凱旋門賞2020/10/4(日) 23:05発走 パリロンシャン競馬場
日本調教馬の初挑戦から約半世紀
日本調教馬が初めて凱旋門賞に挑戦したのは、人間の海外渡航さえ簡単ではなかった1969年のこと。約半世紀も昔に開拓者となったのは天皇賞馬スピードシンボリだった。4歳春の天皇賞でG1初制覇を飾り、その秋にはアメリカ遠征も経験。当時としては稀有な実績を備えていたスピードシンボリは6歳で欧州に遠征し、キングジョージ、ドーヴィル大賞を経て凱旋門賞に臨んだが、入念な準備も世界の強豪たちには通用しなかった。
スピードシンボリは帰国初戦で有馬記念を制し、翌年にかけて宝塚記念、そして有馬記念とグランプリ3連勝を飾る当時の最強馬だった。それでも太刀打ちできないほど実力に開きがあり、3年後の1972年に挑戦した天皇賞馬メジロムサシも厚い壁に跳ね返されている。
それから14年後の1986年、シリウスシンボリが日本ダービー制覇からキングジョージにチャレンジするなど、約2年にもわたる長期遠征を敢行。欧州各国を転戦しながら5歳秋に凱旋門賞へと駒を進めたものの、ダンシングブレーヴの豪脚の前になす術なく後方2番手でのゴールとなった。
21世紀へエルコンドルパサーの飛翔
日本調教馬と凱旋門賞の距離が縮まったのは、スピードシンボリの初挑戦からちょうど30年後だった。21世紀が目前に迫る1999年、エルコンドルパサーは先駆者たちと同様に長期滞在からフランスの重賞を次々と攻略。G1サンクルー大賞制覇など歴史的成果をあげ、凱旋門賞に優勝候補の1頭として参戦した。レースでは不良馬場の中で敢然と逃げを打ち、惜しくも1/2馬身差の2着に敗れたものの、優勝へあと一歩と迫る激走を披露して大きな希望をもたらした。
エルコンドルパサーの後には2頭が遠征したが、トラブル続きで結果を求められるには至らない状況が続いた。そうした悪循環に楔を打つと同時に、凱旋門賞制覇の切り札として2006年のディープインパクトが一身に期待を集める存在となった。前年に無敗のクラシック三冠を成し遂げた最強馬なら、悲願は達成されると半ば信じられていたが、2頭に差し込まれるという日本ではあり得なかった形で完敗。レース後には呼吸器系治療薬の規定違反により失格という、まさかの結末を迎えることになった。
失意の中で現れたゲームチェンジャー
ディープインパクトの挫折で凱旋門賞制覇が遠のいたかに思われた日本調教馬の元へ、2010年になってナカヤマフェスタが一筋の光明をもたらす。宝塚記念のみのG1実績はエルコンドルパサーやディープインパクトに肩を並べるものではなかったが、レースでは英ダービー馬ワークフォースと激闘を演じてわずかにアタマ差の2着。エルコンドルパサーの1/2馬身差からさらに勝利に近づき、適性の価値を再認識させる結果を残した。
そして2年後、ディープインパクト以来の三冠馬で、ナカヤマフェスタと同じステイゴールド産駒のオルフェーヴルが渡仏した。前哨戦のフォワ賞を完勝するなど、適性と実績の両面から不足のない態勢を整えて上がった桧舞台では、後方から大外を豪快に突き抜けて一気の先頭。あとはゴールに駆け込むだけという、誰もが勝利を確信する形勢に持ち込んだ。ところが、あとわずかという所で目を疑うような急失速。一度は並ぶ間もなく抜き去った相手に差し返され、手にしたはずの栄冠を差し出してしまった。
オルフェーヴルは挽回を期して翌年も凱旋門賞に参戦。後輩ダービー馬のキズナとともに最強の布陣で臨んだが、今度は3歳牝馬トレヴの豪脚に完敗を喫する。2014年は世界ランキング1位のジャスタウェイら3頭が挑んだものの、またしてもトレヴが立ちふさがって36年ぶりの連覇を達成。この2年間に遠征した日本調教馬は歴代最強クラスの精鋭たちだったが、終わってみれば相手もまた稀代の名牝という不運に泣かされた。
その後は2016年から2019年までにG1ホース5頭を含む7頭がチャレンジしたものの、キセキ(2019年)の7着が最高で他の6頭は10着以下に大敗と苦戦が続いている。
年 | 馬名 | 性齢 | 着順 | 騎手 | 調教師 |
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2019 | キセキ | 牡5 | 7 | C.スミヨン | 角居勝彦 |
ブラストワンピース | 牡4 | 11 | 川田将雅 | 大竹正博 | |
フィエールマン | 牡4 | 12 | C.ルメール | 手塚貴久 | |
2018 | クリンチャー | 牡4 | 17 | 武豊 | 宮本博 |
2017 | サトノダイヤモンド | 牡4 | 15 | C.ルメール | 池江泰寿 |
サトノノブレス | 牡7 | 16 | 川田将雅 | 池江泰寿 | |
2016 | マカヒキ | 牡3 | 14 | C.ルメール | 友道康夫 |
2014 | ハープスター | 牝3 | 6 | 川田将雅 | 松田博資 |
ジャスタウェイ | 牡5 | 8 | 福永祐一 | 須貝尚介 | |
ゴールドシップ | 牡5 | 14 | 横山典弘 | 須貝尚介 | |
2013 | オルフェーヴル | 牡5 | 2 | C.スミヨン | 池江泰寿 |
キズナ | 牡3 | 4 | 武豊 | 佐々木晶三 | |
2012 | オルフェーヴル | 牡4 | 2 | C.スミヨン | 池江泰寿 |
アヴェンティーノ | 牡8 | 17 | A.クラストゥス | 池江泰寿 | |
2011 | ヒルノダムール | 牡4 | 10 | 藤田伸二 | 昆貢 |
ナカヤマフェスタ | 牡5 | 11 | 蛯名正義 | 二ノ宮敬宇 | |
2010 | ナカヤマフェスタ | 牡4 | 2 | 蛯名正義 | 二ノ宮敬宇 |
ヴィクトワールピサ | 牡3 | 7 | 武豊 | 角居勝彦 | |
2008 | メイショウサムソン | 牡5 | 10 | 武豊 | 高橋成忠 |
2006 | ディープインパクト | 牡4 | 失格 | 武豊 | 池江泰郎 |
2004 | タップダンスシチー | 牡7 | 17 | 佐藤哲三 | 佐々木晶三 |
2002 | マンハッタンカフェ | 牡4 | 13 | 蛯名正義 | 小島太 |
1999 | エルコンドルパサー | 牡4 | 2 | 蛯名正義 | 二ノ宮敬宇 |
1986 | シリウスシンボリ | 牡4 | 14 | M.フィリッペロン | 二本柳俊夫 |
1972 | メジロムサシ | 牡5 | 18 | 野平祐二 | 大久保末吉 |
1969 | スピードシンボリ | 牡6 | 着外 | 野平祐二 | 野平省三 |