見どころ
地元の超新星エセロが世代交代へ、ダノンスマッシュは父に続けるか
日本からダノンスマッシュが単騎参戦する香港スプリントは、常に地元勢のぶ厚い壁との闘い。昨年は春秋スプリント制覇のファインニードルをもってしても8着と、これまで多くの国内トップクラスが跳ね返されてきた。ダノンスマッシュには父ロードカナロア以来となる勝利を期待したところだが、このレースで上位争いした日本調教馬には父も含めてマイルをこなせる底力があった。G1未勝利でマイル実績もない現状、ダノンスマッシュとしては世界のレベルを肌で学び、来年以降につなげる機会としたい。
今年も多士済々のメンバーが顔をそろえた地元の香港勢だが、最大の注目馬は3歳のエセロだ。3歳といっても豪州産のため、まだ春から夏の成長段階に過ぎない。そんな若駒が前哨戦のジョッキークラブスプリントで並み居る古馬を一蹴し、早くもG1制覇に王手をかけているのだから驚きだ。豪州産の現3歳世代はキャステルヴェキオがコックスプレートでリスグラシューの2着。イエスイエスイエスはジ・エベレストを勝ち、ラヴィングギャビーは3歳牝馬として47年ぶりにマニカトステークスを制すなど、距離や性別を問わずG1レースで結果を出しており、それらにエセロが続く可能性も低くはないだろう。
ここでエセロに道を譲ると長期政権を築かれかねないだけに、古馬たちも引き下がれない。スピード豊かなエセロだが、ゲートの速さより二の脚で先行するタイプ。行き切れなかった今季初戦では3着に敗れている。まだまだ経験が浅く危うさもある。
包囲網の先頭に立つのは、今回に3連覇が懸かるミスタースタニングと安定感抜群のビートザクロックだ。前哨戦はエセロと7kgの斤量差があったが、本番では4kg差に縮まる。1kgで1馬身差という計算式によれば、ビートザクロックは逆転可能になり、ミスタースタニングも1馬身差まで近づける。ミスタースタニングは前走が故障からの復帰戦で、ひと叩きの上積みも大きいだろう。香港ジョッキークラブの公式ツイッターで「December Warrior」と紹介されるほどの勝負強さは脅威だ。
JCスプリント2着のホットキングプローンは、疝痛の手術から11か月ぶりの実戦で地力の高さを見せた。昨年は前哨戦勝ちから香港スプリントで1番人気に支持されるも結果は9着。今年は対照的に最内枠を引けた。復帰戦は好位からのレースだったが、もともとゲートは速く、エセロにとってうるさい存在となるだろう。
また、昨年の香港スプリントで2着のディービーピンも前走のJCスプリントが10か月ぶりのレース。古馬には巻き返しの余地が多く、他にもアイヴィクトリー(2017/2018シーズン最優秀スプリンター)など地元勢の実力は紙一重だけに、JCスプリントの結果だけで勝負づけが済んだと考えるのは早計だ。
検疫の制限が緩和され、豪州から3年ぶりの参戦を果たすインハータイムのレースぶりにも注目。ここで上位争いに絡むことができれば、豪州馬の今後にも影響を与えるだろう。豪州から香港への遠征を後押しする、起爆剤となるような結果に期待したい。