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ウインブライトは有終の美を飾れるか。(Photo by Kazuhiro Kuramoto)

名牝マジカル vs 日本勢、香港カップは4頭の首位争いか

選出11頭から3頭が出走を取り止め、昨年同様に8頭立て(9日時点)で行われることになった香港カップ。ならば、ディフェンディングチャンピオンのウインブライトが中心を担うところだが、その座を脅かす強豪が欧州から名乗りを挙げてきた。

ウインブライトも優勝候補の1頭であることは確かだが、今年は欧州でG1レース7勝の名牝マジカルが参戦。あのエネイブルやガイヤースと鎬を削り、ディアドラやフィエールマンなど、欧州に遠征した日本のG1ホース4頭にはいずれも先着と、実力の裏づけも十二分の強豪だ。昨年の香港Cでウインブライトを短アタマ差まで追い詰めたマジックワンドとは、A.オブライエン厩舎で同期の僚友という関係だが、同じレースに出走する際はマジックワンドがペースメーカーを務めるなど明確な序列があった。1クラス上の能力に加えて豊富な遠征経験、大崩れのない堅実性を備えており、マジカルをめぐる争いになると見てまず間違いない。

この世界的名牝の対抗勢力となるのが日本の3頭だ。ウインブライトは香港Cとクイーンエリザベス2世CでG1を2勝と、シャティン競馬場の2000mでは地元馬を差し置いて実績ナンバーワン。所有クラブの公式サイトには引退レースと明記されており、畠山吉宏調教師は「お釣りも残さない究極の仕上げを意識」、松岡正海騎手も「最後は一緒に大きな花を咲かせたい」と意気込んでいる。大物撃破での有終の美に期待したい。

日本勢のライバルとなるマジカル。(Photo by Press Association)

また、ダノンプレミアムは1年半余り勝利から遠ざかっているものの、天皇賞(秋)ではウインブライトに2年連続で先着。レーティング119の同格扱いでチャンスはある。4月の豪州遠征で海外も経験済み。当時は不良馬場でアデイブに3馬身少々離されたが、アデイブとの比較ではマジカルも2走前の英チャンピオンS(重馬場)で3馬身近く遅れた。良馬場ならダノンプレミアムの方が巻き返しの余地は大きそうだ。

ノームコアはマジカルと同世代の牝馬ながらレーティングが7ポンドも離されている。ただ、そもそも2000mを超えるG1は今年と2年前のエリザベス女王杯しか経験がなく、レーティングは参考にならない。昨年の香港マイル、今年の安田記念と、1600mで超一流と差のないレースを繰り返したことからも底力は足りている。予定していたC.スミヨン騎手から直前でZ.パートン騎手へ乗り替わりとなったが、どちらもテン乗りなら香港で3季連続リーディングのパートン騎手に分があり、災い転じて福となすことも。

日本勢にとっては、もう1頭の欧州馬スカレティも侮れない存在。前走でマジカルに先着するなど能力は非常に高い。ただし、芝の実績が道悪馬場に偏っており、スピードへの対応力は未知数。前走がG1初挑戦で、欧州を出るのも今回が初めてと課題は少なくない。地元の香港勢はフローレとタイムワープが筆頭格だが、昨年はウインブライトに完敗だった。相手関係が一段と強化した今年も苦しい戦いになりそうだ。

(渡部浩明)