派遣され、名馬ソーユーシンクを輩出するなど大成功した。
気になるのは馬場状態より大外の13番枠の方か。ランドウィック競馬場の2000mは第1コーナーの途中に発走地点があり、向正面まで遠回りさせられる。重賞連対時は全て逃げているユニコーンライオンには負担が大きい。過去10年で大外枠からの1着は2回あるが、どちらも女傑ウィンクスによるもの。それでも枠順は9番と10番だった。昨年の晩秋にセリフォス(マイルCS)とウインマリリン(香港ヴァーズ)から新味を引き出したD.レーン騎手が、ユニコーンライオンを如何に操るかは興味深いところだ。
ただ、不利な枠順を受けてもユニコーンライオンは現地の馬券販売公社『TAB』の前売りで3番人気(単勝11倍)。同2.50倍で1番人気を分けうアナモーとドバイオナーには離されたが、2強を脅かす筆頭の存在と評価されている。枠順はアナモーが8番、ドバイオナーも9番。両雄は差しを型にしているうえ、ユニコーンライオンから枠順も遠く離れていない点を考え合わせると、序盤の入り方次第でチャンスが巡ってくるかもしれない。
地元の期待を背負うアナモーは今回が豪州でのラストラン。今季はコックスプレートを含むG1レース6勝で年度代表馬の最右翼と充実一途だが、昨年のクイーンエリザベスSは「Heavy10」の馬場状態で最下位の9着に大敗した。道悪を苦にしないタイプではあるが、当時のジョッキーは残り600mから荒れた馬場に脚を取られて戦意喪失した旨のコメントを残している。この先に見据える英ロイヤルアスコット遠征はマイルのクイーンアンSを最優先としていることから、2000mのG1実績があっても本質的に長い印象。コックスプレートとクイーンエリザベスSの同一シーズン制覇は過去にタロック(1961年)とウィンクス(2017~2019年)の2頭(計4回)しか達成していない例からも死角はありそうだ。
英国からはるばる遠征のドバイオナーは前哨戦のランヴェットSでひと叩き。2着に4.44馬身差の圧勝でG1初制覇と万全の態勢を整えてきた。タフな馬場の欧州でも道悪巧者の部類だが、前走は「Good4」の馬場状態で今回も対戦するモンテフィリアとモウンガを一蹴しており、より馬場が悪化しそうな今回でさらなる上積みを見込める。管理するW.ハガス師はタイプの似たアデイブを送り込んで2020年と2021年のクイーンエリザベスSを連覇し、2020年はランヴェットSも制したように戦い方を熟知している。
また、モウンガと同じ26倍のアレンカーは英国からの移籍馬で、昨年のドバイシーマクラシックではドバイオナーに先着している。愛G1タタソールズゴールドCと英G3ウィンターダービーを制した際にロードノース(ドバイターフ3連覇)を下しており、欧州での実績は間違いなく格上。前走のオールスターマイルは最下位に大敗したが、当時は5か月半ぶりのレースで豪州初戦、距離不足の上にトラックレコードに迫る高速決着と不利な状況が重なった。ひと叩きしてベストの距離、得意の道悪と条件が一気に好転する今回、実力発揮なら勝ち切っても不思議はない。
(渡部浩明)