香港ヴァーズ

Hong Kong Vase

2016/12/11(日)15時00分発走 ※発走日時は日本時間

シャティン競馬場

  

【香港ヴァーズ】栗山求氏による血統傾向と有力馬分析!

2016年12月05日 23:44

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 地元香港勢はマイル以下で抜群の強さ発揮するものの、長丁場の2400mは得意とはいえず、外国馬、とくにヨーロッパ勢に蹂躙されている。日本馬は開催時期がかぶるジャパンカップに有力馬が出走するため、このレースはどうしてもメンバーが手薄になり、過去10年間に連対を果たしたのは12年の2着馬ジャガーメイルしかいない。13年以降の3年間に連対を果たした延べ6頭は、すべてヨーロッパで生産された馬で、なおかつ父または母の父の系統がダンジグ、という著しい特徴がある。なおかつ、そのうちの4頭は父または母の父の系統がサドラーズウェルズだった。

 要するに、ダンジグとサドラーズウェルズの系統を併せ持つヨーロッパ生産馬を狙えば高確率で馬券にからむということ。今年の出走馬のなかでその条件を満たす馬は「ガリレオ×デインヒル」のハイランドリールしかいない。父ガリレオは英愛リーディングサイアー7連覇(計8回目)が確定的となっている大種牡馬。代表産駒のフランケルはヨーロッパ史上最強の1頭で、今年の凱旋門賞の上位3頭がガリレオ産駒によって占められたことは記憶に新しい。ハイランドリールは昨年のこのレースの優勝馬なのでコース適性は申し分ない。今年は7月のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSと、11月のブリーダーズカップターフを制した。前者はポストポンドが病気により回避したためメンバーが手薄で、後者はへファナン騎手の絶妙のロングスパートがハマった感もあるが、堅い馬場と遠征競馬を得意としているので、ここで崩れるシーンは想像しづらい。

 ビッグオレンジはデインヒル系のデュークオブマーマレードを父に持ち、母の父ファスリエフはヌレイエフ(サドラーズウェルズの4分の3同血)の息子なので配合構成は合格点を与えられる。今シーズンはプリンスオブウェールズSとグッドウッドカップを勝っているが、まだ一度もG1を勝っていないようにハイランドリールとは競走馬の格という点で開きがある。2着候補の1頭ではあるだろう。

 ワンフットインヘヴンはビッグオレンジと同じく「デインヒル系×ヌレイエフ系」。相手が弱かったとはいえコンセイユドパリ賞を勝って昇り調子で臨めるのはいい。父ファストネットロックはオーストラリア産馬ながらデインヒル系の世界的な名種牡馬として君臨し、ヨーロッパやオーストラリアだけでなく日本でも優れた産駒を出している。母プライドは英チャンピオンS、サンクルー大賞、香港カップと3つのG1を制した名牝で、ディープインパクトが出走した凱旋門賞(3位入線)で2着となった馬でもある。母の父パントレセレブルは12年の勝ち馬レッドカドーの母の父でもある。血統的に晩成型だと思われるのでこれからじわじわ強くなりそうだ。ここで好走する可能性も十分考えられる。

 日本のヌーヴォレコルトはアメリカから転戦して臨む。前走のレッドカーペットHは見事な勝利だったが、日本からの輸送とアメリカからの輸送では大きな違いがある。旅慣れた馬であるといっても疲れが残っているのではないかとの懸念がある。昨年暮れは芝2000mの香港カップでエイシンヒカリの2着となっており、コース適性に問題はない。父ハーツクライは長めの距離を得意とし、自身もオークスを勝っているので距離の心配もない。体調面に問題がなければ勝ち負けだろう。

 スマートレイアーは3歳秋に秋華賞2着という成績があるが、2200mのエリザベス女王杯では10、5着ともうひとつの成績。勝った3つの重賞は1400~1600mなので、中距離ベストのディープインパクト産駒のなかではマイラー寄りといえる。ゆったりとしたペースで流れに乗れれば距離を克服できると思われるが、ハイペースの消耗戦になってしまうと厳しいかもしれない。