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【香港チャンピオンズデー回顧】QE2CはウインブライトがG1初制覇!ドバイに続き日本馬が海外で躍動

2019年04月30日 10:00

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 昨年は海外G1優勝のなかった日本馬だったが、ドバイでのアーモンドアイに続いて、クイーンエリザベス2世カップ(QE2C)でウインブライトが強烈な二の矢を放った。

 路盤に工夫があり水はけの良さで知られるシャティン競馬場だが、前日のスコールと、レース当日の朝方に降った雨は、湿気を帯びた空気となって地上に残った。馬場は普段より幾分柔らかく、欧州で言う脚に優しい最高の馬場。午後の陽射しの助けもあって香港ジョッキークラブ(HKJC)の発表はGood(良馬場)となった。

 香港チャンピオンズデーの最初の重賞となったチェアマンズスプリントプライズ(芝1200m)で、ビートザクロックが記録した勝ちタイムは1分8秒26で、これは昨年のアイヴィクトリーの1分8秒63を上回った。武豊騎手が騎乗したナックビーナスは勝ち馬から4馬身1/2差の6着に終わった。

 日本時間の午後5時40分発走を定刻としたQE2Cは日本馬3頭、英国のエミネントを含む13頭によって争われた。

 地元のグロリアスフォーエバーとタイムワープ、それにエミネントなど単騎先頭を理想とする馬たちが揃って先行争いの激化が予想されたが、ゲートが開くとエミネントに行き脚がつかず、7番枠のグロリアスフォーエバーが先頭。スタートでフローレとぶつかって2番手となったタイムワープを追いかけてパキスタンスターが3番手でプレッシャーをかけ、これに4歳馬のフローレとワイククも先行策を取ったことで、最初の800m通過は48秒03と予想された通りのハイペースとなった。

 ややふらついたスタートからすぐに立て直して最初のコーナーに飛び込んだウインブライトの位置取りは向正面の800m通過が先頭から4馬身半遅れの6番手。3コーナーにさしかかるあたりの1200m通過は弟のグロリアスフォーエバーに変わって先頭を奪ったタイムワープから3馬身1/4馬身差の5番手、直線に入ってからゴールまで残り400mでもタイムワープから2馬身半差の6番手という我慢のポジションとなった。香港では日本のように上がり3ハロンタイムの計測がなく、あくまでも目視による推定タイムだが、松岡騎手のウインブライトの上がりは34秒8、9番手から馬場の外目をついて猛追したエグザルタントは、これを上回る34秒6程度の脚を使っている。

 ゴールでの3/4馬身は残り300mで、タイムワープ、パキスタンスター、グロリアスフォーエバーの3頭が併せ馬のようにインに寄ったことによってぽっかりと現れた空間を突き抜けたウインブライトと、レース序盤に流れに乗るまでに時間を要して12番手から向正面でまくって直線も外を通らざるをえなかったエグザルタントとの差だった。リスグラシューは道中で多馬と接触する不利もあって、エグザルタントに1/4馬身の3着とまたも香港で惜しい星を落とした。

 終わってみれば1番枠を引いたウインブライトが優勝、6番枠からスタートしたエグザルタントが2着、3着リスグラシューが4番枠と真ん中より内の枠を引いた馬たちが好結果を残し、8番枠より外からスタートした馬たちは、揃って8着以下に沈んだ。このコースでの外枠不利が改めて浮かび上がった。

 勝ち時計の1分58秒81は、このレースで9着だったイーグルウェイが持っていたレコードタイムの1分59秒30を約0秒5短縮した。重賞を連勝して力をつけての香港入りだったが、日本のG1競走ではどうしても歯が立たなかったウインブライトが、見違えるような強さを見せたのはシャティン競馬場との相性の良さか、或いは血の成せる技か。ゴールドシップなどステイゴールドの代表産駒を思い浮かべると2000m以上のレースでの活躍も期待できそうだが、HKJCとファンは12月の香港カップ(芝2000m)での再訪を待ち望んでいるだろう。

 この前に行われたチェアマンズスプリントプライズは前述のようにビートザブロックが3番手から抜け出して優勝。自身2度目のG1制覇を飾った。単勝1.05倍という断然人気となったビューティージェネレーションが出走したチャンピオンズマイルは、ウィンクスの引退で、芝マイル部門のトップに立った本命馬が2着のシンガポールスリングに1馬身半差をつけて堂々の逃げ切り勝ち。9連勝で、次の一手が注目されることとなった。

(サラブレッドインフォメーションシステム 奥野 庸介)