G1初制覇となった前走のスプリンターズSは圧巻の内容だった。ゲートを決めると先頭で飛ばずモズスーパーフレアをつかず離れず3番手でロックオン。直線の坂下で進路を締められそうになるも、こじ開けるように抜け出して坂上から一気に突き抜けた。まさに「テン良し、中良し、終い良し」の3拍子がそろった横綱相撲。しかも、スプリンターズSが暮れから秋開催に変わり、なかなか結果を出せなくなっていた3歳馬として14年ぶりの勝利という高いハードルを越えた。

実戦でのスピードはもちろん、成長のそれも驚くべきものがあるようだ。ピクシーナイトについては、三冠馬コントレイルをはじめ数々の名馬を知る福永祐一騎手が、デビュー前からG1を勝てる器と公言。スプリンターズSの直前会見では「いずれは先行させたい」「3歳秋に古馬のG1チャレンジは想定よりも早い」と控え目に評価していたが、堂々の勝利後には「想像を超える馬になる可能性が出てきた」と上方修正。名手が描いた将来像に早くも追いつき、追い越そうとしている。

父モーリスは古馬になって素質を開花させ、香港でもG1レースを3勝と抜群の実績を残した。その血を継ぐ息子が前走からの2か月で一段と強くなり、香港で飛躍しても何ら不思議はない。