プロフィール

日本の競馬ファンにとってワークフォースと言えば、日本馬ナカヤマフェスタを僅差で退けた2010年凱旋門賞の印象が強いが、同馬の強さが最も際立ったレースは英ダービーだろう。

英ダービー前哨戦であるG2ダンテSで2着に敗れたワークフォースは、デビューから3戦目というキャリア不足や前走の負けの影響もあって、英ダービー当日は3番人気の評価だった。レースでは中団よりも後ろ目に待機し、最終コーナー手前から徐々にポジションを上げて直線でさらに加速。残り300m付近でついに先頭に立ったワークフォースは、そのまま一気に後続を突き放し、終わってみれば2着に7馬身差を付けて圧勝を収め、さらにラムタラがマークした2分32秒31を1秒近くも更新する2分31秒33の超絶レコードとなった。

なお、現在でこそ世界的名手と謳われるR.ムーア騎手にとっては、これが初の英ダービー優勝。ダービージョッキーの称号を手にするとともに、前日の英オークス勝利（スノーフェアリー）に続いて2日連続でのビッグレース制覇だった。

英ダービー馬となったワークフォースの次なる目標は、キングジョージ6世＆クイーンエリザベスステークス。英ダービーの内容から1番人気に推されたが、先行策から直線へ向かうも精彩を欠いて失速し、1着ハービンジャーに約17馬身差の6頭中5着に敗戦。あまりの大敗にその後のプランは白紙となったが、陣営は凱旋門賞出走を決断する。

この年の凱旋門賞には、日本からナカヤマフェスタとヴィクトワールピサが参戦。ワークフォースは中団から後ろ目に付ける得意の競馬に徹し、勝負は最後の直線へ。ナカヤマフェスタが外を回って先頭へ躍り出るが、ワークフォースも馬群の中から抜け出して最後は2頭の激しい競り合いとなり、わずかアタマ差だけワークフォースが抜け出した位置がゴールだった。

キングジョージの惨敗が嘘だったかのような見事な勝利に、ロンシャン競馬場に赴いた英国メディアからは歓喜の声援が飛び交い、片や日本人メディアからはナカヤマフェスタの惜敗に対する大きな溜息が漏れた。鞍上のムーア騎手はこれが初の凱旋門賞制覇。英ダービーに続くビッグタイトル初優勝をワークフォースとのコンビで達成している。

古馬になったワークフォースは初戦のG3を勝利したものの、その後はG1エクリプスステークス、キングジョージで2戦連続の2着。凱旋門賞連覇を狙うも調整不足で12着に大敗し、このレースを最後に引退となった。生涯成績は9戦4勝だが、そのうち2つはホースマンの誰もが憧れるビッグタイトル。また、英ダービーで見せた衝撃的な強さは、競馬ファンの心の中で色褪せることはないだろう。