香港ヴァーズ 2024/12/8(日) 15:10発走 シャティン競馬場

見どころPREVIEW

海外のブックメーカーが上位人気に推しているステレンボッシュ。(Photo by Shuhei Okada)

日本と欧州が争ってきた構図に豪州から強豪参入、上位拮抗で優勝争いは混沌

近年は日本勢と欧州勢の争いとなっていた香港ヴァーズだが、今年は豪州からかつてないレベルの強豪が参戦。レーティング上位3頭からゴリアットとファンタスティックムーンが回避したことによって実力伯仲の関係となり、ゴールまで息を抜けない攻防を楽しめそうだ。

豪州のウィズアウトアファイトは昨年のコーフィールドCとメルボルンCを連勝(カップス・ダブル)したが、これは140年余りで12頭目という歴史的快挙。日本の牡馬クラシック三冠馬(約80年で8頭)よりも希少な記録のうえ、両レースで上から2番目に重いハンデだった点でも価値は高い。その後に脚部不安で丸1年を棒に振ったものの、復帰戦の前走はコックスプレートを圧勝したヴィアシスティーナの3着に激走。叩き2戦目で距離延長の今回は条件が悪かろうはずもなく、いかなる走りを見せてくれるか楽しみだ。

海外のブックメーカーでウィズアウトアファイトと1番人気を争っているのが日本のステレンボッシュ。レーティング114はウィズアウトアファイトより7ポンド低いが、レースでの斤量差(9ポンド)を差し引くと逆転して有利な関係になる。ただ、2400mの距離はやや長い印象。データ的に大外の枠順も痛い。かつての香港リーディングで、サトノクラウン(2016年)とグローリーヴェイズ(2019、2021年)を勝利に導いたJ.モレイラ騎手の手腕が頼みになる。

プラダリアはレーティングでウィズアウトアファイトに5ポンド離されているものの、欧州勢に大きく劣っている訳ではない。時計に限界があるタイプのようで、前走の京都大賞典は高速決着で連覇を逃したが、重馬場の宝塚記念ではゴール前まで大きな見せ場を作った。香港ヴァーズは2019年の2分24秒77(グローリーヴェイズ)以降、早くても2分27秒台で決着しており、この水準であれば出番があっても不思議はない。

昨年のコーフィールドCとメルボルンCを連勝したウィズアウトアファイト。(Photo by Getty Images)

欧州勢はプラダリアと同じレーティング116のマルキザから上へイレジン(117)、ドバイオナー(118)、ルクセンブルクとジアヴェロット(119)が密集。今季は不振のコンティニュアス(112)を除き、実績や今シーズンの戦績からも数字通りに甲乙つけがたい。

ルクセンブルクは昨年の香港Cでロマンチックウォリアーを短アタマ差に追い詰めてシャティン競馬場の適性は実証済み。ドバイオナーにもシャティン競馬場で3戦の経験があり、昨年のクイーンエリザベス2世Cはプログノーシスに1/2馬身差(3着)でゴールしている。両馬とも今年は2400mでG1勝ちしており、実力発揮なら優勝争いが十分に可能だ。

イレジンにもG1勝ちの実績があるが、サンクルー大賞でドバイオナーの後塵を拝すなど昨年までの堅実性が薄れてきた。前走の英チャンピオンS(4着)はラチ沿いの最短距離で直線の混乱を避けられた運にも恵まれており、7歳終盤の年齢的に盛り返せるか。コンティニュアスはフォワ賞でイレジンに完敗とさらに苦しそう。近走は道悪や先行など不本意なレースが続いているのも事実で、良馬場を期待できる今回は差し脚を生かすハーツクライ産駒らしいレースを見たいところだが。

ジアヴェロットとマルキザには前記4頭のようなG1勝ちの実績はないが、ジアヴェロットはG2を2勝するなど今年の安定感では一番。2022年の英セントレジャーで3着(繰り上がり)、前走の愛セントレジャーでは欧州長距離戦線の絶対王者キプリオスの3着に食い下がるなど、G1未勝利ながら目途も立てている。マルキザはG1どころか重賞勝ちもない一方、通算8戦のうち重賞4戦を含む7戦で3着以内の堅実型。良馬場のレース経験がなくシャティン競馬場の適性は未知数だが、その分だけ一変の可能性も秘めている。

4頭で迎え撃つ地元の香港勢は、ファイブジーパッチとラシティブランシュが上位格だが、8頭で争われた昨年は6着と7着に完敗。5月のチャンピオンズ&チャターCでは2着と3着も、外国からの遠征馬は優勝したレベルスロマンスの1頭だけで、日本と欧州からの相手が増える今回は苦戦を免れそうにない。

(渡部浩明)