超新星カーインライジングが世界デビュー、今年の開催で最注目の一戦
香港スプリントは歴史的に地元勢が遠征馬を圧倒してきたレースだが、今年は破竹の快進撃を続ける超新星カーインライジングが最大の注目株。歴史的名馬へと飛躍していきそうな凄味をまとっており、興味は勝ち方に移っている。
メインレースの香港Cに王者ロマンチックウォリアーが控えながら、今年の香港国際競走はスプリントのカーインライジングに最も熱い視線が注がれている。昨年の香港スプリントの1週前にデビューし、4戦目から前走まで重賞3勝を含む7連勝で駆け上がってきた。前走のジョッキークラブスプリントは見せムチだけで抜け出すと最後の100mを流し、それでいながら名馬セイクリッドキングダムのレコードを17年ぶりに更新する鮮烈な内容。今回は外目の11番枠だが、前走も10番枠で圧勝しており、好位差しの安定した取り口からもアクシデント以外に負ける要素は考えにくい。
カーインライジングを負かし得るとすれば、昨季の香港最優秀スプリンターに輝いたカリフォルニアスパングルとなろう。この2頭だけがレーティング120超えで他馬を離している。今季の2戦はカーインライジングに連敗だが、初戦は7ポンド(約3.2kg)重いハンデを負担。前走のJCスプリントも別定戦で5ポンド(約2.3kg)の斤量差があったうえ、行きっぷり本来のものではなかった。同斤で戦える今回に真価を問いたい。
カーインライジングとカリフォルニアスパングルの強力2騎が先行を型としているだけに、残りは日本の3頭も含めて横一線。レーティングよりも展開に左右される面が大きいかもしれない。それを利するとすれば後方からの末脚勝負型で、カーインライジングが勝ち、カリフォルニアスパングルも3着に逃げ粘った10月のプレミアボウルでは4角10番手以降の2頭が台頭。ヘリオスエクスプレスが2着に割って入り、ラッキーウィズユーはカリフォルニアスパングルと0秒01差の5着に追い込んだ。
また、カリフォルニアスパングルが行き切れなかったJCスプリントも、2着は4角10番手のハウディープイズユアラブで、0秒01差の3着にヘリオスエクスプレスが続いた。これらの3頭は今回のメンバーでレーティング11位以下でしかないが、両レースで上位入線のヘリオスエクスプレスは昨季の4歳三冠シリーズで二冠制覇と実力は確か。今季から短距離路線に専念しており、まだまだ伸びしろもあるはずで侮れない。
4月のチェアマンズスプリントプライズを制したインビンシブルセージはプレミアボウル(10着)、JCスプリント(5着)と結果を出せていないが、G1勝ちの実績で重い斤量の影響もあったはず。中団からの差しを型としていることから、底力を問われる相手関係になって巻き返しもあるだろう。一方、高松宮記念とスプリンターズSで来日したヴィクターザウィナーは、G1勝ちのセンテナリースプリントCが少々恵まれた形の逃げ切り。2強の力勝負に巻き込まれそうな今回は厳しいかもしれない。
日本の3頭は2強に割って入ることが当面の目標となるだろう。勝ちパターンは好位差しのルガルとサトノレーヴ、差しのトウシンマカオという塩梅で、カーインライジングとカリフォルニアスパングルが並び立つ結果になるのなら、トウシンマカオに最もチャンスがあるか。ルガルはスプリンターズSの積極的なレース運びが2強に通用するようなら国内で天下も開ける。サトノレーヴはスプリンターズSが案外だったが、北海道での好走からもシャティン競馬場の芝は合いそう。このレースを勝った日本馬はロードカナロアの系統だけという血統にも希望がある。
日本以外の海外勢は英国のスターラスト、豪州のリコメンデイションだが、どちらも実績的には1000m向きの印象。ただ、スターラストは前走のBCターフスプリント(1000m)で最後方に置かれるような格好から追い込みを決めている。欧州馬にしてはコーナリングが上手く、1200mで追走が楽になる可能性もあるだけに軽視はできない。
(渡部浩明)