【サウジカップ回顧】「負けないと思っていた」フォーエバーヤング史上初の連覇、新たな伝説は最高の幕開けに
2026年02月16日 14:30
サウジカップが現地時間2月14日(土)、キングアブドゥルアジーズ競馬場1800mダートで行われ、坂井瑠星騎手騎乗のフォーエバーヤング(牡5=栗東・矢作芳人厩舎、父リアルスティール)が優勝。同レース史上初の連覇を達成するとともに、1着賞金約15億円を手にした。勝ちタイムは1分51秒02。
まさに盤石の横綱相撲。世界最高峰レースでこれだけ安心感を持って見ていられるのだから、やはりフォーエバーヤングは別次元だ。日本が誇るJRA賞年度代表馬の力に、世界のホースマンもあらためて感服したのではないだろうか。
JRA発売分の単勝オッズはダントツの1.2倍。昨年の同レースで歴史に残る激闘を演じた香港のロマンチックウォリアー、3歳時からのライバルである米国のシエラレオーネ、フィアースネスらが不在。となれば、この数字も当然だろう。
だが、今年は米国の伯楽ボブ・バファート調教師が自信を持って送り出してきたナイソス(牡5)がいる。通算8戦7勝2着1回。ケンタッキーダービーの有力候補と目されながら脚元の不安により1年3カ月にわたって戦線離脱したものの、復帰戦2着後はブリーダーズカップ(BC)ダートマイルを含め怒涛の重賞4連勝中だ。同じ5歳から新たなライバル候補が名乗りを挙げていたのだ。
しかし、坂井騎手のフォーエバーヤングに対する信頼は微塵も揺るがない。
「負けないと思っていましたし、自信をもって馬を信じて乗っていました」
五分のスタートから先手を伺った5番枠発進のフォーエバーヤングだったが、内からバニシング、外からタンバランバ、ナイソスが勢いよく飛び出してきたため、ラチ沿いの5番手、インに閉じ込められる形になってしまった。
「あまり揉まれると嫌だなと思っていて、少し嫌な形になりましたが、大丈夫だろうと思っていました」
理想通りのポジションではなかったかもしれない。それでも「大丈夫」と鞍上は慌てることなく、ジッと動かず。これが相棒に対する自信と信頼の表れだろう。すると、最終4コーナーから最後の直線入り口でフォーエバーヤングの目の前が1頭分、ぽっかりと開いた。もちろん、坂井騎手は見逃さない。一気に加速してそのスペースに飛び込むと、逆に内・外のコーナリング差を生かしてあっという間に先頭に躍り出たのだ。
これに合わせるように外から襲ってきたのは、やはりナイソス。だが、馬体が並びそうになったのも、一瞬のこと。一歩、また一歩と前に出ていくフォーエバーヤングに何とか1馬身差で食らいつくのが精いっぱいだ。永遠に縮まることはないだろうとも思えるその差をキープしたまま、フォーエバーヤングは史上初の連覇フィニッシュを決めたのだった。
「やはりすごい馬だなと感じました。どんな形でも勝つのは凄いですし、史上初の連覇ということで、無事に勝てて良かったです」と、坂井騎手は喜びのコメント。一方、これでサウジカップ3勝目となった矢作調教師は「状態としては100%には至っていないと感じていました。道中も完全な走りではなかったかもしれません」と、今回はフォーエバーヤングが最高のパフォーマンスを出し切ったわけではないことを示唆している。
サウジカップでピークを迎えない仕上げとしたのも、すべては昨年3着と苦杯をなめたドバイワールドカップを制するため。「次走のドバイワールドカップではさらに上積みがあると思います」とトレーナーが語れば、ジョッキーも「次は去年勝てなかったドバイワールドカップもあるので、そこに向けて頑張っていきます」と、気持ちを新たに誓った。
昨秋、BCクラシックを日本馬として初めて制し、ダート世界最強馬に輝いた直後、「フォーエバーヤング自身、まだ勝てていないレースがあるので、そこを全部勝ちたいなと思っています」と坂井騎手は語っていた。有言実行へ、最初のターゲットとなるドバイワールドカップはおよそ1カ月半後の現地時間3月28日(土)に行われる。
フォーエバーヤングの集大成でもあり“最終章”とも言われている5歳シーズン。新たな伝説は最高の形で幕を開けた。
一方、同じく日本から出走したルクソールカフェ(牡4=美浦・堀宣行厩舎)はゲート出遅れが響いて最後方からの追走。最後の直線はよく追い上げたものの、5着での入線となった。手綱をとったジョアン・モレイラ騎手は「ゲートは少し不運でしたが、直線では力強く伸びてくれましたし、彼のパフォーマンスには大変満足しています」とコメントしている。
もう1頭、サンライズジパング(牡5=栗東・前川恭子厩舎)は最内枠から道中、巧みに外へと出されて直線勝負にかけたものの、伸びあぐねて6着だった。「直線で手前を替えなくて、ゴール後に替えたということだったので、そこが変わっていれば全然違ったのではないかと後悔は残ります」と前川調教師。コンビを組んだオイシン・マーフィー騎手は「スタートは良かったのですが、ペースが少し早かったです。フォーエバーヤングをマークして進めればと思っていましたが、とても強い馬でしたし、坂井瑠星騎手も完璧な騎乗でした。結果は6着となりましたが、馬は良く頑張ってくれました」と語っている。
また、この日はサウジカップのほかにも、サウジダービー、リヤドダートスプリント、1351ターフスプリント、ネオムターフカップ、レッドシーターフハンデキャップに日本馬は合計16頭参戦。だが、勝ち鞍を挙げることはできず、サウジダービーに出走したサトノボヤージュ(牡3=美浦・田中博康厩舎)の3着が最高着順と、全般的に厳しい結果に終わった。
文:森永淳洋
