日本馬挑戦の歴史
ステイゴールドとサトノクラウン、ドラマチックなG1初制覇
日本調教馬は香港ヴァーズ創設元年の1994年から2017年までに延べ20頭が参戦し、過半数を超える12頭が4着以上の結果を残して上位争いに絡んできた。その中で優勝馬こそ2頭にとどまっているが、両馬は2勝の数字以上に見ごたえのあるドラマチックなレースを披露してくれた。
G1で再三の惜敗を重ねてきたステイゴールドは、7歳で迎えた2001年の香港ヴァーズが引退レースだった。ラストチャンスで大外14番枠からのレースとなったステイゴールドは、いつものように中団付近で折り合いに専念して仕掛けのタイミングを待つ。2番手追走のエクラールが早めにピッチを上げて抜け出し、虚を突かれて見る見る離されていく後続馬群の中で唯一、追撃態勢に入ったのがステイゴールドだった。
それでも残り200mで4馬身ほどの後れと戦況は苦しく、さらには内にササる悪癖も出して万事休すと思われたが、体勢を立て直すと最後の100mから羽が生えたように鋭進。粘るエクラールを一気に追い詰めてゴールに飛び込んだ。写真判定にもつれ込んだ結果は僅差でステイゴールドに軍配。まさに最後の一完歩、首を突き出したわずかなタイミングの差で悲願のG1制覇を成し遂げ、惜敗続きのキャリアに最高の形で終止符を打った。
ステイゴールドの劇的すぎる勝利後、日本調教馬は2005年のシックスセンスと2012年のジャガーメイルが2着に善戦するものの、2016年にサトノクラウンが2勝目を手にするまで15年もの空白期間が生じることになる。
サトノクラウンは皐月賞で1番人気に支持されるなど早くから才能を評価されていた一方、G1に手が届かないまま香港ヴァーズで7度目のG1挑戦を迎えるに至った。その前に立ちはだかったのは前年の覇者にして世界を股に掛けてG1勝ちを量産するハイランドリール。厳しい戦いになることは明らかだった。しかし、軽快に飛ばして逃げ込み態勢の王者を追撃したサトノクラウンは、残り300mで4馬身ほどあった差を着実に詰めると最後の数完歩で大逆転し、ステイゴールドと同じように劇的な形で待望のG1初制覇を飾った。
連覇を逃したハイランドリールは2017年に3年連続の遠征を敢行して2度目の優勝。この王者には及ばなかったものの、サトノクラウンと同様にG1未勝利の身で臨んだトーセンバジルが3着に食い下がり、この路線における日本調教馬の質の高さを印象づけた。
年 | 馬名 | 性齢 | 着順 | 騎手 | 調教師 |
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2017 | トーセンバジル | 牡5 | 3 | J.モレイラ | 藤原英昭 |
キセキ | 牡3 | 9 | M.デムーロ | 角居勝彦 | |
2016 | サトノクラウン | 牡4 | 1 | J.モレイラ | 堀宣行 |
ヌーヴォレコルト | 牝5 | 4 | 岩田康誠 | 斎藤誠 | |
スマートレイアー | 牝6 | 5 | 武豊 | 大久保龍志 | |
2014 | カレンミロティック | セ6 | 5 | 池添謙一 | 平田修 |
2013 | アスカクリチャン | 牡6 | 7 | 岩田康誠 | 須貝尚介 |
2012 | ジャガーメイル | 牡8 | 2 | D.ホワイト | 堀宣行 |
2011 | トレイルブレイザー | 牡4 | 6 | 安藤勝己 | 池江泰寿 |
2010 | ジャガーメイル | 牡6 | 4 | C.ウィリアムズ | 堀宣行 |
2009 | ジャガーメイル | 牡5 | 4 | C.スミヨン | 堀宣行 |
2008 | ジャガーメイル | 牡4 | 3 | M.キネーン | 堀宣行 |
2006 | ソングオブウインド | 牡3 | 4 | 武幸四郎 | 浅見秀一 |
アドマイヤメイン | 牡3 | 8 | 武豊 | 橋田満 | |
2005 | シックスセンス | 牡3 | 2 | 四位洋文 | 長浜博之 |
2001 | ステイゴールド | 牡7 | 1 | 武豊 | 池江泰郎 |
1999 | ローゼンカバリー | 牡6 | 7 | 菊沢隆徳 | 鈴木康弘 |
1997 | エイシンサンサン | 牝5 | 12 | 武豊 | 坂口正則 |
1995 | タニノクリエイト | 牡3 | 4 | 蛯名正義 | 森秀行 |
1994 | エイシンテネシー | 牝5 | 4 | 増井裕 | 坂口正則 |