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エネイブルの3連覇か日本馬の初制覇か、歴史的偉業を待つ凱旋門賞
エネイブルの3連覇なるかに注目が集まる凱旋門賞が日本時間6日夜に迫った。史上空前の快挙達成を待ちわびる空気の中で、日本から参戦するG1ホース3頭も、勝てば新たな時代を開くことになる。どちらにせよ、歴史的偉業の目撃者となれそうな今年の凱旋門賞には胸躍るばかりだ。
そのエネイブルは今年のG1レース3連勝を含め、2017年5月から2年余り負けなしの12連勝中。これまでの好位差しの勝ちパターンから、キングジョージ6世&クイーンエリザベス2世ステークスでは追い込みに近い形で差し切った。壮絶な叩き合いの末に相手をねじ伏せる勝負強さも示し、この大一番に向けてもはや隙は見当たらない。歴史的偉業を成し遂げる可能性は相当高いように思える。
とはいえ、同一G1レースの3連覇は想像以上にハードルが高いのも事実。日本では平地G1の3連覇は例がない難業だけに、エネイブルをもってしても苦戦を覚悟する必要がある。その前に立ちはだかるのはまず、A.オブライエン調教師が送り込む2頭となるだろう。
オブライエン厩舎といえば、大レースでは多頭出しで巧みなチーム戦略を操ることで知られている。凱旋門賞ではエネイブルが勝った昨年と一昨年に各5頭を立て、2016年には3頭出しで上位独占の離れ業を演じてのけた。しかし、今年はキングジョージでエネイブルと死闘と演じたクリスタルオーシャンを撃破し、あるいはエネイブルの域に達している可能性もある3歳馬ジャパン、エネイブルと再三の接戦を演じてきたマジカルの2頭のみ。両馬の実力なら特段の援護射撃がなくとも勝負になるという自信が感じられる。斤量の利があり、初対戦のジャパンはとりわけ怖い存在だ。
日本の3頭と地元のフランス勢は、エネイブルとオブライエン勢のせめぎ合いによって生じる隙を突きたい。最大12頭と頭数が落ち着いた今回は例年ほどポジションを気にする必要がなく、つかず離れずの位置から様子をうかがえそうなのは幸いだ。
日本勢では先行力のあるキセキがエネイブルの前に位置を取ることも。末脚の瞬発力も持続力もある女傑の動きに対応するのは難しく、日本馬の特徴をよく知るC.スミヨン騎手を鞍上に迎えられたのは大きい。また、ブラストワンピースとフィエールマンは、瞬発力なら前者、持続力なら後者に出番が回ってくるかもしれない。両馬とも英国調整から現地入りする新たな戦略を試している点が興味深く、是非とも成果をあげてもらいたい。
近年は外国馬に押され加減のフランス勢だが、それでも毎年のように3着圏内に食い込んでいる。今年は仏ダービー馬ソットサスが大将格。強烈な瞬発力を武器としており、展開次第で突き抜けても不思議のない魅力を秘めている。ヴァルトガイストも末脚勝負のタイプで、昨年の凱旋門賞と2走前のキングジョージではエネイブルから2馬身圏内の小差。逆転のチャンスを十分に残している。
フランス勢ではソットサスの僚馬ソフトライトが追加登録してきた。その手綱を武豊騎手が取る。勝ち鞍はデビュー戦のみで実績的に格下の馬だが、通算7戦で2着は4回と堅実。その中には前走のドーヴィル大賞などG2での2着も2回ある。2走前のパリ大賞では5着ながらジャパンと約4馬身差。ゲートが遅く後方から末脚に賭けるレースが型になっており、いかにも武騎手と手が合いそうなタイプだ。
直前になって存在感を際立たせてきたゴドルフィンのガイヤースは、エネイブルが相手でも圧勝まであるかという不気味さを漂わせている。前走のバーデン大賞で決めた大差勝ちは衝撃的で、キャリアも少なくまだつかみ所がない。逃げも打てる強力な先行力はエネイブルにとって相当に厄介。展開の鍵を握る存在となる。
また、フレンチキングは2400mばかり走って今季4戦無敗。カタールのリステッドからドイツでG2を連勝し、前走のベルリン大賞でG1初制覇と着実にステップアップしてきた。裏街道で築いた実績のように映るものの、前走はドバイシーマクラシックで日本馬3頭を退けて優勝したオールドペルシアンに完勝しており、日本のG1クラスに匹敵する実力を示している。鞍上もO.ペリエ騎手とくれば軽視はできないだろう。
馬名が長野五輪のアイスホッケー金メダルに由来するチェコのナガノゴールドも、日本の競馬ファンとしては気になる1頭。陣営の目標は5着以内と控え目だが、スタミナには自信があるようで、エネイブルをめぐり終盤にもつれる展開になれば世界を驚かせることも。