日本勢2勝目狙うウインマリリン、強敵はインスパイラルとウォームハート
BCフィリー&メアターフは2021年にラヴズオンリーユーが日本調教馬として初のBC制覇を成し遂げた記念すべきレース。すでに結果を出しているだけに、日本の馬が通用するか否かを問うレースではないだろう。香港ヴァーズで海外G1勝ちの実績もあるウインマリリンには当然、勝ち負けの期待がかかる。
スピード優先のサンタアニタパーク競馬場ならウインマリリンの先行力が生きそうだ。昨年は外枠から積極果敢に逃げて2着に粘り込んだインイタリアンが今年は1番枠に入り、ゲートに失敗さえしなければ再び逃げるはず。5番枠のウインマリリンはつかず離れずの位置から追走し、捕まえるタイミングを計るレースとなるだろう。
ただ、インイタリアンの逃げ脚もなかなか強力。昨年の9.5ハロンから100ヤード延び、今回は初の10ハロン戦になるが、この時期には気温の低いケンタッキー州のキーンランド競馬場から、太陽が降り注ぐカリフォルニア州のサンタアニタパークに舞台が変わり、馬場が軽くなる分だけスタミナはもちそう。楽をさせると後続が捕らえ切れない可能性もある。
L.デットーリ騎手が騎乗する英国のインスパイラル、R.ムーア騎手が手綱を取るアイルランドのウォームハートも手強い実力馬。前者はマイル路線から、後者は12ハロン路線から今回の10ハロンに臨むためポジショニングが判然としないが、昨年はムーア騎手のチューズデーがインイタリアンを差し切っており、ウォームハートが展開の鍵をにぎる存在となるか。ただ、インスパイラルが初の10ハロンを問題にしなければ、マイルG1でも一枚上の瞬発力で次元の違う勝ち方をしてしまうかもしれない。
日本の競馬ファンにとってはルミエールロックも興味を引かれる1頭だろう。ディープインパクト産駒の英2000ギニー馬サクソンウォリアーを父に持ち、前走は凱旋門賞と同日のG1オペラ賞でフランス二冠牝馬ブルーローズセンから1馬身少々の3着に逃げ粘った。今回は道中でウインマリリンの近くにいる可能性が高い。サクソンウォリアー産駒はヴィクトリアロードが昨年のBCジュベナイルターフを勝っており、アメリカでも結果を出している。
年明けにドバイで重賞を連勝したゴドルフィンのウィズザムーンライトは、今回も対戦する北米勢に近走で完敗しており勝ち切るまでは難しいか。ステートオケージョンはオペラ賞でルミエールロックと差のない5着だが、直線の加速でやや後れを取った。さらにスピードを求められるアメリカの芝では前が崩れる展開などの助けがほしい。
北米勢は前述のインイタリアンが頭ひとつリードしている印象だが、南米出身で今回と同舞台の前哨戦を勝ってきたディディア、仏1000ギニー2着の実績があり、前走はBCマイル有力馬のモージにも迫ったリンディーの勢いも魅力。昨年のカナダ年度代表馬モイラ、これに今年は勝ち越しているフェヴローバーにも上位争いの力がある。
前走が道悪のG3勝ちで見落とされそうなマキューリックも侮れない。4走前のニューヨークSではディディアに先着されたが、勝ち馬が逃げ切る展開で最後方を追走した結果。次戦のグレンフォールズSはウォーライクゴッデス(BCターフに出走)が得意とする12ハロンで差し切っており、末脚が生きる展開になれば見せ場以上も。
(渡部浩明)