香港ヴァーズ

2021/12/12(日) 15:00発走 シャティン競馬場

見どころPREVIEW

2年ぶりの香港ヴァーズ制覇を狙うグローリーヴェイズ。(Photo by The Hong Kong Jockey Club)

グローリーヴェイズが2勝目へ有力、強敵は英国のパイルドライヴァー

今年の香港ヴァーズは一昨年の覇者グローリーヴェイズ、連覇を狙うアイルランドのモーグル、そして英国でG1勝ちのパイルドライヴァーが実績でリードし、この中から優勝馬が誕生しそうな情勢。その中でも日本のグローリーヴェイズが最右翼と考えられる。

グローリーヴェイズは2年前の優勝時に2分24秒77のレースレコードを叩き出している。これまでに2分25秒台での優勝馬さえいない事実と合わせても圧倒的なタイムと評していい。今年の4月には距離不足のクイーンエリザベス2世Cでも鋭く2着に追い込み、シャティン競馬場の適性にも疑いの余地はない。来月には7歳を迎えるが衰えた様子は微塵もなく、前回と同様にJ.モレイラ騎手を確保と首尾は万全と思われる。

昨年のモーグルは中団から追うほどに伸びる末脚で香港ヴァーズを圧勝したが、今年は4戦未勝利(取り消し1戦)と苦戦が続いている。6月のコロネーションCは道悪で大敗したことから、渋った馬場での連戦が合わなかった可能性もあり、実績のある舞台に戻る今回は正念場というべき一戦。ただ、良馬場に恵まれた初戦(ドバイシーマクラシック)で見せ場を作れなかったように、叩き良化型と見られる一面も。昨年は3戦目で初勝利を挙げており、8月以来の実戦となる今回には依然として不安もある。

グローリーヴェイズの最大のライバルとなりそうなパイルドライヴァー。(Photo by Getty Images)

これに対し、パイルドライヴァーはコロネーションCでモーグルを破りG1初制覇。当時は道悪が有利に働いた面もあったが、昨年8月のグレートヴォルティジュールSでも良馬場かつ斤量3ポンド(約1.4kg)負担でモーグルに4馬身差をつけて完勝している。パイルドライヴァーは英国から出るのが初めてで、香港に実績があるモーグルに経験値は劣っているが、対戦成績上は一枚上と言える実力。まともならグローリーヴェイズの最大のライバルとなりそうだ。

ここに割って入りたいのが日本のもう1頭、ステイフーリッシュ。今回はジョッキークラブCを超スローペースで逃げ切った地元のリライアブルチームが再びハナを切る展開が予想され、先行できるステイフーリッシュが流れを味方につけて粘り込むシーンも。日本では詰めの甘さがあるものの、父ステイゴールドや同じ産駒のウインブライトがシャティン競馬場で末脚のキレと粘りを増したように、ステイフーリッシュが新たな一面を見せる可能性に期待したい。

欧州勢は香港ヴァーズで最多7勝(G1昇格後)を誇るフランスから牝馬のエベイラも参戦するが、G1ではサンクルー大賞の2着が最高で良績も重めの馬場に偏っている。先行力があるのは魅力だが、前走のジャンロマネ賞は逃げるも直線半ばで後続に飲み込まれ、瞬発力には課題がありそうだ。C.スミヨン騎手の手腕を持ってしても勝利までは難しい印象がある。

このレースで苦戦の香港勢は昨年3着のコロンバスカウンティに上位争いの目がある。末脚は堅実なタイプで、今回は前々でパイルドライヴァーがマークを集め、グローリーヴェイズらが追随しそうな展開。各馬の動き出しが早ければ、再び3着に届くこともあるだろう。

(渡部浩明)