ソングラインとウインカーネリアン、前後二段構えで勝機うかがう
枠順抽選後に発表された主催者想定でソングラインが1番人気に推され、日本からの初制覇の期待も大きいBCマイル。しかし、兄妹制覇を狙うモージと夏から好調を維持しているマスターオブザシーズのゴドルフィン勢をはじめ、展開ひとつで結果も大きく変わりそうな多彩なメンバーが集まっている。馬券発売される4レースの中では最も難解と思われる。
10番枠のソングラインにとっては小回り1周のコースでポジショニングが難しいところ。小回りを意識して中途半端に脚を使い、位置を取れないまま最初のターンで外へ張り出されるロスは避けたい。しかし、すんなり先手というタイプではなく、あまり後方になっても終盤の攻防で後れを取りかねない。先行する有力馬をいつでも捕まえにいける位置が欲しい。
その目標となるのがモージだろう。先行力があり6番枠も上々。ソングラインは背後に潜り込んでマークする形を作れるか。4番枠に恵まれたウインカーネリアンはモージのさらに前、あるいは逃げられる可能性もある。モージが後ろを意識してじっくり乗ればウインカーネリアンに、小回りで早めの仕掛けになればソングラインにチャンスと、日本勢の二段構えになると理想的だ。
マスターオブザシーズはソングライン、モージとともに3強と見られているが、気性に難しさがあるため大外の14番枠が課題。積極的に位置を取りにいくと掛かり、前に壁を作ろうとすると後方に追いやられと、どちらを選ぶにもリスクが生じる。中団で馬群の外を走り続けたドバイターフでは、ゴール200m手前の1600m地点を待たずに失速した。
ソングラインとの比較ではカサクリードも争覇圏と見ておくべき1頭。昨年の1351ターフスプリントではソングラインの背後からクビ差に食い下がった。今年の4戦は全て3着以内、前走でG1勝ちと7歳ながら最も充実したシーズンを送っている。
また、シャールズスパイトも日本馬との比較が可能で、ドバイターフでダノンベルーガに2馬身少々の4着、セリフォスにはクビ差先着という力関係。昨年のBCマイルでは2番枠から中団の内ラチ沿いで息を潜め、直線では外に持ち出されて2着に食い込んだ。1番枠の今年も同じような組み立てをできる。
この2頭に挟まれて2番枠のジーナロマンティカは、芝馬の養成にかけてはアメリカきってのC.ブラウン調教師が管理。前走のファーストレディSでは同馬主の僚友インイタリアン(BCフィリー&メアターフに出走)を差し切って2度目のG1制覇とした。牡馬相手の重賞勝ちがなく、今回は挑戦者の立場だが、牝馬の活躍も目立つレースだけに一発あって不思議はない。
同じことはフランスから遠征のケリナにも言える。前走は好天に恵まれた凱旋門賞と同日のフォレ賞でG1初制覇。1/2馬身差の2着に下したキンロスには昨年のBCマイルでシャールズスパイトに次ぐ3着という実績がある。さらに1年前、日本からヴァンドギャルドが初参戦した2021年のBCマイル優勝馬スペースブルースはフォレ賞から連勝を決めた。
残りの北米勢ではエグゾルテッドが5月にシューメイカーマイルS勝ち、デュジュールも3月にフランクE.キルローマイルで2着と、今回と同舞台のG1で連対。前走のG2デルマーマイルSではワンツーと地の利がある。マスターオブフォックスハウンズやアストロノマー、モアザンルックス、初めてカナダを出るラッキースコアらは、これまで戦ってきた相手より数段上がるレベルに対応できるか。
(渡部浩明)