凱旋門賞の気になる有力騎手・調教師はコチラ!
2017年09月28日 11:20
1番人気と目されるエネイブルを管理するのが、イギリス・ニューマーケットに拠点を置くジョン・ゴスデン調教師。ケンブリッジ大学卒業のインテリで、学生時代は豊かな体格(実際にアマレスの怪物アレクサンドル・カレリンを彷彿とさせる)を活かして陸上の投擲種目の選手として活動した。卒業後にヴィンセント・オブライエン、ノエル・ミューレスといったチャンピオントレーナーに師事を受ける。調教師として開業したのはアメリカ・カリフォルニアで、かの地で成功を収めると、1989年にニューマーケットに凱旋。90年代に入ってランフランコ・デットーリ騎手を起用するようになると、一気に快進撃が始まり、以来、100を超えるG1を勝利するようになった。
特にここ数年は、15年にジャックホブスがアイルランドダービーを、ゴールデンホーンが英国ダービーや凱旋門賞を制し、今年もドバイでジャックホブスがシーマクラシックを、さらにエネイブルが英・愛オークス、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、さらにヨークシャーオークスとG1を4連勝するなどして、その勢いはとどまるところを知らない。
そのエネイブルに騎乗するのが、ランフランコ・デットーリ騎手。すっかりイギリス圏が長く、英国出身とも思われることも多いが、イタリア・ミラノ出身。昨年8月にはその英国での通算3000勝を達成した。父ジャンフランコも英国を中心に活躍した騎手で、その道を追うように16歳で騎手デビュー。初G1タイトルは20歳のときのマークオブディスティンクションで制したクイーンエリザベス2世S。以来、200をゆうに越える世界中のG1レースを制しており、その中にはジャパンカップでの3回と、ジャパンカップダートも含まれている。特に大活躍したのは、ゴドルフィンの主戦となった90年からの約10年あまりだが、この契約が解消されたあとも活躍を継続。一時期、薬物禍など不振に陥った時期もあったが、再び不死鳥のように復活。前出のゴールデンホーンの手綱もとった。
エクリプスS、さらに英インターナショナルSを勝ったユリシーズを管理するのは、ナイトの称号を持つ、マイケル・スタウト調教師。45年にカリブ海のバルバドス(当時は英国領)に生まれ、10代でイギリス本国に渡ったのちに、27歳で厩舎を開業させると、10年目に英国ダービーを勝利。以来英国ダービー5勝などを挙げ、98年にはエリザベス2世女王からナイトの称号を受勲した。親日的な調教師のひとりで、96年にシングスピール、97年にピルサドスキーでジャパンカップを連覇。海外の調教師として唯一ジャパンカップ2勝を挙げている。昨年もJRAで発売されたブリーダーズCフィリー&メアターフをクイーンズトラストで制している。
ユリシーズに騎乗が見込まれているのは、昨年189勝を挙げてイギリスの年間最多勝騎手のタイトルを手にしたジム・クローリー騎手。78年にイギリスで生まれ、当初はアマチュアの平地競走騎手として活動。その後、障害騎手を経て、平地のプロ騎手になったという異例の経歴を持つ。ここ数年、急激に存在感を高めており、09年のジャンプラ賞でG1初制覇。一昨年が年間勝利数2位、そして昨年の9月には月間46勝を挙げて英国の月間最多勝記録を更新した。その活躍が認められ、昨年9月からはハムダン殿下の主戦騎手として契約を結んでいる。
昨年、凱旋門賞1~3着独占という偉業を成し遂げたクールモアのエイダン・オブライエン厩舎は、今年も昨年2着のハイランドリール、3着のオーダーオブセントジョージのほか、G1を4勝の3歳牝馬ウィンター、今年の愛ダービーと英セントレジャーを勝ったカプリなどをスタンバイ。毎年、路線を問わず管理馬がG1で活躍しているが、今年の英国・愛国クラシックシーンにおいて、チャーチルが英愛2000ギニーを、ウィンターが英愛1000ギニーを、ウイングスオブイーグルスが英ダービー、カプリが愛ダービーと英セントレジャーをと席捲し、チームの活躍は特に突出していた。今年もどの馬を一番手として使ってくるのかが注目であるが、ペースメーカー的な役割であっても昨年のようなことがあるので侮れない。
その一番手の馬に騎乗するだろうと思われるのが、日本でもお馴染みのライアン・ムーア騎手。ジェンティルドンナ、モーリス、リアルスティールに海外で栄冠をもたらせた一方で、10年の凱旋門賞ではワークフォースでナカヤマフェスタを接戦で下し、マカヒキが出走した昨年もファウンドで勝利するなど、強力なライバルとしても立ちはだかってきた。一昨年からクールモアのエース騎手として契約すると、これまで以上に大レースで勝ち星を量産している。
侮れないのが、クールモアのセカンド騎手であるジェイムス“セイミー”ヘファナン騎手。72年アイルランド生まれのベテランで、ジム・ボルジャー調教師の下で修行し、デビュー。94年にはアイルランドの見習い騎手チャンピオンのタイトルを手にする。同じ師のもとで修行したA.オブライエン調教師がバリードイルで厩舎を開くのにあたって行動をともにし、以来、長きに渡って良好な関係を続けている。セカンド騎手ではあるが、レースでは脇役に徹するわけではなく、00年のナショナルSでのG1初勝利を皮切りに、愛ダービー3勝など多くのタイトルを手にしている。ときにエースであるムーア騎手を打ち負かす騎乗も見せており、軽視は禁物だ。