【海外競馬 ニュースまとめ】2018年5月~6月中旬

2018年06月19日 11:00

●日本産馬が初めて英クラシックを制覇

 5月5日の英ニューマーケット競馬場で行われたG1英2000ギニー(芝直線1600m)をディープインパクトを父に持つ日本産馬『サクソンウォリアー』(牡3、愛A.オブライエン厩舎)がG3タタソールズS2着馬ティップトゥーウィンに1馬身半差をつけて優勝。日本産馬による史上初の英クラシック制覇が達成された。

 サクソンウォリアーは世界有数の馬主・生産組織であるクールモアの所有馬。彼らが、2歳時にG1モイグレアスタッドS(芝1400m)を含む5戦5勝の成績を残して2011年の欧州最優秀2歳牝馬に選ばれた母メイビー(父ガリレオ)を日本に送り、ディープインパクトと交配させたことで誕生(生産牧場はノーザンファーム)した良血馬で、当歳秋にアイルランドに輸出された。

 その才能は2歳時から際立っており、ディープ産駒らしく、後方から豪快に突き抜けた昨年8月のデビュー戦(芝1600m)の勝ちっぷりは、G1レベルの力があることを感じさせるもの。そこからG2ベレスフォードS(芝1600m)、G1レーシングポストトロフィー(芝1600m)と連勝した際も個人的には驚きはなかった。

 ただ、差し返しての勝利となったレーシングポストトロフィーのレースぶりから、英2000ギニーは少し距離不足かという印象も受けたし、さらには同日にアメリカのケンタッキーダービーで騎乗するためR.ムーア騎手が騎乗できず、19歳の若手であるD.オブライエン騎手が手綱を取るという点も懸念材料ではあったが、終わってみれば全くの杞憂。マイルの流れにあっさりと乗り、残り400m過ぎで先頭に立って押し切るという横綱相撲を見せてくれた。

 その後、6月2日のG1英ダービーでは単勝1.8倍という圧倒的な1番人気を裏切って4着に終わったサクソンウォリアー。敗因は1600mから2410mへの距離延長、英2000ギニー時よりも気負いが目立っていたこと、2000年以降10頭立て以上のこの距離では104頭が走って未勝利だった1番ゲートなども考えられるが、軽やかというよりは、大きくパワフルなタイプだけに、高低差約40mの、まるでジェットコースターのようなコースにうまく対応できなかったかなというのがレース後の率直な感想。タフではあるが、実力がストレートに結果に反映されやすいカラ競馬場で行われる6月30日のG1愛ダービー(芝2400m)の走りに改めて注目したい。

ジャスティファイが「アポロの呪い」を解く

 ダート最強の3歳馬を決めるG1ケンタッキーダービー(ダート2000m)が5月5日に米チャーチルダウンズ競馬場で行われ、『ジャスティファイ』(牡3歳、父スキャットダディ)が昨年の米最優秀2歳牡馬グッドマジックに2馬身半差をつけて優勝。1882年のアポロ以来、130年以上も続いた「3歳デビュー馬はケンタッキーダービーを勝てない」というジンクスを吹き飛ばした。

 ジャスティファイは今年2月8日にデビュー戦(ダート1400m)を9馬身半差で勝ち。そこから、3月11日の条件戦(ダート1600m)を6馬身半差、4月7日のG1サンタアニタダービー(ダート1800m)を3馬身差で連勝してのケンタッキーダービー参戦だった。

 「アポロの呪い」といわれた上記のジンクスは、フルゲート20頭という多頭数競馬に対応するためにはそれなりにレース経験が必要という経験則の表れだったと思っているが、たとえば2008~2017年のケンタッキーダービー優勝馬のケンタッキーダービーを迎えるまでの平均出走回数は6回だったのに対して、1968~1977年のそれはなんと13.3回。「ケンタッキーダービーへの道」も時代とともに様変わりしている。近年でも2007年にカーリンが3着、2012年にボーディマイスターが2着、2017年にもバトルオブミッドウェーが3着に来ており、呪いが解けるのは時間の問題ではあったのかもしれない。

 なお、ジャスティファイは、続いて5月19日のG1プリークネスS(ダート1900m)と6月9日のG1ベルモントS(ダート2400m)も勝って、史上13頭目となる米三冠を達成。無敗での達成は、1977年のシアトルスルー以来、史上2頭目のこととなった。シアトルスルーは三冠達成後初のレース(7月のG1スワップスS)で4着に敗れて、連勝が止まったが、ジャスティファイはどうだろうか?

文:秋山 響(TPC)