取材:インターナショナルスポーツマーケティング
写真:倉元 一浩
今年はサトノダイヤモンド(牡4歳)、サトノノブレス(牡7歳)の2頭が、日本馬初制覇を目指して凱旋門賞(10月1日、シャンティイ競馬場)に挑戦する。『JRA-VAN Ver.World』では凱旋門賞特別インタビュー第2弾として、サトノダイヤモンドに騎乗するクリストフ・ルメール騎手に凱旋門賞に向けて意気込みを語ってもらった。(取材日:2017年8月25日)
いよいよサトノダイヤモンドで挑むフォワ賞、凱旋門賞が迫ってきましたが、意気込みを教えてください。
「今年の夏に札幌で騎乗できたことは、僕にとって良いタイミングだったと思います。とてもリラックスできていますし、秋のシーズンに向けてコンディションも良いですから。フランスに向けて良い準備ができていますね」
ルメール騎手にとって印象に残る過去の凱旋門賞は?
「まずはオリビエ・ペリエ騎手のパントレセレブル(1997年)ですね。自分の乗ったレースでは、プライド(2006年)はこれまでの僕のベストパフォーマンスでした。凱旋門賞で2着というのはすごいことですが、レース後は嬉しい気持ちの反面、勝てなくてとてもがっかりした思い出があります」
ルメール騎手はフランスでダービー、オークスなど数々のG1を手にしていますが、凱旋門賞はまだ勝利がありませんね。
「そうですね、悲しいことに(笑)。例えばメルボルンカップは初騎乗で勝ちましたし、香港カップも同じく初騎乗で勝つことができました。あるレースはいきなり勝利することもあり、あるレースは15年経っても勝てないこともあります。それがなぜかを説明することは難しいですね。僕はフランス人ですから、凱旋門賞が最も勝ちたいレースなのは間違いありません」
シャンティイ競馬場を攻略する上で重要なことは何でしょうか?
「シャンティイはそれほど乗り難しいコースではありませんが、いくつか戦略的なポイントがあります。僕にとっても勝手知ったるコースなので、どこで動くべきなのか、どこで我慢すべきなのかは頭の中に入っていますし、大きな問題はありません。枠の有利不利は、馬場状態によりますね。速い馬場なら内枠が良いと思いますし、対照的に重い馬場なら外枠の方が少し有利かもしれません。一つ挙げるとすれば、凱旋門賞のレース当日は中の柵が外されますから、内の芝状態がとても良いのは事実ですね」
凱旋門賞で気になるライバルは?
「当然ながらエネイブルはとても印象深いですね。英オークス、愛オークス、キングジョージ(6世&クイーンエリザベスステークス)などG1を何度も勝っていますし、彼女が今年最も強い馬だと思います。それ以外の馬については、どの馬にも平等にチャンスがあると思ってます」
ルメール騎手から見ても、エネイブルが少し抜けている印象でしょうか?
「現時点ではそうですね。ただご存知の通り、凱旋門賞は欧州シーズンの最終盤に行われます。馬のコンディションがとても重要で、本命視された馬が常に勝っているわけではないですよね。よりフレッシュでベストな状態で臨んだ馬が勝利を手にできる。エネイブルは多くのビッグレースを使ってきていますから、もしかしたら凱旋門賞では少し疲れが残っているかもしれない。でも、管理するJ.ゴスデン調教師は非常に優れたトレーナーですから、上手くコンディションをキープするでしょう」
凱旋門賞において騎手、調教師など要注意人物は?
「やはり騎手と調教師のコンビですね。L.デットーリ騎手とJ.ゴスデン調教師、R.ムーア騎手とA.オブライエン調教師、C.スミヨン騎手とJC.ルジェ調教師。トップジョッキーとトップトレーナーのコンビは強い。デットーリ騎手は4回、ムーア騎手とスミヨン騎手もそれぞれ2回優勝しているわけですから」
サトノダイヤモンドはブックメーカーで上位人気に推されていますね。
「フランス勢ではアルマンゾル(2016年度欧州最優秀3歳牡馬)が引退したし、上位人気であることに全く驚きはないですね。サトノダイヤモンドは日本で最も強い馬の一頭です。日本馬のレベルの高さは周知の事実で、しかも2400m以上のG1を2勝(有馬記念、菊花賞)している。欧州の競馬関係者も日本馬には大きなリスペクトを持っていて、凱旋門賞に出走する日本馬が強いことは誰もが知っています」
日本馬初の凱旋門賞制覇の可能性も大いにあると?
「もちろんですよ!それは僕が日本にいる理由でもあるからね。4歳なので(斤量的に)少しタフにはなるけど、サトノダイヤモンドにはそれだけの能力があると思う。とても落ち着いているし、凱旋門賞のようなビッグレースで勝つために必要なものは全て持っていると思うよ」
日本馬はいまだ凱旋門賞を勝利していませんが、最も大きな要因はどうお考えですか?
「馬のコンディション次第だと思います。日本からフランスへの遠征は、馬にとっても大きな環境面での変化があるし、100%のコンディションを保つのはとても難しい。凱旋門賞は100%のコンディションじゃないと勝てないレースです。残念ながらディープインパクトはそうだったと思うし、逆にエルコンドルパサーは良いコンディションで臨めたから2着に来たと思う。モンジュー(1着)が相手だったのは不運でしたが。僕自身は2着でも素晴らしい成績だと思うし、日本馬はしばしば勝利に近いところまできている。このレベルのレースになると、馬のコンディションが大きなキーになることは間違いないですね」