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【凱旋門賞】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!

2017年09月28日 11:40

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 過去10年間の連対馬の血統を眺めると、サドラーズウェルズ、ダンジグというヨーロッパにおける二大父系が、その勢力のままに圧倒的な勢力を占めていることが分かる。日本馬オルフェーヴル(12、13年2着)とナカヤマフェスタ(10年2着)、そして無敗の女傑ザルカヴァ(08年1着)を除くすべての馬が、二大系統のどちらかを「父」または「母の父」に持っている。

 今年、1番人気が予想されるエネイブルは、父も、母の父もサドラーズウェルズの系統。同馬の3×2という強度のインブリードを持っている。父ナサニエルはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12ハロン)などを制した重厚なスタミナタイプ。母コンセントリックは「サドラーズウェルズ×シャーリーハイツ」で、インザウィングス(BCターフ)やアレクサンドローヴァ(英・愛オークス)と同じ組み合わせのスタミナタイプ。父母双方ともスピード的な要素は乏しい。あまり速い時計になるとどうかという懸念がある。ただ、その一方で前に行ける脚質は好ましく、昨年と同じく前が止まらない馬場コンディションになったとき、位置が取れるアドバンテージは大きい。

 気になるのは、イギリスまたはアイルランドから遠征した1番人気の3歳牝馬が一度も勝ったことがないこと。過去30年間では、90年のサルサビルが10着、92年のユーザーフレンドリーが2着、14年のタグルーダが3着。楽勝ムードとは裏腹に、案外ハードルは高いという事実を指摘しておきたい。

 ユリシーズは「ガリレオ×キングマンボ」という組み合わせ。ガリレオ産駒の配合パターンのなかでは、「母の父キングマンボ」はアベレージ的にあまり成功しているとはいえない。過去の活躍馬のなかでは英ダービー馬ルーラーオブザワールドがこの組み合わせだが、同馬は凱旋門賞に二度挑戦し、7着、9着という成績だった。ユリシーズはルーラーオブザワールドに比べると2400m向きの重厚さが感じられる配合構成なので悪くない。2走前のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSではエネイブルに完敗したものの、3走前のエクリプスS(英G1・芝9ハロン209ヤード)に比べて前走の英インターナショナルS(英G1・芝10ハロン56ヤード)はパフォーマンスを上げてきている。上り調子で臨めるのは強調材料。

 昨年の2、3着馬ハイランドリールオーダーオブセントジョージは、前出のとおりいずれもガリレオ産駒。コース適性は申し分ない。前者は「ガリレオ×デインヒル」なので、過去10年間の凱旋門賞で9頭の連対馬を出しているサドラーズウェルズ系とダンジグ系の組み合わせから成る。昨年は1か月に1走のペースで本番に臨んできたが、今年は7月のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSで4着に敗れて以来のぶっつけとなる。一方、後者は、愛セントレジャー(愛G1・芝14ハロン)を9馬身差で圧勝して絶好調。昨年よりもパワーアップしている。昨年は外枠から強引に先行してそのまま残るという強い競馬だった。内枠を引けばおもしろい。

 今年の英・愛1000ギニー(G1・芝8f)を連勝するなどG1を4勝しているウィンターもガリレオ産駒。ただ、母が「ショワジール×フェイヴァリットトリック」というスピード配合なので2400mへの距離延長には疑問がある。

 前哨戦のフォワ賞(仏G2・芝2400m)を含めて重賞3連勝中のチンギスシークレットは、ドイツ馬らしい晩成型の成長曲線を描いて一線級に浮上してきた。すでに本国ではG1を勝って古馬最強と評価されており、サトノダイヤモンドを破った前走は素晴らしいパフォーマンスだった。父ソルジャーホロウはサドラーズウェルズ系の独リーディングサイアーで、ジャパンCに出走経験(6着)があるアイヴァンホウなど主に2000m以上の距離で多くの重賞勝ち馬を出している。母の父プラティニはエイシンフラッシュ(日本ダービー、天皇賞・秋)の母の父。2400m向きの重厚な配合構成で晴雨兼用の強みがある。ここにきての上昇度は侮れない。

 現地2戦目となるサトノダイヤモンドは、緒戦のフォワ賞よりもコンディションを上げてくるだろう。久々を叩いて良くなるタイプで、本番を見据えた作りだった前走4着は、1、2着馬が前走G1勝ち、3着馬がG2勝ちと、決して弱敵相手だったわけではない。フランスにおけるディープインパクト産駒は、エイシンヒカリがイスパーン賞(G1・芝1800m)を10馬身差で圧勝したほか、キズナとマカヒキがニエル賞(G2・芝2400m)を勝っている。また、現地デビューした馬から仏1000ギニー(G1・芝1600m)優勝馬ビューティーパーラーなど3頭の重賞勝ち馬が誕生している。体調が問題なければ勝ち負けに持ち込む可能性は大いにある。

【栗山求の最終見解

 昨年はアイルランドの4歳牝馬ファウンドが2分23秒61という驚異の大レコードを樹立し、ガリレオ産駒が1~3着を占めた。レース当日、仮柵を外した馬場は極端な内伸びのコンディション。ラチ沿いから1、2頭分のごく狭いスペースを通った先行馬だけが勝ち負けに絡み、外を回した差し馬は全滅といった状況だった。

 例年の凱旋門賞は、フランス流のゆったりとしたペースで序盤が展開する。特殊な馬場状況となった昨年は、ゲートが開くと“グリーンベルト”を目指して各馬が殺到し、序盤からハイペースとなった。結果、スピードの持続力に関して他の追随を許さないガリレオ産駒が持ち味を発揮し、上位3頭を独占した。

 雨の影響が残る馬場で行われた前日の競馬は、レースが進むにつれて差しが利くようになったので、シャンティイの馬場がつねに前残りになるわけではない。しかし、馬場が乾くと昨年と同じような競馬になる可能性がある。現時点で馬場コンディションを予想するのは難しい。

 ユリシーズ、エネイブル、オーダーオブセントジョージのガリレオ系3頭に、フォア賞組のチンギスシークレットとサトノダイヤモンド、さらに調教が良かった何か1頭を加えた計6頭で馬券を組み立てたい。エネイブルの強さと実績は認めても、イギリスまたはアイルランドから遠征した1番人気の3歳牝馬は勝ったことがないので、このレースで断然の存在とは思わない。上位拮抗という戦力評価だ。サトノダイヤモンドは、乾きすぎずぬかるみすぎず、という馬場コンディションになれば勝機がある。