世界の名手が集い濃密な2分半に、強力な日本勢も予断許さず
平坦コースなら世界一強いとまで評価されるようになった日本調教馬だが、このドバイシーマクラシックには一線級が遠征しながらなかなか勝てていない歴史がある。近年は上位争いの常連になっているものの、鞍上を含めて今年の相手関係も濃く予断を許さない。
昨年の15頭から今年は10頭の手ごろな頭数となり、少しでも紛れが生じにくくなったのは日本勢にとって幸い。また、香港のロシアンエンペラーとセニョールトーバは日本調教馬との対戦歴があり、一連の内容から勝負づけを済ませた感もある。3頭が臨む日本勢には、やはり例年通り欧州勢がライバルとなるだろう。
昨年暮れの香港ヴァーズではセニョールトーバが逃げてフランスのボタニクが2番手、それをウインマリリンが最後方からの豪脚一閃で呑み込んだ。当時はメンドシーノがゲートから出ず、実質9頭立てだったが、頭数も近く隊列を考える上で参考になりそうだ。
ただし、香港ヴァーズと今回では相手関係が格段に強化しており、ウインマリリンのD.レーン騎手は再び後方一気の作戦を取れるか。ネオムターフCを2番手から圧勝したモスターダフの先行力は実に不気味で、愛ダービー馬ウエストオーバーも前々で勝負するタイプ。流れが落ち着いてしまうと後方からでは届かないリスクがあり、このパターンに日本勢は何度も泣かされてきた。
シャフリヤールは昨年のドバイシーマCで3番手からの積極策で勝利を収めた。それから5戦連続の騎乗でC.デムーロ騎手は今や主戦だが、枠順なども考慮しながら比較的自在に立ち回っている。また、ウインマリリンのレーン騎手も過去2戦で対照的な乗り方をしており、この2頭のポジショニングが序盤戦の見どころとなる。
末脚自慢のイクイノックスとしても、前方の力量がよく分からないだけに、あまり後ろの方になるのは避けたい。究極のキレ味勝負となった天皇賞(秋)で置き去りにしたシャフリヤールを射程圏に入れながらの追走となるか。末脚型のレベルスロマンスも近くにいるはずだが、レースを支配的に進めるのはイクイノックスで、早めに動けば有馬記念のように先行勢が苦しくなり、じっくり行けば天皇賞(秋)のように先行勢の残り目も生じるだろう。いずれも世界の名手を鞍上に配しており、その駆け引きは大いに見ものだ。
(渡部浩明)