プリンスオブウェールズステークス

2022/6/15(水) 23:40発走 アスコット競馬場

見どころPREVIEW

日本調教馬初の快挙を目指すシャフリヤール。(Photo by Getty Images)

少頭数ながら曲者ぞろい、シャフリヤールは歴史に名を刻めるか

3月のドバイシーマクラシックで日本ダービー以来の白星を挙げ、復権を果たしたシャフリヤールが、英国競馬の花形・ロイヤルアスコット開催で覇権拡大を狙う。標的のプリンスオブウェールズSに挑んだ日本調教馬は過去に3頭。いずれも6着に敗れており、優勝すればレースはもちろん、5日間の開催を通じて日本調教馬初の快挙となる。

シャフリヤールにとっての最初の関門はアスコット競馬場の舞台設定だ。ゲートから向正面のコース最低地点(スウィンリーボトム)まで300m余り坂を下り、その後はゴール地点まで断続的に約22.25mも坂を上る。外枠は前に壁を作りづらく、位置を取りに行けば下り坂で制御不能に陥るリスクがあるため不利。スピードよりもパワーとスタミナ、人馬のコミュニケーション力が問われる難コースとして知られている。

概してゲートが速い日本調教馬にとって序盤の入り方がカギとなるが、過去に挑戦したスピルバーグ(2015年)、エイシンヒカリ(2016年)、ディアドラ(2019年)のG1勝ち鞍は2000mが最長だったのに対し、シャフリヤールは2400m級の日本ダービーとドバイシーマクラシック(SC)を勝っている点が異なる。スタミナの裏づけがあるのは心強い。

さらには、シャフリヤールがドバイSCで封じた欧州勢も帰国して結果を出している。2着のユビアーは追い込みの脚質もあり英米で取りこぼしを続けているが、パイルドライヴァー(4着)とフクム(7着)は英G1コロネーションCでワンツー、アレンカー(6着)は愛G1タタソールズゴールドCに勝利。シャフリヤールが英国でも通用する目算は立つ。

計算できないのは移ろいやすい空模様だろう。英国の6月は最も天気が安定する時期だが、馬場状態に影響を与えるほどのにわか雨もめずらしくない。シャフリヤールは不良馬場の神戸新聞杯でキャリア唯一の着外に敗れている。英国の道悪は日本の比ではなく、可能な限り馬場が乾いていることが勝利への条件となる。

一昨年のプリンスオブウェールズSを圧勝したロードノース。(Photo by Getty Images)

気になる相手関係だが、まずは実績最右翼のロードノースが怖い存在。一昨年のプリンスオブウェールズS圧勝でコース適性に疑いの余地はなく、昨年と今年のドバイターフでは日本調教馬とも互角以上に渡り合っている。鞍上のL.デットーリ騎手はドバイSCでパイルドライヴァーに騎乗し、シャフリヤールの背後から脚を余す形で敗れたが、その一戦で脚を測れた面もあるだろう。同年のドバイターフとドバイSC優勝馬の対決という意味でも興味深い。

実績なら米・豪・仏でG1レース3勝のステートオブレストも十分。今年は初戦のガネー賞を制して好スタートを切った。前走はタタソールズGCで3着に敗れたものの、マークしたロードノースが中団で動くに動けない位置に入り、釣られて仕掛け遅れた格好。それでもしぶとく追撃してロードノースには先着した。アスコット競馬場には初参戦となるため、コース実績のあるロードノースに一目置くとしても、互角以上に評価することも可能だ。

これらの実績馬を抑え、現地ブックメーカーで前売り1番人気に推されているのが上がり馬のベイブリッジ。前走のG3ブリガディアジェラードSで重賞初制覇を飾ったばかりだが、重賞連勝中だったモスターダフやG1ホースのアデイブらの実力馬たちを5馬身ちぎり捨て、昨年から5連勝で頭角を現してきた。ブリガディアジェラードSでの重賞初制覇からプリンスオブウェールズSという臨戦は一昨年のロードノースと同じで連勝も可能。管理するM.スタウト調教師は英ダービーをデザートクラウンで制すなどチームの勢いも一番だ。

紅一点のグランドグローリーは7万ポンド(約1160万円)もの追加登録料を投じての参戦。3着以上の賞金を得なければ持ち出しになるだけに、勝負度合いの高さは言うまでもない。昨年のジャパンCでは未体験の高速馬場に対応し、シャフリヤールとは1馬身半差の5着。その後に引退の予定も新たなオーナーの下で現役続行が決まり、今季はリステッドとG3を連勝して格の違いを見せつけている。ジャパンCで堅い馬場に対応したが、少しでも時計を要す馬場や距離短縮は好都合。シャフリヤールと勝負づけは済んでいない。

(渡部浩明)