凱旋門賞 特別インタビュー「日本馬で一泡吹かせたい」 調教師 角居勝彦

凱旋門賞 特別インタビュー「日本馬で一泡吹かせたい」 調教師 角居勝彦

凱旋門賞 特別インタビュー「日本馬で一泡吹かせたい」 調教師 角居勝彦

取材・文:平松さとし

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現地10月6日に行われる凱旋門賞(フランス・パリロンシャン競馬場)には、キセキフィエールマンブラストワンピースの日本馬3頭が参戦する予定となっている。『JRA-VAN Ver. World』では、キセキを管理する角居勝彦調教師にインタビュー取材を実施し、過去の海外遠征や凱旋門賞に向けて語ってもらった。(取材日:2019年9月4日)

「現在の日本馬の高い能力を持ってすれば」

キセキの凱旋門賞挑戦が迫ってきました。現在の心境からお聞かせください。

角居調教師(以下、「 」のみ) 「当初一緒に遠征を予定していたロジャーバローズがリタイアとなってしまいましたが、オーナーのご理解もあり、1頭でも挑ませていただけることになりました。幸いここまでは順調に来ていますので、楽しみですね」

3歳時には不良馬場の菊花賞を制したキセキ。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

改めてキセキの長所はどのような点でしょうか?

「ストライドが大きくて、菊花賞ではひどい道悪をこなしてくれました。もっとも、日本の重馬場で大丈夫だからヨーロッパの馬場も大丈夫という簡単なモノでないことは百も承知ですが、遠征を決断できる材料となったのは間違いありません。アンジュレーションのキツい荒れた馬場も何とかこなしてくれれば、という思いは持っています」

前哨戦はフォワ賞を選択しました。

「かなり迷ったのですが、検疫の問題もありフォワ賞を選びました。本番と同じ馬場で目一杯走れるかを見たいですし、先行する形の多い馬ですので、コースのどこからどこまで走るのかを教えたいという面もあります」

香港遠征時は体調を崩したこともあり結果を残せませんでしたが、海外遠征自体は大丈夫なタイプでしょうか?

「あの時は蕁麻疹が出るなど、残念ながら本来の状態ではなかったかもしれません。既にフランス入りしていますが、リラックスしているので海外遠征自体はこなせる馬だと思います」

C.スミヨン騎手を確保しました。

「はい。彼はパリロンシャン競馬場を知っていて、ヨーロッパの他のジョッキーの癖も知っています。良いジョッキーを確保できましたね」

エネイブルの3連覇を阻みたいですね?

「エイダン(オブライエン厩舎)みたいに複数頭出してくる厩舎の馬で、包囲網を敷いて欲しいです(笑)。それは冗談半分ですが、競馬は何が起きるか分かりませんからね。日本馬もレベルが高いので、何とか一泡吹かせたいですね」

フィエールマンとブラストワンピースはニューマーケットに滞在して、直前輸送で凱旋門賞に挑みます。

「調教を把握するという意味では、視界の開けているニューマーケットの方がシャンティイより良いかもしれません。調教コースのバリエーションも豊富ですしね。結果がどうなるかは分からないですが、色々試してみてその中から良い手を見つけるのはアリだと思います」

角居調教師自身の凱旋門賞に対するイメージは?

「ヨーロッパ最大のグランプリレースだと考えています。それだけに勝つことは容易ではないですが、だからこそ楽しみなレースだという印象です」

日本馬は過去に2着が4回。挑んでいる頭数を考えると、決して難攻不落の城ではないかと?

「現在の日本馬の高い能力を持ってすれば、いずれ勝てるレースだとは思います。ただ、これまで1頭も勝てていないというのも事実。何か理由があるはずですし、逆に言えばその理由が分かれば勝てるのかもしれませんね」

思い出深いドバイワールドカップ

「凱旋門賞を勝つことは容易ではない」と語る角居師。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

角居調教師はヴィクトワールピサで2010、11年と挑戦。10年が7着、翌年は残念ながら本番前に戦線離脱となってしまいました。

「順調に使って勝つというのは、たとえ日本国内だとしても難しいことです。海外遠征となれば尚更。そう簡単には勝たせてもらえません」

凱旋門賞に限らずですが、海外遠征を決断できる馬とそうでない馬との違いはどこでしょう?

「パドックで1人でも曳いて歩ける馬というのは最低限の条件でしょうね。つまりは精神的にしっかりした馬。そうでないと飛行機による長距離の輸送や環境の変化に対応できません。そのあたりに対応できないと、競馬へ行く前にギブアップせざるを得ないケースも出てきます」