日英の精鋭4頭、地元の雄ロマンチックウォリアーの牙城を崩せるか
新型コロナウイルスの第5波により昨年は2020年に続き地元馬のみの戦いとなったクイーンエリザベス2世Cだが、今年は日本からダノンザキッドとジェラルディーナ、プログノーシス、英国からもドバイオナーと強豪が参戦。地元勢と合わせ7頭立ての少頭数ながら、引き締まった見ごたえあるレースになりそうだ。
今年は地元の雄ロマンチックウォリアーを巡り、外国勢4頭が挑む構図。昨年末の香港Cでは日本から遠征した5頭を一蹴し、今回も対戦するダノンザキッドに4馬身半差をつける圧巻の勝利で実力を強烈にアピールした。ここもロマンチックウォリアーが勝てばエイシンプレストン(2002、2003年)以来となる2頭目の連覇、地元勢としてはヴィヴァパタカ(2007、2010年)に続く2勝目を達成する。
ただ、香港C後の2戦はスチュワーズCと香港ゴールドCでゴールデンシックスティに連敗と躓いた。歴史的マイラーに対し、1600mのスチュワーズCで敗れるのは仕方ないにせよ、香港GCは自分の土俵である2000mでの敗戦。香港Cとの比較では馬場状態やペース、道中の位置取りなどを総合的に判断して大きな違いを感じさせないが、香港GCでは残り600mから一気に動いて最後に失速と仕掛けが早すぎた感がある。その点で、今回は香港Cを圧勝に導いたJ.マクドナルド騎手を再び起用しているのが大きい。今月8日の豪クイーンエリザベスSではアナモーの主戦としてドバイオナーと対戦。ダノンザキッドを含め、当面のライバルたちの力量も把握している。
ダノンザキッドは香港Cでの4馬身半差を如何に詰め、逆転するかがテーマだが、陣営によると初遠征の前回は検疫の際に食欲が落ちたとのこと。帰国後の中山記念ではゲート再審査の制裁を受け、予定していたドバイ遠征を断念せざるを得なくなるなど、まだ気難しい面を残しているものの、大阪杯で僅差の3着に巻き返したようにやはり力はある。今回は食欲も落ちなかったようで、香港C以上のパフォーマンスも期待できるだろう。
ジェラルディーナの海外デビューにも注目が集まる。父モーリスは同舞台の香港C勝ちなどシャティン競馬場で3勝の厚い実績があり、母ジェンティルドンナもドバイシーマクラシック制覇と海外で結果を残した。素養は十分すぎるほどで、国内でG1勝ちがある格もダノンザキッドに負けていない。前走の大阪杯は懸念されていた最内枠に先行有利の展開も重なっての6着。エリザベス女王杯で道悪を問題にしなかったように、日本より力のいる香港の馬場も合いそうで、少頭数の今回なら末脚を遺憾なく発揮できるはずだ。
プログノーシスは初G1でチャレンジャーの立場だが、5歳にして通算8戦しかしていないうえ、着外も前々走の中日新聞杯のみとまだ底を見せていない魅力がある。その中日新聞杯も五分の発馬から17番手まで下げてしまい、直線では大外から猛然と追い上げて1馬身差もない4着という内容。前走の金鯱賞では逃げ馬が2着に粘り込む展開を4角9番手から鮮やかに差し切った。末脚の破壊力は今回の日本勢で最強と感じさせる物があり、香港リーディングのZ.パートン騎手を鞍上に迎えるのも頼もしい。
豪州でG1を連勝してきたドバイオナーは2021年の香港Cで4着の舞台実績がある。当時はラヴズオンリーユーから1馬身1/4差しかなく、5歳春で完成の域に達した現在なら日本の一線級と互角の評価が必要だろう。それは前走のクイーンエリザベスSで日本のユニコーンライオンにつけた3.73馬身(3馬身3/4)差からも裏づけられる。天気予報によると週末の香港はわずかながら雨が降るようで、少しでも水分が残るならなお好都合だ。
マネーキャッチャーは香港GCに続き逃げられそうな組み合わせ。当時は早めに来られる厳しい展開ながら、ロマンチックウォリアーから1馬身少々の3着に粘り込んだ。暮れの香港Cではダノンザキッドに3/4馬身差の3着でもあり、各馬の出方ひとつで勝機もあるか。トゥールビヨンダイヤモンドは昨年のクイーンエリザベス2世Cで2着だが、それを含めてロマンチックウォリアーに4連敗中。マネーキャッチャーにも3連敗中で大勢を覆すまでは難しいかもしれない。
(渡部浩明)