香港カップ

2021/12/12(日) 17:35発走 シャティン競馬場

見どころPREVIEW

香港Cが引退レースとなるラヴズオンリーユー。(Photo by Getty Images)

ラヴズオンリーユーが有終の美へ、立ちはだかるのも日本勢

直近2年は8頭立てで行われ、いささか淋しいメンバー構成だった香港カップだが、今年は地元・香港の6頭に日本と欧州から各3頭が参戦して12頭立てと充実。その中で主役を張るのが引退レースを迎えるラヴズオンリーユーで、優勝争いを含めて見どころの多い一戦となった。

ラヴズオンリーユーは4月のクイーンエリザベス2世Cを勝っており、すでにシャティン競馬場の2000mで舞台経験がある。海外遠征は過去3戦で2勝、3着1回と成績も安定しており、実績からは不安らしい不安は見当たらない。あとは状態面だろう。環境の変化に強いことは証明済みだが、転戦を重ねて今年6戦目になる。8月の札幌記念以降では3戦目とレース間隔は十分に開いているものの、コンスタントに活躍してきたシーズン終盤は何かと疲労も蓄積しているもの。実力を発揮できる体調でさえあれば、有終の美を飾る期待は大きい。

ラヴズオンリーユーの前に立ちはだかるのは、まずは日本のレイパパレとヒシイグアス。レイパパレはラヴズオンリーユーと同じレーティング118で、数字上は勝ち切れるだけの実力を評価されている。今回のメンバーでは地元のカーインスターかレイパパレが逃げそうだが、カーインスターは前哨戦で発馬に失敗して超スローペースに泣いた。元はマイル戦線で先行していたため、今回は主張してくる可能性もある。ただ、ここまで2000mに実績はなく、レイパパレは与しやすい相手かもしれない。その一方、レイパパレが体調不十分などで追走に苦しむと、カーインスターに楽な展開となることもあるだろう。

ラヴズオンリーユーの前に立ちはだかるレイパパレ。(Photo by Shuhei Okada)

ヒシイグアスはG1未勝利で両牝馬に格は劣るものの、まだ底を見せていない魅力がある。前走の天皇賞(秋)は復調途上の中で5着に善戦しており、その一戦で状態が上向けばG1初制覇のチャンスもありそうだ。堀宣行調教師は香港国際競走で通算3勝をマークしているが、これは外国人調教師としてS.ビン・スルール調教師に1勝差の歴代2位。シャティン競馬場を熟知しており、香港マイルのサリオスともども虎視眈々といったところだろう。

日本勢の相手としては欧州勢が手強い印象だ。いずれも今年の欧州競馬を席巻したハイレベルの3歳世代で伸び盛り。終わってみればまた3歳馬という結果も考えられる。ドバイオナーはG1未勝利ながら、前走の英チャンピオンS(2着)でレーティング121を獲得。レースでの斤量差を差し引いてもラヴズオンリーユーとレイパパレを2ポンド上回り、今年の香港Cで最高の評価を受けている。英国では堅良発表の馬場でも勝っているが、当時の時計は平凡。2着に負かした相手とは前走で再戦し、稍重の発表以上に重い馬場状態で大きく着差を広げた。良馬場より重馬場向きの可能性を否定できず、シャティン競馬場の適性次第で結果が大きく変わることも。

愛2000ギニー馬のマックスウィニーは英チャンピオンSでドバイオナーの後塵を拝す3着。ただ、直線でドバイオナーと接触し、大きく進路を変えるロスがあった。当時の1馬身半ほど実力差はないものと考えられる。良馬場に実績はないものの先行するスピードはあり、レイパパレとの兼ね合いは気になるところだ。もう1頭のボリショイバレエは英ダービーで1番人気に推されたほどの素質馬。結果は7着で、その後は尻すぼみの印象を受けるが、ベルモントダービー勝ちやBCターフ6着などアメリカの平坦コースには対応できている。シャティン競馬場にも適性がありそうで、欧州3頭で最先着しても不思議はない。

近年の香港勢は日本勢の影に隠れ、今回もチャンスは少なそうだが、前述のカーインスターの他に、末脚堅実なパンフィールドは展開がもつれれば上位争い可能か。前と後ろからの二正面作戦で外国勢に対抗する。

(渡部浩明)