日本馬挑戦の歴史JAPANESE HISTORY

震災に沈む日本へ値千金の勝利を届けたヴィクトワールピサ

日本調教馬は1996年の第1回からドバイWCに遠征し続け、不参戦は1999年、2003年、2013年の3回のみ。ケイティブレイブが現地で出走を取り消した2019年を含めても、24回のうち4回しかない。ダートの本場アメリカ勢や地元UAE勢の壁は厚く、残念ながら優勝争いにはなかなか絡めていないが、それでも、2001年にトゥザヴィクトリーが2着、2011年にはヴィクトワールピサとトランセンドがワンツーフィニッシュを決めて歴史を動かした。

トゥザヴィクトリーが直線で先頭に立ち、大きな見せ場を作って2着に食い込んだのは、ライブリマウントが参戦した第1回からわずか5年後のことだった。直前のフェブラリーSでダート戦を初体験したに過ぎない牝馬が、ダートの猛者たちをスピードで翻ろうし、一時は直線を独走しようかというリードを奪った事実は、関係者やファンに驚きとともに勇気を与えた。そして、この快走から20年が経過しようとしている現在も、牝馬による唯一の連対例としてレース史に刻まれている。

しかし、その後は時代を代表するダートの猛者たちが遠征しながら、カネヒキリ(2006年)とヴァーミリアン(2007年)の4着が最高と完敗が続き、再び世界にインパクトを与えるまで10年の月日を要すことになる。

ダートでのスピード競馬に苦戦していた日本調教馬にとって、大きな転機となったのは2010年のメイダン競馬場への移転だった。ダートコースがオールウェザーコースに変わり、よりスピードを問われる舞台設定になったことで、パワーを求められる要素が減少。皐月賞と有馬記念で芝のG1レースを2勝していたヴィクトワールピサが2011年に遠征すると、日本競馬史に燦然と輝く金字塔を打ち立てる。

芝の名牝ブエナビスタ、ダート王トランセンドとともに参戦したヴィクトワールピサは、向正面でスローペースの間隙を突き最後方から一気に進出。先頭のトランセンドに並んで主導権を握ると、そのまま並走状態で直線に突入していった。両馬の背後からは愛ダービー馬ケープブランコや翌年にドバイWCを勝つモンテロッソ、北米芝王者のジオポンティらの追撃を受けるも、ヴィクトワールピサとトランセンドは叩き合いを演じながら粘り切り、ヴィクトワールピサが1着、トランセンドは2着でワンツーフィニッシュ。東日本大震災の被害に打ちひしがれる日本へ大きな感動を届けた。

2015年から舞台がダートに戻ると、日本調教馬の成績もホッコータルマエ(2015年)とアウォーディー(2017年)の5着が最高と後退。トゥザヴィクトリーのようなブレークスルーが待たれている。

馬名 性齢 着順 騎手 調教師
2019 ケイティブレイブ 牡6 取消 J.モレイラ 杉山晴紀
2018 アウォーディー 牡8 6 武豊 松永幹夫
2017 アウォーディー 牡7 5 武豊 松永幹夫
ラニ 牡4 8 R.ムーア 松永幹夫
アポロケンタッキー 牡5 9 C.ルメール 山内研二
ゴールドドリーム 牡4 14 J.モレイラ 平田修
2016 ホッコータルマエ 牡7 9 幸英明 西浦勝一
2015 ホッコータルマエ 牡6 5 幸英明 西浦勝一
エピファネイア 牡5 9 C.スミヨン 角居勝彦
2014 ベルシャザール 牡6 11 C.ルメール 松田国英
ホッコータルマエ 牡5 16 幸英明 西浦勝一
2012 エイシンフラッシュ 牡5 6 C.ルメール 藤原英昭
スマートファルコン 牡7 10 武豊 小崎憲
トランセンド 牡6 13 藤田伸二 安田隆行
2011 ヴィクトワールピサ 牡4 1 M.デムーロ 角居勝彦
トランセンド 牡5 2 藤田伸二 安田隆行
ブエナビスタ 牝5 8 R.ムーア 松田博資
2010 レッドディザイア 牝4 11 C.スミヨン 松永幹夫
2009 カジノドライヴ 牡4 8 安藤勝己 藤沢和雄
2008 ヴァーミリアン 牡6 12 武豊 石坂正
2007 ヴァーミリアン 牡5 4 C.ルメール 石坂正
2006 カネヒキリ 牡4 4 武豊 角居勝彦
スターキングマン 牡7 7 O.ペリエ 森秀行
2005 アジュディミツオー 牡4 6 内田博幸 川島正行
2004 アドマイヤドン 牡5 8 安藤勝己 松田博資
リージェントブラフ 牡8 9 吉田豊 大久保洋吉
サイレントディール 牡4 12 武豊 池江泰郎
2002 アグネスデジタル 牡5 6 四位洋文 白井寿昭
トゥザヴィクトリー 牝6 11 O.ペリエ 池江泰郎
2001 トゥザヴィクトリー 牝5 2 武豊 池江泰郎
レギュラーメンバー 牡4 9 松永幹夫 山本正司
2000 ワールドクリーク 牡5 6 加藤和宏 新井仁
1998 キョウトシチー 牡7 6 松永幹夫 中尾謙太郎
1997 ホクトベガ 牝7 中止 横山典弘 中野隆義
1996 ライブリマウント 牡5 6 石橋守 柴田不二男