プロフィール

スポーツや芸能の世界には、突然、すい星の如く現れて一時代を築くスターが存在する。アロゲートはまさにそうした輝きを放った1頭で、わずかな時間の中に強烈な記憶を刻みつけた名馬だ。

幼い日のアロゲートは恵まれた体格の一方で線が細く、デビュー戦は3歳の4月17日と出遅れた。ケンタッキーダービーには間に合わず、初勝利を挙げたのもベルモントステークスから1週前の2戦目。クラシック三冠戦とは無縁だった。

しかし、そこから3連勝で軌道に乗り、G1トラヴァーズステークスで重賞初挑戦を迎えた。“真夏のダービー”の異名を取る注目の一番にはKYダービー馬ナイキストこそ不在だったものの、プリークネスステークスの勝ち馬エグザジャレイター、ベルモントステークスの覇者クリエイターが参戦。例年通り3歳世代の強豪が顔をそろえ、条件戦上がりのアロゲートは8番人気に過ぎなかったが、ここで衝撃的なパフォーマンスを披露する。

最内枠から逃げたアロゲートは、後続にプレッシャーを受け続ける厳しい道中になったが、先頭キープから直線に入ると逆に突き放して独走。2着に13馬身半、2頭のクラシックホースには20馬身余りの差をつけ、トラックレコードも37年ぶりに更新するセンセーショナルな勝利を飾った。アロゲートは続くブリーダーズカップクラシックで2歳上の年度代表馬カリフォルニアクロームとの頂上決戦にも勝利。この年のワールドベストレースホースランキング首位、エクリプス賞最優秀3歳牡馬に選ばれた。

アロゲートは次走の4歳初戦で新設のペガサスワールドカップも快勝。そして、続くドバイワールドカップでは自身の競走生活を象徴するような勝利を手にする。アロゲートはスタート直後の不利で先頭から15馬身余りの最後方と出遅れるも、1頭だけ別のレースを走っているかのように絶望的な状況を克服し、直線半ばで勝利を決める独壇場。世界最高レベルの高額賞金レースを次々と制し、デビューからほぼ1年で歴代最高の賞金獲得ホース（当時）となった。

しかし、炎のような走りで燃え尽きてしまったのか、4か月後の米帰国初戦は単勝1.05倍の圧倒的な支持を受けながら直線早々に力尽きると、引退戦に選んだBCクラシックでも5着に終わり3連敗。1歳上の三冠馬アメリカンファラオも育て上げたB.バファート調教師をして「これまで見た中で最も偉大な馬」と言わしめた輝きを取り戻すことはなかった。