香港スプリント

2021/12/12(日) 15:40発走 シャティン競馬場

見どころPREVIEW

スプリンターズSの覇者ピクシーナイト。(Photo by Shuhei Okada)

日本勢は史上最高の布陣、しかし歴史的に予断許さず

前年の香港スプリントの覇者で春の高松宮記念も制しているダノンスマッシュ、秋のスプリンターズSを3歳馬として14年ぶりに勝ったピクシーナイト、そして高松宮記念とスプリンターズSの双方で2着のレシステンシアの3頭が遠征。今年の香港スプリントに遠征する日本調教馬は間違いなく過去最高の布陣といえ、通算4勝目への期待が高まる。

ただし、日本での実績がそのまま通用しないことはレースの歴史に表れている。5年前の2016年には高松宮記念のビッグアーサー、スプリンターズSのレッドファルクスと2頭の勝者が挑むも、そろって10着以下に大敗。ダノンスマッシュには昨年の実績があるものの、今春のチェアマンズスプリントプライズでは同じような相手関係で4馬身差の6着に完敗した。

現状の香港短距離戦線はエースが不在で、レースのたびに勝ち馬が入れ替わるような群雄割拠の状況。昨年の香港スプリントで2着から5着までの地元勢は、香港における馬券発売で2着馬から順に単勝84倍、23倍、42倍、144倍(ダノンスマッシュは22倍)という評価。連勝式馬券は軒並み史上最高配当の大波乱だった。そうした相手に結果を出したダノンスマッシュを基準にすると、実力馬ぞろいの日本勢とて予断は許さない。

香港スプリント連覇を狙うダノンスマッシュ。(Photo by Getty Images)

香港勢でG1勝ちがあるのはホットキングプローンとウェリントンの2頭。前者は1月のセンテナリースプリントC、後者は4月のチェアマンズSPでダノンスマッシュらを破ったものだ。ホットキングプローンは昨年の香港スプリントで日本、地元の双方で1番人気に推されていたほどの実績馬だが、スムーズにレースをできないと頼りない面があり、今回はR.ムーア騎手を鞍上に迎えて新味を出せるか。今季初戦の前走8着は直線で不利があり度外視できる。一方、ウェリントンはホットキングプローンより2歳若い5歳で、重賞実績はチェアマンズSPの1勝のみも上がり目を望める。今季は使い出しで一頓挫あったものの、前哨戦をひと叩きして態勢は整っている。

香港勢は3番手以下ももちろん差がない。ラッキーパッチは前哨戦のジョッキークラブスプリント、2走前のプレミアボウルと重賞を連勝しており勢いは一番。鞍上もリーディング常連のZ.パートン騎手で信頼性は高い。スカイフィールドはウェリントンと同様に昨シーズン終盤に台頭し、チェアマンズSPでの3着からはG3プレミアC勝ちを含む4戦連続の重賞入着と安定感がある。前哨戦のジョッキークラブスプリントも3着だった。これに対してコンピューターパッチは安定感に欠けるものの、チェアマンズSPは2着でスカイフィールドに先着。ジョッキークラブスプリント4着(昨年は2着)と上位とそん色ない力はある。

昨年の結果が結果だけに、香港勢は実績不足や近走不振の馬まで気を抜けないが、今後も含めて注視しておきたいのがクーリエワンダーだ。3歳の昨年10月にデビューすると無傷の5連勝でG3シャティンヴァーズを制覇。当時は最軽量ハンデながらスカイフィールドや今回も対戦するストロンガーを破っている。期待とともに迎えた今シーズンは初戦で初黒星を喫し、前走のジョッキークラブスプリントも先頭で蛇行する若さを見せて連敗したが、J.モレイラ騎手が素質に惚れ込んで手綱を取り続けている。ここまで経験不足は否めず、その分だけまだまだ伸びしろも見込める。

(渡部浩明)