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【2018ジャックルマロワ賞回顧】アルファセントーリが“ケタ違い”の強さ発揮!

2018年08月14日 13:00

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 フランスの避暑地ドーヴィルを舞台に現地8月12日に行われたG1ジャックルマロワ賞(芝1600m・直線)は単勝1.7倍(JRAの海外馬券発売によるオッズ)という圧倒的な支持を集めたアルファセントーリ(牝3、父マスタークラフツマン、J.ハリントン厩舎)が残り400m地点で先頭に立って優勝。2着の4歳牡馬レコレトスに2馬身半差をつけて5月27日の愛1000ギニーからG1・4連勝を達成。出走した11頭中7頭がG1勝ち馬というハイレベルのレースを制して、真夏の欧州チャンピオンマイラーの座に就いた。稍重発表の勝ちタイムは1分34秒27だった。

 戦前の下馬評通りアルファセントーリのスピードと能力は抜けていた。事前に発表されていたレーティングと着順を照らし合わせるとレーティング122で1位だったアルファセントーリが優勝。119で2位だったレコレトスが2着、118(115に牝馬のアローワンスを加算)のウィズユーが3着、同じく118のローマナイズドが5着。乾いた馬場でスピードを活かすアルファセントーリも、これとは逆に雨を望んだレコレトスも能力を発揮できる絶妙の馬場状態だった。人気薄で唯一、入着に食い込んだヌールアルアワは良馬場の準重賞と重馬場のG3ヴィシー大賞を連勝してここに臨んで3着のウィズユーに1馬身差の4着。レーティング111は出走馬中で下から3番目の評価に過ぎなかったが、体調の良さと晴雨兼用の強みを活かして好結果を手繰り寄せた。

 勝負はゲートを出た11頭がスタンド側に7頭、馬場の外側に4頭がそれぞれ一列棒状に並んで前半は2つのグループに分かれて競馬が展開された。スタンド側集団の先頭は抜群のスタートを切った3歳牝馬のウィズユー。その後ろにぴったりアルファセントーリがつけて3番手は4歳牡馬のレコレトス。2番枠から出たO.ペリエ騎手のレコレトスは最初の200mでアルファセントーリの前に入ろうと意欲を見せたが、それが叶わないと判断すると次善の策である3番手をキープした。逃げたウィズユーが交わされながらもゴール前でファイトバックして3着だったのだから馬場が締まった外ラチ沿いグループの先行勢がベストのコースを選択したと言えそうだ。

 馬場の中央で馬群を引っ張ったサクセスデイズ(9着)は同厩舎のローマナイズドのペースメーカーとして役割を完遂したが、本来はもっと後ろで脚をためたかったローマナイズドが2番手でなし崩しに脚を使ってしまったのは誤算。その3番手から追いくらべに参加したヌールアルアワが前述のように恩恵を被る結果となった。

 中継中に計時された通過タイムは最初の600mが38秒70。レースが動いた1000m通過が61秒85。勝ちタイムから逆算すると日本流で言う「上り3ハロン」は32秒42ということになるが、C.オドノヒュー騎手の手が動いて馬がギアを上げたのは1000m通過してからなので、アルファセントーリはおそらく32秒台前半の脚を使って勝負を決めたことになる。

 アルファセントーリの勝因は一にも二にも彼女自身の「実力」。女性調教師のハリントンは「本当にすごい馬だと思います。レースでは2番手の良いところにつけて、途中から先頭に出たのは、まさに馬自身がレースを分かっていて、それが彼女の仕掛ける最高のタイミングだったのだと思います」と愛馬のメンタルとフィジカルを褒めたたえた。

 木曜日に降った雨の影響でレース当日、馬場の硬さを表すペネトロメーターの数値は3.4と重馬場に近かったが、映画「男と女」の舞台となったドーヴィル海岸に近いロケーションにあり、ベースが砂地で水はけのよい芝コースに燦燦と降り注いだ夏の強い日差しによって陣営が許容した「稍重」を実現した。

 陣営は先月13日のG1ファルマスSから僅か1カ月の間に体重が増えたことを明らかにしていたが、これもさらなるパワーアップを実現させた。

 アルファセントーリは次走、アイルランドに戻ってレパーズタウン競馬場の牝馬限定戦のG1メイトロンS(9月15日、芝1600m)に出走予定。その後、これも牝馬だけで行われる英国ニューマーケット競馬場のG1サンチャリオットS(10月6日、芝1600m・直線)からマイル王を決めるアスコットのG1クイーンエリザベス2世S(芝1600m・直線)に立ち向かい、馬の状態次第ではアメリカのG1ブリーダーズCマイル(11月3日、チャーチルダウンズ、芝1600m)まで足を伸ばすプランもあり得ると言う。

 現地マスコミはこのパフォーマンスを絶賛。曽祖母のミエスク級と呼ぶにはまだ時期尚早かもしれないが、そのスピードとパワーは間違いなく一級品。アルファセントーリは芦毛で毛色こそ異なるものの眼のあたりはミエスクのそれに瓜二つ。2着となったレコレトスを送ったウィッパーの父ミエスクズサン(キングマンボの全弟)もミエスクの直仔。3着ウィズユーの父ダンシリも1999年のジャックルマロワ賞でドバイミレニアムの3着した実績があり、このレースに縁のあった実力馬が持てる力を存分に発揮した素晴らしいレースだった。

(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)