【英インターナショナルS回顧】ダノンデサイル「本来の力出せず」5着、世界No.1オンブズマンが力を証明
2025年08月22日 13:08

英インターナショナルステークスが8月20日(水)、イギリスのヨーク競馬場2050m芝で行われ、2024年日本ダービー馬のダノンデサイル(牡4=栗東・安田翔伍厩舎)が戸崎圭太を騎手に参戦。前走のドバイシーマクラシックに続く海外G1連勝を目指したものの6頭立ての5着に敗れた。
レースを3馬身半差の快勝で制したのは、フォーエバーヤングと並び今年のレーティング世界ランク1位でJRA発売オッズでも2.4倍の1番人気に支持されていたイギリス調教馬のオンブズマン(牡4=J&T.ゴスデン厩舎)。2着には2番人気のアイルランド調教馬・ドラクロワ(牡3=A.オブライエン厩舎)が入った。
同レースは欧州の中距離路線を代表するレースの一つで、毎年のように欧州各国からビッグネームが参戦。昨年は日本からドゥレッツァが挑戦するも5着に敗れ、1着のシティオブトロイはその年の欧州年度代表馬に輝いた。
今年は世界ランク1位のオンブズマン、その世界No.1ホースを前走のエクリプスステークスで破った3歳のホープ・ドラクロワが出走。さらに春のドバイシーマクラシックでカランダガン(今年7月のキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス勝利)を負かしたダノンデサイルが加わったことで、日本でも欧州でも“3強”の争いとして大きな注目を集めた。
しかし、ダノンデサイルにとっては厳しい結果の英国初遠征となってしまったようだ。レースはオンブズマンと同陣営であるゴドルフィンが用意したラビットホース、バーキャッスル(せん5=A.ファーブル厩舎)が想定通り逃げる展開。その後ろの2番手にダノンデサイルはつけたのだが、バーキャッスルがぐいぐいと行きっぷりよくリードを広げていき、その差は20馬身ほどにも広がってしまった。
これでは逃げているのと同じ形。馬の後ろで折り合いをつけたいダノンデサイルとしては大きな誤算だった。戸崎騎手が振り返る。
「(安田)先生とも話して、前に馬を置いて競馬を組み立てたかったのですが、作戦通りに行けなかった。そのあたりがロスだったかなと思います」
また、鞍上は合わせて「少し返し馬から興奮気味で、そのあたりも本来の力を出すことができなかった原因の一つでもあるかなと思います」とも話していた通り、ダノンデサイルは返し馬の時点からかなり行きたがる素振りを見せていた。安田調教師が常々話していた“精神面の幼さ”という課題がここで出てしまったのだろう。
そのため道中はリズム良く追走とはいかず、約900mもある最後の直線の半ばを過ぎても末脚に勢いがつかないまま、逃げたバーキャッスルとの差をなかなか詰められない。3番手から運んだオンブズマン、最後方待機のドラクロワが力強く伸びていく中、ダノンデサイルは5着が精一杯のゴールだった。
「残念な結果で悔しいです。プラン通りに行けず、道中もリラックスさせることができなかったのが原因かなと思いますし、本来の力が出せなかったと思います」
期待が大きかった分、落胆も大きいが、戸崎騎手が話したように力負けとは思いたくない。安田調教師も「この結果をしっかりと受け止めて、今後に生かしていきたいです」とコメント。今回の悔しい敗戦を大きな糧とし、秋以降のさらなる成長を願いたい。

一方、勝ったオンブズマンの走りは見事なものだった。ウィリアム・ビュイック騎手を背に道中は内にダノンデサイルを見る形で3番手をがっちりと追走。最後の直線ではバーキャッスルが粘りに粘ったため、最低人気のラビットホースがまさかの大金星かとも思われたが、残り1ハロンで内から一気に抜き去り先頭に立つと、追い込んできたライアン・ムーア騎手騎乗のドラクロワを全く寄せ付けない完勝だった。
特に、エクリプスSで土をつけられたドラクロワをリターンマッチで負かしたのは大きい。前走は直線一気の強襲にあい、わずかクビ差屈したのだが、今回は決定的とも言える3馬身半をつけてやり返したのだ。これで今年の欧州の中距離最強馬は誰であるかを明確にアピールするとともに、このレースの走りがレーティングとしてどのように評価されるかも非常に楽しみになってきた。
今回の勝利でオンブズマンは通算8戦6勝、G1レースは2走前のプリンスオブウェールズステークスに続き2勝目。なおレース後、ジョン・ゴスデン調教師はオンブズマンの次走候補にアイリッシュチャンピオンステークス(9月13日、レパーズタウン競馬場2000m芝)を挙げており、ドラクロワのエイダン・オブライエン調教師も次走候補としてインタビューに答えている。そして、同レースには昨年3着のシンエンペラー(牡4=栗東・矢作芳人厩舎)が出走予定だ。オンブズマンvs.ドラクロワの3度目の対決に、今度はシンエンペラーが殴り込みとなれば、日本のファンにとってもますます熱い欧州2000m頂上決戦となりそうだ。
文: 森永淳洋