見どころ
昨年以上に厚み増した日本勢、大将はレイデオロもハーツ産駒の両雄譲らず
昨年の10頭からさらに2頭減り、8頭の少頭数で争われることになった今年のドバイシーマクラシック。その内訳は日本調教馬が3頭、地元のゴドルフィン勢が2頭、名伯楽A.オブライエン調教師の管理馬2頭による愛国勢、残りは英国から1頭という顔触れで、大別すると三つ巴の様相だ。
昨年と同様にG1ホース3頭で臨む日本勢だが、その布陣は一段と迫力を増した感がある。その中でも最大の注目はレイデオロとなろう。昨年は序盤に口を割るなど折り合いに気を取られ、ゴドルフィン勢に主導権を握られて末脚不発。今年は二の舞を避けたいところだ。その折り合いが課題となるが、昨秋の天皇賞や有馬記念ではドッシリと構える一変のレース内容を見せていた。完成の域に達した現状をもってすれば、雪辱へ昨年以上の期待をかけても良いのではないか。
ただし、レイデオロにとっては今年も簡単なレースにはならない。呉越同舟の形となるスワーヴリチャードとシュヴァルグランも強力だからだ。何といっても両馬はドバイシーマクラシックで4馬身差圧勝の爆発的なパフォーマンスを披露したハーツクライの血を引いている。
スワーヴリチャードはレイデオロと同世代でライバル関係にあるが、ここまで3度の直接対決はいずれも後れを取っている。ただ、そのうち2戦は苦手の中山競馬場(皐月賞)と大きく出遅れた昨秋の天皇賞。2着惜敗のダービーも超スローで展開のアヤがあった。前々から突き抜けたアルゼンチン共和国杯や、途中からハナに立って押し切った大阪杯のように、流れに乗れた時の強さは父親譲り。出遅れの不安はつきまとうが、有馬記念以来のレイデオロに対し、中山記念でひと叩き済みの臨戦過程も有利で、一矢報いるチャンスはあるだろう。
一方のシュヴァルグランは一昨年のジャパンCでレイデオロに勝った実績がある。それ以来の直接対決となった前走の有馬記念では、1つ着順が劣っただけの3着。両レースとも着差は1馬身1/4で、ここまでは全く互角の関係だ。しかも、今回は得意といえない中山競馬場から、ジャパンCとほぼ同じ左回り2410mへ舞台が変わり、枠順も当時と同じ1番と流れが向いてきた。好相性かつ強気で鳴らすH.ボウマン騎手とのコンビ継続も、相手関係や流れを読みにくい国際舞台で頼りになる。
日本勢にとって最大の脅威はやはりゴドルフィン勢か。ただ、昨年より1頭減ったうえにG1ホース不在と、ホームで受けて立つ形ながらも実績的には挑戦者という立場になる。マークすべきはオールドペルシアンで、前哨戦は超スローペースの中で仕掛けのタイミングが遅れながら、最後の200mだけで今回も同走するレーシングヒストリーを差し切り快勝。デザートエンカウンターは寄せつけなかった。前々で折り合える強味があり、主導権を奪われると厄介だ。
オブライエン勢の2頭では、エースライダーのR.ムーア騎手を配してきたマジックワンドに注目。ここまで2勝と勝ち味に遅い一方、前走ではアメリカのペガサスWCターフに遠征し、牡馬を相手に2着と進境著しい。ここはあくまで試金石だが、世界の競馬は牝馬の活躍がトレンドでもあり侮れない。